「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第49回

信用保証はどこへ向かうのか?

落藤 伸夫 2017年12月25日
 
年末の資金調達がほぼ終わった今、時々、聞こえてくるのは「信用保証は、今後どうなっていくのだろうか」との声です。そのようなお話しをお聞きすると、「中小企業企業経営者のみなさんの中には、本当にアンテナの高い方々がおられるな」と思います。今回は、中小企業庁から最近に発表された内容から、信用保証が今後、どこに向かっていくのかを考えたいと思います。


2016年12月の発表

「信用保証制度が変わるかもしれない。」みなさんがそうお感じになったきっかけは、中小企業庁が昨年12月に行った、ある発表です。中小企業政策審議会 基本問題小委員会 金融ワーキンググループから「中小企業・小規模事業者の事業の発展を支える持続可能な信用補完制度の確立に向けて」というレポートが発表されたのです。

<「中小企業・小規模事業者の事業の発展を支える持続可能な信用補完制度の確立に向けて(概要)」>
//www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/20161220002_01.pdf
(注)「信用補完制度」とは、中小企業のみなさんが民間金融機関から融資を受ける場合に信用保証協会が行う信用保証の制度(「信用保証制度」)と、信用保証協会をバックアップする国の制度(「信用保険制度」)の総称です。

そこでは、企業の成長段階を「創業期」、「拡大期」、そして「再生期」に分け、それら段階に応じて信用保証がきめ細やかな支援を行なっていくことが示されていました。「創業期」や「再生期」にある企業に、信用保証は積極的に支援する方向性のようです。また、創業期を生き延びた後は拡大路線ではなく小規模企業として地場で活躍する企業もサポートします。リーマンショックなどの大規模な経済危機等の場合においても、信用保証の活躍が期待されています。

とはいえ、信用保証が今まで創業期や再生期、小規模企業などを支援してこなかったという訳ではありません。危機時に対応してこなかったという訳でもありません。というか、その逆と言って良いと思います。信用保証には、特段の政策目的を持たない「一般保証」と、創業したばかりの企業支援や台風などの災害や親会社の倒産等に見舞われた企業支援など一定の政策目的を持った「特別保証」があります。国が設ける保証のほか、地方公共団体(保証協会の設置母体となっている都道府県の他、市とタイアップする場合もあります)が設ける保証もあります。これら特別保証の多くが、先ほど挙げたような企業や経済事象への対応を目的にしています。

このため昨年12月の発表は「今までの常識をおさらいしただけ」と感じた方も、少なくなかったようです。一方で、「これほど『ものものしい』発表をしたのだから、何か意図があるに違いない」とお感じになった方々もおられます。中小企業庁が「金融と経営支援の一体的推進」で提示された方向性にあることを知っていた筆者も、当然、大きな変革がなされるのではないかと考えていました。


2017年10月の発表

このような状況下、今年10月に、中小企業庁はもう一つの発表を行いました。「信用補完制度の見直し(平成30年4月1日から見直し後の制度がスタート)」と題するお知らせです。

<信用補完制度の見直し(平成30年4月1日から見直し後の制度がスタート)>
//www.chusho.meti.go.jp/kinyu/shikinguri/hokan/index.htm

そこでは、今回の見直しに関して3つの考え方がベースになっていると示されました。「信用補完制度が、中小企業の資金繰りを支える重要な制度であること」と、「信用保証への過度な依存が進むと弊害があること」、「信用保証協会と金融機関が連携して中小企業への経営支援を強化する仕組みが必要なこと」です(まとめは筆者による)。

続いて、大きく二つの対応が示されています。1つ目は、「危機関連保証の創設」をはじめとした、創業期や再生期にある中小企業への、よりきめの細かい保証制度等の創設です。

2つ目は、「信用保証協会と金融機関とが連携した支援」です。信用保証への過度な依存には、金融機関にとって「事業性評価融資やその後の期中管理・経営支援への動機が失われるおそれがある」という弊害、中小企業にとって「資金調達が容易になることから、かえって経営改善への意欲が失われる」という弊害があると指摘されています。このため「中小企業の経営改善や生産性向上を一層進めていくための仕組み」が必要だとされました。

そこで、信用保証協会と金融機関が連携するよう法律で要請されました。中小企業のそれぞれの実態に応じて、プロパー融資(信用保証なしの融資)と信用保証付き融資を適切に組み合わせ、信用保証協会と金融機関が柔軟にリスク分担を行っていくという連携です。その実効性を確保するため、連携を「信用保証協会向けの監督指針」にも明記すると共に、各金融機関のプロパー融資の状況等について情報開示することとされました。


今回の改正が意味するところ

以上の説明を素直に読むと、信用保証のあり方が大きく変わる可能性があると考えられます。今後、「創業期」や「再生期」にある企業向け、小規模企業向け、もしくは「危機時」には、信用保証は今まで以上に積極的に中小企業を支援することになるでしょう。一方で、それらに該当しない企業(つまり、ほとんどの中小企業)に対して信用保証が支援する場合には、プロパー融資も期待されるようになると読み取れます。

今までは、「債務者格付け」によるならばプロパー融資はできないと金融機関が考えた場合、信用保証を利用することになっていました。多くの場合、金融機関は、信用保証協会が保証承諾すれば融資を実行します。このことからすると金融機関は、債務者格付けで一定レベルを満たさない企業について、融資の可否を判断する必要はなかったと推察される状況でした。一方で中小企業は、信用保証協会が保証承諾するのを待っていれば良かったのです。

今後は、債務者格付けで一定レベルを満たさない企業についても、金融機関はプロパー融資ができるかどうか、判断することになりそうです。そして「プロパー融資を行うことができるが、中小企業の要望を完全に満たそうとするとリスクが大きくなりすぎる」と金融機関が考える場合、信用保証の出番となります。金融機関がリスクをとって中小企業を支援する場合に、リスク分担のために信用保証が活用できるという構図です。


必要となる「業務改善」

これは、中小企業にとっては「業務改善」が大切になることを意味していると思われます。債務者格付けではプロパー融資ができない中小企業に対して金融機関がプロパー融資できると判断できるのは、その中小企業が将来には儲かる(事業性のある)企業になるだろうと考える場合でしょう。中小企業に、事業改善への取組みが求められるのです。逆に考えると、債務者格付けではプロパー融資を今まで受けることができなかった中小企業でも、事業改善に取り組んで将来には儲かるだろうと金融機関が納得すれば、事業性評価融資を受けられる可能性があるのです。


必要となる「アピール力」

またこれは、「アピール力」が大切になることも意味しています。事業改善に取り組んでいても、それを金融機関に知られなかったら、事業性評価融資を受けられる可能性は開かれません。自らアピールするのです。最善の方法として、「これから、このような事業改善に取り組む」と宣言する事業計画書を提出方法があると、これまでお伝えしてきたところです。


以上のように考えると、平成30年4月からの信用保証制度改革は、中小企業にとって大きな影響を与えるものになりそうです。債務者格付けで問題なく融資を受けられる企業は、これまで通りで良いでしょう?一方で、「信用保証協会の保証が受けられれば」という条件を付けられるような企業の場合には、対応を変える必要がありそうです。

信用保証が受けられるかどうかを座して待っているのではなく、自ら動くことが大切です。事業改善に取り組み、事業計画書でもってそれをアピールするのです。そうすれば、信用保証制度改革は、貴社にとってピンチではなくチャンスをもたらしてくれるものになるでしょう。
 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。

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