「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第181回

ガバナンス体制の整備

落藤 伸夫 2021年10月18日
 



コロナ禍に対応するため積極的に資金調達した企業が、将来の事業承継に向けて代表者保証の免除を受けられるべく、どのように対策できるかを検討しています。金融機関が拠り所とする経営者保証ガイドラインには以下の3ポイントが示されています。


① 法人と経営者との関係の明確な区分・分離

② 財務基盤の強化

③ 財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保


今回は、これら全体にかかる「ガバナンス体制の整備」について少し詳しく検討していきます。



ガバナンスとは何か

ガバナンス、この場合は企業に係るコーポレートガバナンスですが、何でしょうか?「統治」と言われてもピンとこないかもしれません。噛み砕いて言えば「会社の、会社による、会社のためにリードあるいはコントロールがなされること」と言えます。


最初の「会社の」とは、事業のために設立された会社を、個人(特に社長)の目的を果たすためでなく、事業を遂行する目的でリード・コントロールするという意味です。「会社による」とは、時に個人の目的で会社を使おうとする可能性がある社長だけでなく、会社の機関でありその存続・繁栄のため仕事する取締役や監査役等によりリード・コントロールされるという意味です。「会社のため」とは、社長の利害と会社の利害が相反する場合には、会社の利害を優先したリードあるいはコントロールがなされるという意味です。


「随分、社長のことを疑うのだな」そのような解釈ではなく、会社を社長とは別人格だと認めるために必要な措置だと考えてください。会社、それがたとえ株式会社であっても、社長と実質上の株主、そして従業員までもが同一であれば、会社と社長は一心同体なので、代表者保証を免除することはできません。会社がどんどんと大きくなって(従業員も多数になって)株主も増え、取締役や監査役を設けていくと、そろそろ「会社と社長は別人格なのかもしれない」と思えるようになります。


一方で、例え従業員が1,000人おり、株主も増え、取締役や監査役も揃えたとしても、株主や取締役、監査役などが全て社長の言いなりなら「会社の、会社による、会社のためのリード・コントロール」が成立しているとは言えません。個人の所有物と言わざるを得ないのです。



ガバナンス体制が整備されている姿

では、どのような状態であれば会社が社長と一心同体ではない、ガバナンス体制が整備されていると言えるでしょうか。「株主総会が開かれて監視が行われている」、「取締役(取締役会)が置かれて相互牽制や相互監視が行われている」、「公認会計士や税理士による会計参与が置かれており、開示体制が強化されている」、「監査役(監査役会)の監查が行われている」そして「監查法人や公認会計士による外部監査人が置かれている」が目安になります。


但し、これらが形式的に置かれているだけではガバナンス体制が整備されているとは言えません。実質的に機能している必要があります。たとえば株主が複数人おり株主総会が開かれていたとしても、株主全員が社長の家族ならば実質的な監視が行われているとは言えないでしょう。取締役・取締役会についても同様です。



会計参与の活用

「しかし我が社は他人に株を引き受けてもらうほどの規模でもないし、会社を熟知して取締役・監査役ができる人材も家族しかいない。監査法人に会計監査人をお願いして外部監査を受けるほどでもない。この場合にはどうすれば良いのか?」公認会計士や税理士による会計参与を活用する方法が考えられます。


会計参与とは、会社が作成する計算書類に一定の品質を保証する制度です。会社の内部機関として設置されるので、会計監査人による外都監査を受けるほどのレベルの信頼性を求めることはできません。但し会計参与は公認会計士や税理士が就任し、会計参与が関与して作成された計算書類を信頼して取引した第三者が万が一、損害を負った場合には損害賠償責任を負うことになっています。そのため一定の品質が期待できるのです。


ガバナンス体制が確立している会社とは、以上から理解できるように「会社の、会社による、会社のためのリード・コントロール」が実現できる仕組みがある会社です。時に社長が「私的目的のため会社のお金を借りたい」と考えた時に、金庫からお金を持ち出すのではなく、他の取締役の了解を取り、期限や利息などを定めた契約書を作成し、約束通りの返済がなされることを監査役がチェックし、実際に返済され、以上が会計上適切に処理される仕組みを設けることです。


一見、大変な取組ですが、社長にも、会社の借入について保証人になる必要がないという非常に大きなメリットが享受できる可能性があります。ぜひ、前向きに検討してみてください。




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なお、冒頭の写真は 写真AC からacworksさん ご提供によるものです。acworksさん、どうもありがとうございました。



 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


HP:StrateCutions

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