「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第312回

「骨太の方針」から見える中小企業の将来

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤伸夫

 


政府は2026年7月21日「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2026」を発表しました。今回はこの資料から垣間見える中小企業の将来について考えます。



2026年度骨太の方針

この資料の目玉「17の戦略分野における官民投資」は以前から話題になっていましたが、資料を俯瞰すると、その考えに至った理由が分かります。我が国の潜在成長率が長年にわたる「未来への投資不足」により、主要先進国と比べて低迷しているからです。

これは生産能力不足の結果であると共に科学技術力、産業競争力、人材力などの基盤の弱体化をもたらし、それらが相まって成長を停滞させるという負のスパイラルを生んでいます。


「成長を目指さなくても平穏に暮らせれば良い」との声も聞こえてきそうです。

しかし今やグローバル化の時代(その言葉を必要としないほどグローバル化が進展)、つまり一国だけでは成立し得ず、エネルギーもナフサも、食料品も繊維製品も外国に頼らざるを得ない状況では、世界と足並みを揃えて成長しなければ、以前は調達できた基礎的資材を手に入れることができなくなります。


統計によると1997年から2022年までの名目GDPは、日本は1.12倍でした。同期間のアジア諸国では、インドは21.4倍、中国は16.9倍、マレーシアは6.9倍、韓国は4.6倍です。アメリカ大陸だとアメリカとカナダは3.4倍、ブラジルは12.4倍、チリは8.7倍でした。ヨーロッパではスウェーデンが3.1倍、イギリスが3.0倍、ポルトガルが2.8倍、フランスが2.3倍、ドイツが2.2倍でした。

https://www.fukurou.win/gdp-graph1/

GDPの成長は、生活水準のレベルアップに繋がる他、インフレを吸収します。

1990年から2020年にかけて消費者物価指数がアメリカでは約2倍、ドイツでも1.7倍となった一方で日本は10%程度の伸びでした。つまりインフレを吸収できていない、国際的な競争にさらされる資材等を価格で競り負けて調達できないという意味です。

http://dlri.co.jp/report/ld/232531.html

今までも潜在的にこのデメリットは生じていましたが、特に今、その辛さをひしひしと感じていると思われます。


成長しなければ平穏な生活を送れない可能性があります。



日本の成長に貢献する中小企業の掘り起こし

このため高市内閣では「責任ある積極財政」の考え方の下、危機管理投資や成長投資を大胆かつ戦略的に進めることとしています(財政健全化との関連に注目が集まっていますが、ここでは措いておくこととしましょう)。

成長戦略の要が、先にも挙げた17の戦略分野、62の主要な製品技術等への官民投資と、8つの横断的課題への対応に向けた政策パッケージです。

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2026/2026_basicpolicies_ja.pdf


中小企業の事業・資金調達環境を考える本メルマガでは、骨太の方針において中小企業がどのような形で触れられているかに大きな興味を持っています。

そこでは「強い経済の実現には、強い中堅・中小企業が主役とのなって地域経済をけん引する・・・。このため・・・100億円企業や中堅企業から、売上高1~10億円の企業と小規模事業者、ローカル・ゼブラ企業に至るまで、変革に挑む企業に対し、幅広い支援を行う」とされています。


ここで引用されている「労働供給制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略」においては、「①売上規模を拡大し例えば売上高 10 億円を目指す成長志向の中小企業や、②高収益型を目指す成長志向の中小企業を創出するべく、経営者が経営改革に本気で取り組み、メインバンクも本気で伴走支援を実施する中小企業を選定し、政策支援を集中投下する。まずは経営課題に対応し、経営管理能力の高度化と経営改革を通じて、大胆な成長投資ができる経営基盤を整えていく」とあります。

https://www.meti.go.jp/files/000001983.pdf


以上から何が伺えるか?政府が中小企業に対して行う支援には大きく二つ「投資支援(補助金や金融支援)」と「経営支援」がある中、これまでは不調な企業や再生段階にある企業に経営支援を行い、その他の「元気な企業」から「普通の企業」まで投資支援を行ってきたが、今後は投資支援は「自社の成長を目指し、ひいては国の強い経済に貢献する企業」を中心とし、「その他企業、あるいは成長を目指すにあたり経営課題への対応が必要な企業等」には経営支援を行う、にシフトすると考えられます。


成長を目指す企業には大きなチャンスが拓けると共に、その他企業には「あり方」を見直すよう促される、骨太の方針を読んで、このように考えた次第です。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>

https://www.innovations-i.com/shien/id/panf_id/?id=859



【筆者へのご相談等はこちらから】

https://stratecutions.jp/index.php/contacts/



<日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル>

https://www.amazon.co.jp/dp/B0DYDL46H6/




なお、冒頭の写真はChatGPTにより作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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