第8回
パートさんの社会保険、いつから加入?社会保険料調整制度とは?
サポートプラス社会保険労務士事務所 長橋 知世
「うちは従業員30人ほどですが、パートさんも社会保険に入ることになるのですか」「保険料の会社負担が増えると聞いて不安です」「パートさんから『手取りが減るなら働く時間を減らしたい』と言われたらどうすれば…」――。社会保険(健康保険・厚生年金保険)の短時間労働者への適用拡大が、企業規模要件の撤廃に向けて段階的に進められています。今回は、適用拡大のスケジュールと「保険料調整制度」について整理します。
短時間労働者の社会保険加入が段階的に広がる
短時間労働者の加入要件のうち「企業規模要件」が、次のスケジュールで縮小・撤廃されます。
• 令和9年10月:被保険者数が35人を超える企業
• 令和11年10月:被保険者数が20人を超える企業
• 令和14年10月:被保険者数が10人を超える企業
• 令和17年10月:企業規模要件を完全に撤廃
企業規模要件の撤廃後は、週20時間以上の所定労働時間などの要件を満たす短時間労働者が、企業規模にかかわらず加入対象となります。
自社が対象となる時期は、「従業員数」ではなく、短時間労働者を除く厚生年金保険の「被保険者数」で判断されます。
保険料調整制度とは
新たに加入する短時間労働者が就業調整をせずに働けるよう、令和8年10月から「保険料調整制度」が始まりました。
• 事業主が被保険者の保険料を一時的に一部追加負担することで、標準報酬月額12.6万円以下の短時間労働者の保険料負担を、通算3年間軽減できます。ただし、軽減割合は3年目に縮小します。
• 追加負担分は後日還付されるため、納付期限内に納付すれば、最終的に事業主の納付額は増えないとされています。
• 被保険者の将来の年金額には影響しません。
対象となるのは、令和9年10月以降の適用拡大で新たに特定適用事業所となる事業所などです。令和8年10月1日時点で既に特定適用事業所の場合は対象外です。
利用には事業主の申出が必要で、期限があります。また、利用開始後に事業主の都合でやめることはできません。
今のうちに確認したいこと
• 自社の被保険者数から、適用拡大の対象となる時期を把握する
• 週の所定労働時間が20時間以上のパート・アルバイトの人数を確認する
• 加入による手取り額の変化と、会社負担の保険料額を試算する
• 保険料調整制度の対象事業所に該当するか、利用するかを検討する
• 対象となる従業員に、加入のメリットや制度について事前に説明する
社労士から一言
相談を受けていて感じるのは、「社会保険に入ると手取りが減る」というお話が先行して、加入のメリットが十分に伝わっていないということです。厚生年金に加入すれば、基礎年金に加えて厚生年金が受け取れ、健康保険では傷病手当金なども受けられます。負担面だけでなく、将来の安心につながることも丁寧に説明してください。
会社にとっては、社会保険料の会社負担が増えます。従業員の働き方のご希望を確認したうえで、シフトや所定労働時間のあり方を検討し、人件費への影響を早めに試算しておくと安心です。
まとめ
短時間労働者の企業規模要件は、令和9年10月(35人超)から段階的に縮小され、令和17年10月に撤廃されます。保険料調整制度は令和8年10月から始まっており、一定の事業所・被保険者が利用できます。自社が対象となる時期を把握し、従業員への説明と人件費の試算を進めておきましょう。

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プロフィール

長橋 知世
サポートプラス社会保険労務士事務所
株式会社With us 代表取締役
女性の採用「ララワーク」
女性起業家コミュニティ「ララ・コンシェルジュ」
一般社団法人日本アンコンシャスバイアス協会 代表理事
静岡県立沼津東高校卒
立教大学社会学部観光学科卒
一般企業、商業高校の教員として勤務したのち、出産を機に退職し家庭に入る。
2児の子育てが落ち着いた45歳で社会保険労務士資格を取得。
2018年に横浜で社労士事務所の開業に至る。
女性活躍社会の実現を目指し、女性起業家コミュニティ「ララ・コンシェルジュ」を立ち上げ、一年でメンバーを100名とする。
子育てもキャリアだと認められる社会を目指し、女性に特化した人材紹介事業「ララワーク」を立ち上げ、企業とのマッチングを進めている。
一般社団法人日本アンコンシャスバイアス協会代表理事として、多様性が尊重される社会の実現を目指し、企業向け研修や認定講師養成講座を実施している。
Webサイト:サポートプラス社会保険労務士事務所
女性の採用「ララワーク」
女性起業家コミュニティ「ララ・コンシェルジュ」
