第3回
今年の最低賃金はいくら上がる?対応できてますか?
サポートプラス社会保険労務士事務所 長橋 知世
「今年の最低賃金の引き上げ額はどのくらいですか」「複数の都道府県に事業所がある場合や在宅勤務の社員には、どこの最低賃金が適用されるのですか」――。最低賃金は毎年10月頃に改定されますが、今回は、令和8年度(2026年度)の改定内容と、企業が今のうちに確認しておきたいポイントを整理します。
令和8年度は最低賃金はいくら?

令和8年度の最低賃金は、各都道府県で決まりつつあります。現時点で判明している都道府県では、54円~64円のアップ額となっており、地方のアップ額が大きい結果となっております。全国平均では、昨年度(令和7年度)のアップ額(66円)よりやや小幅な引き上げとなる見込みです。
※表に記載のない都道府県は各都道府県にご確認ください。
いつから引上げ?
実際の金額は、この目安をもとに令和8年10月1日から順次発効される予定です。都道府県によって発効日が異なるため、決定となった最低賃金額と発行日については、地元の労働局の発表で確認しましょう。
在宅勤務の場合は?他の都道府県に事業所がある場合は?
最低賃金は、労働者が実際に作業をしている場所ではなく、労働者が所属する事業場の所在地の最低賃金が適用されるのが原則です。
たとえば、東京の事業所に所属する労働者が、在宅勤務で沖縄県の自宅から勤務している場合でも、適用されるのは東京都の最低賃金です。
複数の都道府県に支店や営業所がある会社では、本社所在地の最低賃金で一律に管理するのではなく、労働者が実際に所属する事業場ごとに、それぞれの都道府県の最低賃金を確認する必要があります。
最低賃金違反の罰則は?
地域別最低賃金(都道府県ごとに定められるもの)に違反した場合の罰則は、50万円以下の罰金の対象となります。行為者本人だけでなく、法人にも同様の罰金が科される両罰規定もあります。
罰則の有無にかかわらず、最低賃金額との差額を遡って支払う義務が生じます。
今のうちに確認しておきたいことは?
• 時給制のパート・アルバイト等について、現在の時給が新しい最低賃金額を下回らないか確認する
• 月給制の従業員についても、基本給だけでなく諸手当を含めて時間換算した賃金が最低賃金を下回らないか確認する
• 割増賃金(残業代)を計算する際の単価も同時に上がります。改定後の時給・基本給をもとに、残業代を含めた人件費への影響を試算しておく
• 基本給や時給を引き上げた場合、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の随時改定(月額変更届)の対象になることがある
社労士から一言
政府は、2030年代前半には最低賃金の全国加重平均を1,500円まで引き上げる方針を掲げており、引き上げは今後も一定のペースで続くと見ておいた方がよいでしょう。毎年の恒例行事として賃金改定に向き合う体制を整えておくことをお勧めします。
実際、昇給月を10月に変更する会社も増えている印象があります。
負担ばかりに目が向きがちですが、賃上げを従業員のモチベーション向上や定着につなげる機会と捉える視点も大切です。
とはいえ、人件費の増加分をすべて企業努力だけで吸収するのは簡単ではありません。価格転嫁もやむを得ない選択肢の一つですし、業務効率化など生産性を高める工夫も並行して必要です。最低賃金への対応を、事業運営全体を見直すきっかけとして捉えていただければと思います。
まとめ
令和8年度の地域別最低賃金は、10月1日から順次発効する見込みです。実際の金額・発効日は都道府県ごとに決定されるため、自社の所在地の最終決定を確認しましょう。また、在宅勤務や複数事業所がある場合の適用地域、残業代単価への影響まで、あわせて確認しておくことが大切です。
詳しくは、厚生労働省の「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」を参照してください。
・令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について(令和8年7月28日/厚生労働省)

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プロフィール

長橋 知世
サポートプラス社会保険労務士事務所
株式会社With us 代表取締役
女性の採用「ララワーク」
女性起業家コミュニティ「ララ・コンシェルジュ」
一般社団法人日本アンコンシャスバイアス協会 代表理事
静岡県立沼津東高校卒
立教大学社会学部観光学科卒
一般企業、商業高校の教員として勤務したのち、出産を機に退職し家庭に入る。
2児の子育てが落ち着いた45歳で社会保険労務士資格を取得。
2018年に横浜で社労士事務所の開業に至る。
女性活躍社会の実現を目指し、女性起業家コミュニティ「ララ・コンシェルジュ」を立ち上げ、一年でメンバーを100名とする。
子育てもキャリアだと認められる社会を目指し、女性に特化した人材紹介事業「ララワーク」を立ち上げ、企業とのマッチングを進めている。
一般社団法人日本アンコンシャスバイアス協会代表理事として、多様性が尊重される社会の実現を目指し、企業向け研修や認定講師養成講座を実施している。
Webサイト:サポートプラス社会保険労務士事務所
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