第273回
伴走支援とは何か
StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ 落藤 伸夫

2022年春に「伴走支援型特別保証」が創設されて以来、「伴走支援」についての関心が高まっています(その後に創設されたコロナ借換保証も伴走支援が要件とされましたが現時点で6/30での取扱停止が予告されています)。一方で「伴走支援とは何か、良く分からない」という声も聞かれます。今回は、この点について考えてみます。
3種類の伴走支援
「伴走支援とは何か良く分からない」との声があがる理由として、異なる「伴走支援」が提唱されていることが挙げられます。インターネット上で「伴走支援」を検索すると約699万件の項目が挙げられ、冒頭には中小企業庁、2番目には市中で活躍するコンサルタント、3番目以降は信用保証協会による説明が掲載されていました(2024/5/16時点)。
これら全てが一つの「伴走支援」を説明しているとは思えません。とすると次に生まれるのが「伴走支援は何種類あるのか」そして「金融機関担当者として行うこととなる伴走支援とは何か?」あるいは「伴走支援型特別保証を利用した場合に中小企業が受ける伴走支援は何か」という疑問でしょう。
事業性評価支援士協会では「伴走支援」には今、3つのあり方があると考えています。これらのうちいずれが正しく、それ以外が間違いだということはありません。どの形態の伴走支援であろうと、それを受ける者(企業・経営者)と提供者(金融機関や税理士などの専門家)そして間接的な受益者(伴走支援型特別保証の場合なら信用保証協会)の合意のもとでスタート・実施され、成果について関係者の納得が得られるなら「正しい伴走支援」と言えます。
冒頭で挙げたインターネット検索結果がその3つを示唆しており、以下の通り分類できます。
1. 事業再構築伴走支援
2. コンサルタントが行う伴走支援
3. 伴走支援型特別保証等で要件となっている伴走支援
以下、夫々の伴走支援の特徴についてまとめてみます(まとめ方は事業性評価支援士協会によるもので、各記事掲載主の考え方等を著したものではありません)。
事業再構築伴走支援
第1は政府・中小企業庁が2023年に「経営力再構築伴走支援ガイドライン」を発表して推進している「経営力再構築伴走支援」です。この支援の特徴は、企業に内在している問題・課題解決能力を伴走支援により引き出すことを目的としていることです。
企業が直面する問題・課題には既存の解決策が応用できる「技術的問題」と、当事者のマインドセット変革がポイントになる「適応を要する課題」があるとの考えがベースになっており、当該伴走支援は後者への取組を支援します。当事者が真相を探求、学習を重ねながら分析や問題定義、対処法・解決策等を探ると共に、各プロセスで必要なら当事者が捉え方や思い込み、習慣を変えられるよう支援します。一定以上の期間にわたって継続的、そして段階を踏んだ支援が必要となるので「プロセス・コンサルテーション」とも呼ばれています。
コンサルタントが行う伴走支援
第2は中小企業診断士等のコンサルタントが以前から企業顧問として行ってきた継続的支援です。多くの場合、毎月に1~数回、一回当たり数時間にわたって経営者と面談あるいは現場を観察等して、コーチングあるいは具体的アドバイスを提供して支援します。
支援テーマは様々で、経営者の姿勢や心構えから、新規事業等に乗り出す戦略策定や事業の継続・成長を目指す中期計画策定等の支援、財務管理や経営指標を基にした対応方法・マネジメント方法等の実施支援、あるいは製造現場改善や営業・接客技術等の教授などまで広範にわたります。
伴走支援型特別保証等の伴走支援
第3は伴走支援型特別保証等で求められている伴走支援です。当該保証では中小企業には経営行動計画策定が、そして金融機関には伴走支援が要件とされているので、両者には密接な関係があると推察できます。
策定された経営行動計画が計画通りに実行されて進捗しているか、期待する効果を生み出しているかをチェックし、必要があればサポートするよう求められていると考えられます。金融機関がまず考えることになるのは、この伴走支援と言えるでしょう。
本コラムの印刷版を用意しています
本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。
なお、冒頭の写真は 写真AC から Makoto410 さんご提供によるものです。 Makoto410 さん、どうもありがとうございました。
プロフィール
落藤伸夫(おちふじ のぶお)
中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA
日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。
平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。
現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。
【落藤伸夫 著書】
『日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル』
さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。
Webサイト:StrateCutions