「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第282回

黒字倒産回避に向けた資本性ローン活用

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



コロナ禍からの長いトンネルを抜けて黒字化したにもかかわらず、債務超過であることから資金繰りのための資金を確保できず、黒字倒産の危機にある企業が少なくないと言われています。そのような企業が頼れる制度として日本公庫の資本性ローンがあります(コロナ特別は年末までの予定)。今回は当該制度について考えます。



資本性ローンが切り札になる理由

新型コロナウイルス感染症蔓延による景気失速を原因とするショック死から中小企業を守るコロナ特別貸付及びコロナ特別保証は、概ね2022年で終了しました。その後は融資拡大ではなく、事業改善・事業再生に取り組んで活性化を図る企業に据置期間の再設定などを可能にする「コロナ借換保証(信用保証の場合)」が創設、こちらも既に廃止されました。現在も残されているコロナ対策金融対策は、日本公庫による「新型コロナ対策資本性劣後ローン(コロナ資本性ローン)」と、信用保証協会による「経営改善サポート保証(コロナ対応)」です。両制度とも年末までと予定されています。

https://www.meti.go.jp/press/2024/06/20240607002/20240607002-1.pdf


「コロナ資本性ローンが黒字倒産回避の切り札になるのはなぜか?」資本性ローンには「借入であるが、民間金融機関は資本とみなせる」というメリットがあるからです。当該制度の正式名称「新型コロナ対策資本性劣後ローン」には「劣後」という語が含まれていますが、これは当該貸付は借入人への売掛債権や給与債権、あるいは他の貸付債権よりも劣後している、つまりこれら他債権が満足されなければ当該貸付の返済を受けることができないという意味です。回収順位が出資と同順位なので、当該貸付を資本とみなせるという仕組みです。

債務超過の企業が債務超過額をフォローする資本性ローンを受けると、民間金融機関としては「この企業は債務超過だったが、コロナ資本性ローンを資本とみなせば解消されたと考えられる。融資支援が可能なった」と判断できます。資本性ローンによる資金確保と、民間金融機関融資による資金確保が可能になるのです。



資本性ローンを活用できる企業

「そんな制度があるならぜひ検討したい。どんな企業が利用できるのか?」コロナ特別貸付やコロナ特別保証では「困っている」ことが要件でしたが、コロナ資本性ローンは「頑張っていく」ことが要件です。具体的には、中小企業活性化協議会等の支援を受けて事業再生を行う、あるいは事業計画書を策定し民間金融機関等による支援を受けながら事業再生を行うことが要件です。


要件を詳しく見ると、コロナ資本性ローンを利用できる企業には2つのカテゴリーがあることが分かります。1つは中小企業活性化協議会等の支援を受けて事業再生を行う企業です。支援する機関が策定支援する事業計画をもとに再生への取組を進めていきます。コロナ資本性ローンの申込みに当たっては、この事業計画を提出、審査を受けることになると考えられます。

もう1つは事業計画書を策定して民間金融機関等による支援を受けながら事業再生を行う企業です。この場合、事業計画の策定(支援)には様々な形があるでしょう。コロナ資本性ローンを利用したいと考えた企業が策定(専門家による策定支援を受けることも可能)する場合もあれば、民間金融機関が「この企業に貸付支援するにはコロナ資本性ローンの導入が必要だ」と考えて策定支援する場合もあると考えられます。



活用に必須条件となる計画の中身

ここでポイントなのが計画書の中身です。「現状から売上・利益を微増させる計画しか描けない。それが現実だ。」そのお気持ちは分かりますが、出資者の立場で考えてみましょう。「売上・利益を微増させる計画しか立てられない」という債務超過の会社に出資する人がいるでしょうか。ローンという名ではあるが実質は出資を行う公庫等も同じ想いです。

債務超過をカバーする資金を受けて素早く倒産の危機を乗り越え、5年1ヵ月、7年、10年、15年、20年という貸付期間中に債務超過を解消して健全企業に立ち戻れる企業、強い気概を持って取り組む企業に出資したいと思います(そのような企業でなければ出資できません)。自社の立ち直りに意欲的な企業がコロナ資本性ローンによる支援を受けられるのです。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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なお、冒頭の写真は Copilot デザイナー により作成したものです。

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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