「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第130回

地方銀行は多すぎるか(1)

落藤 伸夫 2020年9月21日
 



歴代1位となる在任期間記録を打ち立てた後、まだ任期を残しながら安倍首相が退任したので、自民党総裁選挙が行われて菅義偉官房長官が総裁に選ばれ、そのまま首相に任命されました。今回の総裁選挙で上がった話題の一つに「地方銀行の数が多すぎるのではないか」がありました。菅首相の誕生で編が進むのではないかと、戦々恐々とする地方銀行もあると言います。地方銀行の数について、どのように考えることができるかについて、3週にわたって中小企業の資金調達観点で考えてみます。


なぜ数多くの地方銀行があるのか?

最初に、なぜ数多くの地方銀行があるのかについて、考えてみたいと思います。これは「銀行」という名を付した機関に限らず、地域金融機関の一翼を担う信用金庫を含めても、同じ考え方になるかと思います。


これらの地域金融機関はいつ生まれたのか?多少の例外はありますが、戦前、それも明治・大正期に多く生まれています。ではなぜ、この頃に生まれたのか?「当たり前だろう。江戸時代には銀行はなく、明治に入ってから生まれた。だから個々の銀行も、この頃に生まれたに決まっている。」そうなのですが、ここで検討したいのは、今となっては過剰と思われる金融機関がこの頃に生まれた理由です。幾つかの要因が考えられます。


1つ目は、金融機関が大規模化しにくい状況だったので、小規模なものをたくさん作るしかなかったという理由です。確かに、その頃は電子計算機もなく全ては手作業だったので、この考え方も一理ありそうです。一方で、この時代でも全国展開する金融機関は存在したことを考えると、決定打とは言えないようです。


2つ目は、全国規模の金融機関がある一方、地域にも金融機関がないと困る状況があったからです。その理由は「その頃は現金主義で、今ほどお金があった訳ではない」ことを考えると、理解できると思います。まず、今ほどお金がなかったことについて。お金つまり紙幣や硬貨は、(今ではかなり緩やかになっていますが)勝手に製造できる訳ではありません。特に明治時代は金(金属)の裏付けがなければ紙幣(兌換券)を発行できませんでした。日本は世界でも有数の金生産地でしたが、明治時代の急速な発展を支えるに十分な金があった訳ではありません。お金は恒常的に不足状態だったのです。


もう一つ、当時は現金主義でした。今は通帳に記載される数字はコンピューターの集中管理で、例えば「東京でお金が不足し、青森では余っている。青森のお金を東京に回そう」と思えば瞬時に可能で、その逆も同じです。しかし当時は、東京でお金が必要になると、余っている青森から現金を輸送しなければなりませんでした。では、今度は青森でお金が必要になった時はどうするか?東京やその他の地域で余った現金を輸送できれば問題ありませんが、それができないと青森の地域経済は停滞します。「我が地域に全国展開の銀行しかないと、地域の現金が吸い取られてしまう。地域限定の金融機関を作って、地域を振興させるお金は地域で確保しなければ!」そういう想いで地域の金融機関が創設されたと考えられます。



現金確保の使命の次はポンプの役割?

一方で今や銀行に、現金確保の使命はありません。どんな地域の企業でも調達資金に相応の対価(利息)を払えるなら、どの金融機関も対応してくれます。というか、その機能だけを考えるなら、全国展開しているメガバンクの方が迅速に、多額の資金を融通してくれます。このような状況なので、昔は気にならなかった金融機関の数が、今となっては過剰と感じられるのだと考えられます。


では、今や地域金融機関の役割は、終わったのでしょうか?筆者はそうは思いません。金融機関にはもう一つ、ポンプの役割があると考えられるからです。


皆さんは、ここ数年、日本銀行による金融緩和措置によってお金が溢れているという話を聞かれたことはないでしょうか?「ある。しかし、その実感はない。」本当に、そうだと思います。その理由は「日本銀行が金融経済世界の親玉としてバンバンお金を発行しているので、金融経済世界には溢れかえっているが、隣接する実体経済世界には流れて来ないから」と説明できます。金融経済世界から実態経済世界にお金を流すのは、例えば金融機関が企業に融資することによって実現します。金融機関は、お金のポンプという役割を果たしているのです。


中小企業にお金が回らないのは「日本型金融排除」と言うように、金融機関が十分にポンプの役割を果たさないからです。では、どうすれば役割を果たせるようになるのか?今のように数が多いままの方が良いのか、数を減らして大規模化した方が良いのか?この点について、次回も引き続き検討することとしましょう。




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なお、冒頭の写真は写真ACから旅ラン倶楽部さんご提供によるものです。旅ラン倶楽部さん、どうもありがとうございました。





 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


HP:StrateCutions

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