第7回
10月1日から変わった同一労働同一賃金、対応できてますか?
サポートプラス社会保険労務士事務所 長橋 知世
「家族手当や退職手当は、非正規社員にも必要なのか」――。2026年10月1日、同一労働同一賃金に関する改正省令・告示が施行されました。パートタイム・有期雇用労働者を1人でも雇用していれば、企業規模を問わず対象となります。今回は、改正のポイントと企業が確認しておきたいことを整理します。
改正の3本柱
今回の改正は、大きく次の3つで構成されています。
• 労働条件通知書(雇い入れ時の明示事項)の追加
• 同一労働同一賃金ガイドライン(不合理な待遇の禁止等に関する指針)の改正
• 雇用管理改善措置に関する指針の改正
雇い入れ時に「待遇差の説明を求められる旨」の明示が必要に
パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れる際、これまでの昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口に加え、通常の労働者との待遇差の内容や理由について、事業主に説明を求めることができる旨を明示する必要があります。
〈労働条件通知書の記載例〉
次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。
部署名 担当者職氏名 (連絡先 )
対象は、10月1日以降に新たに雇い入れる労働者です。厚生労働省がモデル労働条件通知書を公表していますので、自社の様式を更新しておきましょう。
ガイドラインで具体化された待遇
ガイドラインでは、近年の最高裁判例の考え方を踏まえ、退職手当、家族手当、住宅手当、病気休職、夏季・冬季休暇、無事故手当などについて、待遇差が不合理にあたるかどうかの考え方や具体例が追加・拡充されました。
共通するのは、「正社員だから」「パートだから」という雇用形態の違いだけでは、待遇差の理由にならないという点です。その待遇の性質・目的は何か、職務内容や配置変更の範囲などに照らして、差を設けることに合理的な理由があるかが問われます。
説明を求められたときの備えを
待遇差の説明は、口頭だけで済ませるのではなく、資料を用いた説明や資料の交付を行える体制を整えておくことが重要です。あわせて、説明を求めたことを理由とする不利益な取扱いは禁止されています。
今のうちに確認しておきたいこと
• 労働条件通知書の様式を、改正に対応したものに更新したか
• 正社員とパート・有期社員との待遇差(手当、賞与、退職手当、休暇、福利厚生など)を一覧にしたか
• それぞれの待遇差について、理由を説明できる状態になっているか
• 説明を求められた際の担当者・対応手順を決めているか
• 待遇差を見直す場合は、就業規則・賃金規程を改定したか
社労士から一言
優秀なパートや契約社員の方が、正社員と変わらない仕事を任されていませんか。そうした場合、給与や待遇に差があれば、その内容や理由を説明できる状態にしておく必要があります。説明を求められてから慌てて理由を探すのではなく、まず待遇差の一覧を作り、「なぜその差があるのか」を一つずつ言葉にしてみてください。説明できない待遇差は、見直しのサインです。
見直しにあたり、正社員の待遇を一方的に引き下げて差を埋めることは、不利益変更の問題が生じるおそれがあり、現実的ではありません。待遇の引き上げや、意欲と能力のあるパート・契約社員の正社員登用を検討することも、有効な選択肢です。
まとめ
10月1日から、パート・有期社員の雇い入れ時に、待遇差の説明を求められる旨の明示が必要になりました。ガイドラインも具体化され、「雇用形態が違うから」だけでは説明になりません。待遇差の棚卸し、理由の整理、労働条件通知書の更新、説明体制の整備を、早めに進めておきましょう。

アンコンシャスバイアス研修のお問い合わせはこちらから👇
https://unconsciousbias.jp/
この連載の前後の記事
プロフィール

長橋 知世
サポートプラス社会保険労務士事務所
株式会社With us 代表取締役
女性の採用「ララワーク」
女性起業家コミュニティ「ララ・コンシェルジュ」
一般社団法人日本アンコンシャスバイアス協会 代表理事
静岡県立沼津東高校卒
立教大学社会学部観光学科卒
一般企業、商業高校の教員として勤務したのち、出産を機に退職し家庭に入る。
2児の子育てが落ち着いた45歳で社会保険労務士資格を取得。
2018年に横浜で社労士事務所の開業に至る。
女性活躍社会の実現を目指し、女性起業家コミュニティ「ララ・コンシェルジュ」を立ち上げ、一年でメンバーを100名とする。
子育てもキャリアだと認められる社会を目指し、女性に特化した人材紹介事業「ララワーク」を立ち上げ、企業とのマッチングを進めている。
一般社団法人日本アンコンシャスバイアス協会代表理事として、多様性が尊重される社会の実現を目指し、企業向け研修や認定講師養成講座を実施している。
Webサイト:サポートプラス社会保険労務士事務所
女性の採用「ララワーク」
女性起業家コミュニティ「ララ・コンシェルジュ」
