第2回
「子ども・子育て支援金」と「子ども・子育て拠出金」の違いを知ってる?
サポートプラス社会保険労務士事務所 長橋 知世
「子ども・子育て支援金という制度が始まったが、前からある『子ども・子育て拠出金』と何が違うのか」「給与明細にどう影響するのか」――。名前がよく似た2つの制度を混同している人事・給与担当者は少なくありません。今回は、両制度の違いと、2026年4月に始まった支援金について整理します。
子ども・子育て拠出金とは(既存の制度)
子ども・子育て拠出金は、もともと児童手当の財源として設けられ、その後、地域の子ども・子育て支援事業等にも使途が広がった制度です。厚生年金の適用事業所を対象に、事業主が全額を負担します。
拠出金額は、厚生年金の標準報酬月額・標準賞与額に拠出金率を掛けて算出され、厚生年金保険料とあわせて日本年金機構が徴収します。従業員の給与から控除されることはなく、給与明細に表示される項目でもありません。2026年度(令和8年度)の拠出金率は0.36%です。
子ども・子育て支援金とは(2026年4月開始の新制度)
子ども・子育て支援金は、「こども未来戦略 加速化プラン」に基づき、児童手当の拡充や育児休業給付の拡充などの財源を確保するために新設された制度で、2026年4月から始まりました。
拠出金と異なり、支援金は医療保険制度を通じて徴収されます。健康保険に加入する従業員であれば、独身者や高齢者を含めてすべてが対象となる点が特徴で、「独身税」と呼ばれたこともありますが、税金ではなく拠出金の一種です。
被用者保険(健康保険組合や協会けんぽなど)に加入している場合、支援金額は「標準報酬月額×支援金率×2分の1」で計算され、労使で折半します。2026年度の支援金率は0.23%です。たとえば標準報酬月額30万円の従業員であれば、月額の従業員負担は345円、同額を事業主も負担します。賞与からも同様に徴収され、育児休業中は免除されます。
2つの制度、どこが違うのか
• 根拠・目的:拠出金は児童手当等の財源として設けられた既存の仕組み、支援金はこども未来戦略に基づき新設された制度
• 負担者:拠出金は事業主が全額負担、支援金は事業主・従業員が労使折半
• 徴収ルート:拠出金は厚生年金保険料とあわせて日本年金機構が徴収、支援金は健康保険料とあわせて医療保険者(協会けんぽ・健康保険組合等)が徴収
• 対象者:拠出金は厚生年金適用事業所(事業主)が対象、支援金は健康保険に加入するすべての被保険者(独身者・高齢者を含む)が対象
• 給与明細への表示:拠出金は従業員負担がないため表示されない、支援金は給与・賞与から控除されるため表示が必要
支援金が始まっても、拠出金の納付が不要になるわけではありません。2026年度以降は、両制度が並行して存在していることになります。
社労士から一言
今年の4月分からの給与明細の控除項目に「子ども・子育て支援金」という項目がある場合と、「子ども・子育て支援金」という項目がなく、健康保険料に含まれている場合もあります。まずは自社の給与明細の様式を確認してみてください。内訳表示は法令上の義務ではないものの、こども家庭庁からは区分表示への協力が要請されています。
会社負担分は対象従業員全員の標準報酬月額をもとに算出されるため、自社の総人件費にどの程度影響しているかを確認しておくと安心です。特に賞与支給月は、賞与額に対しても拠出金・支援金がかかり、その月の社会保険料負担額が大きくなるため、資金繰りの見通しを立てる際は、賞与月の負担増も忘れずに織り込んでおきましょう。
まとめ
子ども・子育て拠出金は事業主だけが負担する既存の制度で、給与明細には表れません。一方、子ども・子育て支援金は2026年4月に始まった新しい制度で、健康保険を通じて労使双方が負担し、給与・賞与から控除されます。似た名称の2つの制度が並行して存在することを踏まえ、給与計算の実務と従業員への説明の両面で、しっかり頭の整理をしておきましょう。
詳しくは、こども家庭庁「加速化プランによる子育て支援の拡充と子ども・子育て支援金」を参照してください。
• 加速化プランによる子育て支援の拡充と子ども・子育て支援金(こども家庭庁)

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プロフィール

長橋 知世
サポートプラス社会保険労務士事務所
株式会社With us 代表取締役
女性の採用「ララワーク」
女性起業家コミュニティ「ララ・コンシェルジュ」
一般社団法人日本アンコンシャスバイアス協会 代表理事
静岡県立沼津東高校卒
立教大学社会学部観光学科卒
一般企業、商業高校の教員として勤務したのち、出産を機に退職し家庭に入る。
2児の子育てが落ち着いた45歳で社会保険労務士資格を取得。
2018年に横浜で社労士事務所の開業に至る。
女性活躍社会の実現を目指し、女性起業家コミュニティ「ララ・コンシェルジュ」を立ち上げ、一年でメンバーを100名とする。
子育てもキャリアだと認められる社会を目指し、女性に特化した人材紹介事業「ララワーク」を立ち上げ、企業とのマッチングを進めている。
一般社団法人日本アンコンシャスバイアス協会代表理事として、多様性が尊重される社会の実現を目指し、企業向け研修や認定講師養成講座を実施している。
Webサイト:サポートプラス社会保険労務士事務所
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