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第252回

雰囲気マネジメントで「息切れ倒産」に対処する

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



現在のように変化が激しい事業環境では、朝令暮改と言えるほど頻繁かつ大きな転換が必要になる場合があります。但し朝令暮改は特に現場の働き手に大きな負担となるので、これに配慮しないと思わぬトラブルに至る可能性があります。朝令暮改に耐える組織を目指す方法として本コラムでは「雰囲気のマネジメント」をご提案しました。今回は雰囲気のマネジメントが機能する可能性がある、もう一つの場合について考えます。



「息切れ倒産」する企業の一形態

今、息切れ倒産という言葉が囁かれています。これは、2020年初頭からの新型コロナウイルス感染症蔓延に対して政府が用意した借入制度などを利用してしのいだ企業が、3年経過して新型コロナウイルス感染症も下火となり「やっと以前のように事業活動できる」と安心できるタイミングになったにもかかわらず、借入金の返済原資が足りないことなどが理由で事業継続をあきらめてしまう等の現象です。なぜ、十分な売上・利益があがらないのか?景気の回復がまだら模様で、まだ十分に回復していない業種・企業もあるとは思いますが、それだけではない面もあると感じています。企業の売上・収益回復力が劣化していることが原因になっているのです。


コロナ禍は、よく考えるとかなり特殊な事象でした。実体経済における景気悪化(ITバブル崩壊不況)にしろ、金融経済における変調(リーマンショック)にしろ、「経済環境が悪化して我が社の売上が減り、利益も出せなくなった。周囲も同様だとしても、我が社は何とかして生き残らなければ。全力を尽くそう」と思って努力・工夫した企業が生き残りました。一方でコロナ禍は、当初はそのような事象は全くなく「たちの悪い感染症が流行っているので外出してはいけない。ということで学校を休校にした。事業活動も制限するように」という声掛けから景気の落ち込みが始まったのです。売上・利益の低下があっても、それに対処するために行動量を増やすという策が執れないという、特殊な事象だったのです。


この状況は、多くの働き手に取って「間違った感覚」を植え付けたのではないかと思います。それまでは「大きな負荷を感じないで仕事ができる、それが許される」とは、仕事量を増やして固定客を確保したり、知恵を出して我が社のファンを育むといった「平常を超える取組の対価」として得られるものでした。このため「今楽ができるからと言って油断しすぎると、元の木阿弥になってしまう」と警戒するのが普通だったと思います。楽することが油断に、余り繋がらなかったのです。


しかし今回は事実上全ての働き手に「仕事はほどほどにしろ」と言われてしまったのです。事前の種まきをしなかった人、即ち普段に力を入れて仕事にまい進しなかった人も含めて「楽する権利」を手に入れてしまいました。多くの働き手たちに「訳もなく楽ができた経験」が体に染みついてしまいました。一部には「これも私の権利」と勘違いした従業員もあるかも知れません。



「ノルマが機能しない時」の対処法

この図式が油断を生んでしまい、深く潜行しながら、時として企業に今までなかった問題を引き起こしていると考えられます。新型コロナウイルス感染症が3年経過して下火となり、法的にも5類相当に分類されることになって「やっと以前のように事業活動できる」と安心できるタイミングになったにもかかわらず、以前のように力を入れて仕事をしなくなったという現象です。


この状況にどう対処するか?「簡単だ、ノルマを課して仕事に邁進させればいい」という意見を聞きますが、状況を観察するとノルマはあまり機能してないようです。その理由は「楽は本来、頑張った報酬として与えられるものだ。油断すると危険だ」という意識があったのが、今回はこの思考回路が破壊されてしまったからです。


マネジメントの理論では従業員を促す方法として「目標で導く」、「行動そのものを強制する」そして「人間の特性を活用する」という3つが提案されています。最後の「人間の特性を活用する」とは、「これは快いので歓迎する」とか「あれは不快なので避けたい」との心理を踏まえるということです。コロナ禍での「油断」は、この方法でなければ打破するのは難しいと考えられます。「待ちに待った、力を入れて仕事ができる状況になった。これで伸び伸び仕事するぞ」とリーダーが思い、声掛けすることがポイントなのです。この点で率先して、現場リーダーを鼓舞できるのは経営者です。是非、前向きな姿を部下に見せて職場の雰囲気を高揚させ、「油断から息切れ倒産に至ってしまう」リスクを避けてください。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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なお、冒頭の写真は 写真AC からkimkimkaoruさんご提供によるものです。 kimkimkaoruさん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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