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第58回

信用保証制度見直しに対応する(3)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 

 信用保証制度見直しについて、今回は「信用保証協会と金融機関の連携」について考えます。どんな連携が期待されているのでしょうか? その影響は何でしょうか? 


<中小企業庁告知サイト> 

http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/shikinguri/hokan/index.htm 

 <信用保証協会と金融機関の連携(資料)> 

http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/shikinguri/hokan/2017/191025hokan06.pdf 


信用保証に過度に依存している例 

 資料では最初に「信用保証に過度に依存している例」が事例で掲載されています。売上減少傾向にある事務機器卸売業者は新たな収益模索のため政府系と民間金融機関から資金調達しましたが不調でした。立直しまでリスケを希望しましたが、民間融資が全て信用保証付でメインバンク不在だったので債権者調整ができませんでした。保証協会主導でリスケはできましたが先行き不透明という状況です。

 金融機関は、成長期にある中小企業に融資する時「どこがメインか?我が金融機関がメインとなるか?」について意識しているでしょう。一定残高以上の融資を行うことで決裁権限が支店から本店審査部に移るような案件審査では「金も出して口も出すメインバンクとなるか」も併せて検討して意思決定していると思われます。  一方で、民間金融機関融資の全てが信用保証付の場合は、この構図が崩れます。信用保証が理由で融資した金融機関にメインバンクとしての役割を期待することはできません。そもそも、必要な情報収集も行っていないでしょう。これが「信用保証に過度に依存している」状況の典型例です。

 ここから、期待される「連携」の姿も見えてきます。「メインバンクとして名乗りをあげる」ことが期待されているのです。では、誰がメインバンクとなるのでしょうか?


プロパー融資による支援

 資料では次に「プロパー支援」が事例を用いて説明されています。売上減少中の米・食料品販売業社が隣接店舗で惣菜販売を目指した時、保証付とプロパー融資を組み合わせた支援が行われました。要注意先輸入バイクディラーに、保証付とプロパー融資の協調で設備資金が、そして短期プロパー融資で運転資金が支援されました。

 プロパー融資が重視されるのは、金融機関にとって企業と密接に関わるモチベーションになるからです。プロパー融資を行うとなると、主体的に企業と関わらざるを得ません。正常先に該当しない企業にプロパー融資を行うには、企業の実情を踏み込んで観察・分析し「事業を継続でき伸ばしていける現在の強みや将来的なチャンス(事業性)がある」と判断すると共に、「融資後にもしっかりとコミュニケーションを取ってウオッチングしよう、要望があれば相談にも乗ろう」との意思決定が必要だからです。

 こうやってプロパー融資を意思決定した金融機関は、少し不調が見えて来たら、経営改善に向けた支援を検討し、時には自ら経営支援を申し出るかもしれません。メインバンクの役割を果たそうと覚悟を決める金融機関が生まれる可能性が高まります。それが期待されているのです。


プロパー融資を促す「仕掛け」:公表

 資料では、プロパー融資を促す仕掛けについてもコメントされています。各金融機関毎に「保証承諾案件の申込時プロパー状況」を公表するのです。保証申込があった企業にプロパー融資が存在するかどうかについて、件数割合を表示すると共に、プロパー融資金額も公表します。プロパー融資に消極的な金融機関が一目瞭然に分かるのです。


間接的「仕掛け」:セーフティネット保証5号

 告知サイトには、プロパー融資を促すもう一つの仕掛けとしてセーフティネット保証5号(SN5号)の取扱い変更がコメントされています。保証割合が従前の100%から80%に変更されたのです。万一の場合の自己負担分ができた金融機関は、もはや「支援するか否かの判断を保証協会に任せよう」とは考えません。プロパー融資に準じた意思決定が必要になります。それが期待されたのです。


予想される事態

 以上の取組みから、何が予想されるでしょうか?この見直しは「信用保証への過度な依存」を断ち切り、金融機関に事業性評価融資やその後の期中管理・経営支援を促すべく実施されました。それは経営改善に努力するよう中小企業への動機付けにもなるので、目的としては悪くありません。しかし短期的には以下の現象が生じるかもしれません。

・ 金融機関がSN5号の取扱いに消極的になる

・ 信用保証付のみの金融機関が融資に消極的になる

・ 新規の保証付融資申込や保証付融資の切替申込みに、金融機関の対応が鈍くなる(大量の資料等を要求する。なかなか答えが出ない。その両方)


対策

 「予想される事態」の理由は実は一つです。金融機関は申込企業にプロパー融資できるか、考えあぐねているのです。見直しの影響で金融機関は、数多くの中小企業についてプロパー融資の判断が必要になります。が、十分な情報を持ち合わせていません。分析や判断に必要な時間も不足しています。このため意思決定が滞ってしまうのです。

このため金融機関に「この企業ならプロパー融資できる」と判断できる材料を提供することが効果的です。具体的には自社の事業性をしっかりと分析・アピールする「事業性評価融資を中小企業から提案する事業計画書」を作成・提出します。これまで主に信用保証付融資で資金調達してきた中小企業には、是非、早めの対応をお勧めします。



<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙1枚のボリュームなのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達できる企業になるための方法をしっかりと学んでみてください。



印刷版のダウンロードはこちらから

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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