「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第120回

今からコロナ対策資金に申し込む場合の留意点

落藤 伸夫 2020年7月6日
 



今年の梅雨はここ数年と少し違った感じです。梅雨は日本付近に梅雨前線が停滞して降水が多くなる季節のことですが、今までは梅雨に入るタイミングで雨が降るとしばらく前線が遠ざかり、本格的に雨が降るのは後半になってからというのが多かったと記憶しています。一方、今年は前線がそのまま日本を行き来して、各地に大雨を降らせています。「新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言も解消したので、ここからは本気でビジネスだ!」と意気込んでいたのに、新たなハードルが課せられたと感じている企業経営者も、少なくないことでしょう。

その中には「コロナ禍で売上が大幅に減少したけれど、借り入れると自分への重荷になる。できるだけ自己資金で対応しよう」と思っていたのに思惑通りにはいかず、資金調達せざるを得なくなった企業もあることでしょう。一時期に殺到した申し込みが段々と対応されて、以前ほどの混雑ではなくなったとの声もあります。「では、申し込もう!」そういう経営者の皆さまに、ご留意いただきたいポイントを、今回はお話ししたいと思います。



「今後の見通し」がポイント

ここで最初にお話ししたいのは、金融機関と皆さんの想いは同じだということです。今までは自己資金で頑張ってきた皆さんは、「借りたは良いが、返せるのだろうか」が心配なのだと思います。金融機関も同じく「貸したは良いが、返してもらえるのだろうか」を心配しています。金融機関としては、この疑問に答えが得られず「一般的には『返してもらえない』と結論付ける材料ばかりだ」と判断せざるを得なくなると、「支援は難しい」との結論に至る場合があります。そうならないためには、ご自分と金融機関の同じ疑問に答えを出すのが一番です。


「『コロナ禍が終われば売上が回復して利益も出るようになる。返済は可能だ』そう言えば良いと言うのか?それを信じてもらえるのか?」まず、前半のご質問に関しては、その通りです。「コロナ禍が終わって、周囲は売上回復できる状況になっても、当社には無理だ。なかなか利益は出ないし、倒産を考えなければならない可能性もある」という企業に、金融機関は融資することはできません。地域ひいては日本の金融システム、つまり送金や貸出(信用創造)という重要な役割を担う金融機関にとって、「コロナ禍が終われば当社は大丈夫だ」との見通しがない企業に融資することは、許されていないのです。


「将来、上手くいくはず」は通用しにくい

「分かった!誇大広告はやりたくないが、会社のためなら意を決しよう。我が社の将来は安泰だと金融機関に伝えよう。」確かに、そのアプローチで上手くいく場合もあります。建築業関連サービス業を営むある企業は、取引先の建築業者が工事ストップにより大打撃を受けている中、「環境が整ったら工事を再開して大車輪でリカバリーしたい。協力して欲しい」と声掛けられていました。それを伝えることで休業中の事業継続資金と、然るべき時に向けた事業再開資金を調達することがきました。


一方、この建築関連サービス業企業のような見通しを立てられない企業もあります。飲食店も、その一つでしょう。「コロナ禍が沈静化しさえすれば、当社は上手くいくはず」と言い切るのが難しいのです。経営者の皆さんもそれを気にして、今まで資金調達について慎重姿勢だったのでしょう。その気持ちは金融機関も同じです。



「これからの取組みが将来に実を結ぶはず」と説明する

では、できることは何もないか?そうではありません。「今、将来には売上・利益を回復できるよう手を打っている。これからも取組みを続け、できることなら(資金調達できれば)拡大・強化したい。だから将来に実を結ぶ可能性が高いと見通している。」このような表現なら可能で、それを聞いた金融機関の納得に繋がります。


ある飲食店は休業期間中に「ソーシャルディスタンスを保てるよう客席レイアウトを変えた」、「寛げるインテリアも取り入れた」、「友達との時間を楽しめるメニューも追加した」などとSNS上で発表しました。これらの取組みは従来の「手頃なファストフード」から「高単価路線」への変革を意図したものですが、見栄えのする写真もあって、従来のお客様だけでなく訪れたことのない見込客からも「いいね」をもらい、「お店が再開されたら是非行きたい!」とのコメントをもらえました。反響が日に日に高まるにつれ「変革の評判は上々!将来は大丈夫そうだ」との自信に繋がり、「それを伝えれば金融機関も納得してくれるだろう」と思えるようになったのです。実際、期待通りの資金を調達できたと聞いています。


どんな時期でも将来の見通しは重要ですが、特に今は、それが資金調達できるか否かのポイントになっています。是非、自分で自信が持てる、ワクワクする見通しが立てられる事業改善を計画して、実践して下さい。




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なお、冒頭の写真は写真ACからまつながひでとしさんご提供によるものです。まつながひでとしさん、どうもありがとうございました。



 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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