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「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第62回

創業資金を調達する

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 

 中小企業の事業者数がつるべ落としに減少している中、新規起業者の創業が切に求められています。商店街に今までずらりとあった小さな商店が大規模スーパーに置き換わると、確かに便利かもしれませんが、街の活気はなくなってしまうでしょう。下町の工場地帯から町工場が一つ二つと消えていくと、人口が減るだけではなくサプライチェーンにミッシングリンクが生じて、工場地帯の価値そのものが失われていきます。

 これをなんとかしようと、国も創業支援に力を入れています。創業補助金も準備されていますが(今年の募集は終了しました)、創業融資も、日本政策金融公庫の融資制度や各地方自治体・信用保証協会の制度融資が準備されています。起業を考える皆さんには、是非、これらの融資制度を活用して頂きたいと思っています。

 このように国は創業を積極支援する姿勢ですが、時折「創業融資が難しいと言われた。受けられなかった」という声をお聞きすることがあります。お話をよく聞いてみると、一部についてはもっともな事情がありますが、全てがそうだとは限りません。対策を打てる場合があります。今回は、その点についてまとめてみます。



民間金融機関に申し込んだ場合

 「創業融資を申し込んだがダメだった」との話がある時、稀ですが「民間金融機関に申し込んだ」と言われる場合があります。確かに銀行や信用金庫は事業者に融資する機関ですが、創業融資は難しいでしょう。創業者は「実績がない」場合が多いからです。ここでいう実績とは「税務署に提出した申告書(決算書を含む)」だと思って下さい。金融機関は決算書(税務署に提出したものを3期分程度)をもとに融資可否や金額を決定しているからです。

 「そんな。決算書なんか見ずに人を見て融資してくれよ。」その気持ちは分かります。が、ここは「金融機関とは『血液やCT等の検査結果をもとに薬を出す医者』のようなもの」と考えて下さい。人を見て薬を出してくれる医者もいるでしょう。一方で、検査結果をもとに薬を出す医者がいても不思議ではありません。その医者に「検査はしないで薬を出してくれ」と頼んでも無理でしょう。金融機関は決算書分析をメインに「お金」という薬を出す医者のようなものです。決算書のない、もしくは決算書をメインに判断したら融資できないと結論せざるを得ない創業者からの融資申込みに、民間金融機関が対応するのは難しいのです。


日本政策公庫から「難しい」と言われた場合

 では「検査結果ではなく人を見て薬を出してくれる医者」のような金融機関はどこか?その代表が日本政策金融公庫(国民事業)です。公庫は融資メニューに「創業融資」を掲げており、決算書のない、もしくは創業期のため赤字の企業についても融資を検討してくれます。多くの起業者が公庫から資金調達して起業を成功させることができました。  創業融資を考えている方は、是非、公庫の融資案内をしっかりとチェックして下さい。そこには申込みにあたっての申請書フォーマットや要件等が記載されています。

https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/goriyo_shinki.html

 また「クレジットブラックである」「税金や公共料金等に滞納がある」「事業資金について自前で全く準備していない」場合にも、創業融資は無理だと思って下さい。「融通が効かないのだな。」それは、創業融資が国の事業、つまり税金で賄われているからだと思って下さい。政府から増税提案があった時「クレジットブラックもしくは税金や公共料金を滞納している、自己資金も準備していない創業者を積極的に支援したら貸し倒れてしまった。多額の税金を投入したので増税したい」という理由に納得できるでしょうか?



事業実態の判断が難しい場合

 一方で「要件に合致していない訳ではないのに、融資が受け入れられなかった」という声を聞くことがあります。「きっちり事業をしているのに融資してくれないなんて、おかしい」という事情を聞くと、「それだったら、相談してくれたら良かったのに」と思うことが少なくありません。こういうケースでは、ほとんどの場合、事業実態の判断が客観的には難しいことが原因となっているからです。

 例えば、自宅でアプリ開発をし、将来、それでインターネットを使ったビジネスを予定している事業者を考えてみて下さい。今までアプリを販売した実績はないとします。今、開発しているアプリ開発も、どこかの依頼がある訳ではなく、自主的に作成しています。従業員も雇っておらず、作業場等を借りている訳でもありません。

 このような事業者の申し込みに、公庫は、それが事業として行われていると確信を持つことは困難でしょう。融資申込みを断わらざるを得ない場合もあるのです。


事業実態を証明する

 このような状況で、事業者は「公庫は官僚的だ。事業者の事情を分かっていない」と言われますが、これはまさに「情報の非対称性」だと感じます。事業者は「自分が事業をしている」証拠をたくさん知っているのに、公庫はそれを客観的に知る術がないのです。例えば以下のようにして、伝えることができるかもしれません(一つだけでなく、できるだけ多く、書面で証明できることがポイントです)。

・ 税務署・行政に開業届を提出する

・ 顧問税理士と契約して試算表を作成してもらう

・ 事業計画書を作成してコンテストに応募する

・ 協力者と業務提携契約を結ぶ

・ 商品・サービスの実現にフィンテックで出資を募る


 これらを証する書類の提出があれば公庫も、実態のある事業であると納得することができるでしょう。融資申込書を受理してもらい、実質的な審査を始めてもらうスタートラインに立てるのです。起業時の資金調達は時に容易ではありませんが、積極的な情報開示が突破口になる可能性があるのです。是非、お試しください。



<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙1枚のボリュームなのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達できる企業になるための方法をしっかりと学んでみてください。


印刷版のダウンロードはこちらから

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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