「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第98回

資金調達に必要な「将来を見通す力」

落藤 伸夫 2020年1月20日
 



今年は暖冬のようですね。毎日、仕事に出かける時は決して「暖かい」とは思わないのですが、降雪が少なく苦慮しているイベントが多いとの報道がされています。冬物の売れ行きを危ぶむ声もあります。このような状況から「先は見通せない」という気持ちになりそうですが、ビジネスを進める者としては「でも、見通していく!」という気持ちが大切です。今日は、金融検査マニュアル廃止後にますます必要になってきた「将来を見通す力」について考えてみましょう。 



金融機関は事業性を、どのように判断するか

金融検査マニュアルの廃止は、金融機関が担保や保証による保全に過度に依存してしまうことで地域活性化の原動力となるべき中小企業が資金調達できないという「日本型金融排除」を克服すべく、融資判断において中小企業の事業性を評価するよう促すことを目的としていました。ここでのポイントは「どうやって事業性を判断するのか」です。実は、この方法論に決まりはありません。金融機関が自分で決めることになっています。


「決まりがないなら、中小企業の事業性を柔軟に認めてくれて良いはずだ。地域の衰退で売上が減少して困っている我々にも貸してくれるはず!」そう考えるのは早計かもしれません。少し細かい言葉の説明となりますが、金融機関が支援するのは「売上減少などで困っている企業」ではありません。それが仮に地域の衰退によるもので、特に中小企業の失策による訳ではなくても、です。もしそういう企業にどんどん融資して、万が一、企業が活性化できなかったら、貸付金を回収することが難しくなってしまうでしょう。当該企業が活性化できなかったことで地域も地盤沈下してしまったら、金融機関もろともどん詰まりになってしまいます。地域で資金の流れを円滑化するポンプの役割を担う金融機関もろとも、立ち行かなくなってしまう可能性があるということです。


金融機関が支援するのは、「地域の衰退などで売上が減少しているが、起死回生策を計画したので実行して事業を立て直したい。しかし、実行資金が不足しているので困っている」ような企業です。そのような企業は融資による資金を手にすることで事業改善を実現できる可能性が高まります。また地域の特性や企業を広く知っている金融機関は、ビジネスに関してアドバイスしたり、取引先や事業連携できる先の紹介等を行える可能性もあります。その結果として企業が活性化すれば地域も活性化する大きなサイクルが回ることも期待できます。



将来を展望する

「事業性評価という言葉が『困っている企業を支援する』ではなく『事業性を育てていこうとする企業を支援する』という趣旨だということは、分かった。後者の企業になるため、私はどうしたら良いのだろう?」はい、まずは是非、どうすれば自社が元気になれるかを考えてみて下さい。将来展望もしくはビジョンを立てるのです。


「その答えは『我が社の取扱商品がもっと売れること』で自明だ。」では、もう少し頭の汗をかいてみて下さい。その時には、どんな商品が売れていますか?今と同じですか?違うなら、どんな商品なのか、どこから仕入れるのか、自社製品ならどのように製造するのか、具体的にイメージして下さい。その場合に、今ある店舗や設備と同じですか?違う必要があるなら、そちらについても詳細を具体的にイメージしてください。「もっと売上が増えれば良いな」は単なる夢で、ビジョンではありません。このような詳細をイメージすることがビジョンなのです。



将来への道のりを描き、数値計画を立てる

「明るいビジョンを描けることが金融機関が評価する『事業性』なのだな。」はい、そうです。が、多くの場合、金融機関はそれだけでは事業性を確認できません。ビジョンは3つのポイントのうち1つです。もう1つ、その実現に向けた道のりを戦略とアクションプランとして明確化することが必要です。戦略やアクションプランのないビジョンは、設計図のないプラモデルと同じです。そんなプラモデルは「作れなさそうだ。買っても楽しめないな」と考えてしまうのと同じように、魅力的なビジョンが描けていても戦略・アクションプランがないと「現状と掛け離れている。実現性(事業性)はなさそうだ」と感じられても仕方ないかもしれません。


もう1つ挙げられるのが数値計画です。これまで金融機関は融資判断において「現在の事業性」をベースにしていましたが、今後は「将来の事業性」も取り入れる方向性にあります。でも具体的に、どのようにして?金融機関がこれまで「事業性」を決算数字でもって判断してきたことを、ご存知の方も多いでしょう。同様にビジョンが実現した場合の数値を明確化した計画があると、金融機関は将来の事業性を評価しやすいと感じるでしょう。


「つまりは事業計画書が必要な訳だ」仰る通りです。金融検査マニュアル廃止により事業性評価が主流になる時代に中小企業が円滑に資金調達しようとする時、事業計画書が強力な武器になります。今年は、是非、それに取り組んでいかれることをお勧めします。




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なお、冒頭の写真は写真ACからはむぱんさんご提供によるものです。はむぱんさん、どうもありがとうございました。





 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


HP:StrateCutions

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