StrateCutions (ストラテキューションズ)

「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第36回

実際にご支援した事業計画書の例

金融庁が地域金融機関に対して「中小企業の支援をするように」と声高に呼びかけながらも、金融機関としてはまだ準備が整っていない現在においては、中小企業が「事業性評価融資を依頼する事業計画書」を作成し、それでもって金融機関・支店に打診してみることがポイントになります。前回では、そのような計画書の概要をご説明しました。今回は、筆者が作成をご支援した「事業性評価融資を依頼する事業計画書」の内容を、お知らせしましょう。


どのような企業か?

計画の作成支援を行なった企業は、実質5期連続で赤字計上し、債務超過に陥っていた日用雑貨品販売業者です(モデル企業のセキュリティ保護の観点から、業種等の表現方法を調整しています)。

ご支援のお申し出があった当時、当社は昭和時代に開発したオリジナル製品(耐久消費財)をメインに小売販売していました。発売当初は健康への関心をバネに大ヒットしましたが、ここ数年は、当社製品のみならず類似品についても需要が落ち込んでいる状況で、当社も赤字決算となっていたのです。債務超過は主に経営者の私的財産で補填していました。

経営者の目論見は、新たなオリジナル製品(消費財)を開発して主力製品に据えるというものでした。新製品の市場は旧製品に係る市場よりも大きく成長性も高いので、当社の業績も飛躍的に回復すると見込まれました。但し、そのためには、量産化資金や運転資金の借入れが必要だったのです。


事業計画書の構成

このような状況で事業性評価を依頼する事業計画書は、金融機関が関心を持つ、いくつかのポイントに応えるものである必要があります。

・新製品は、顧客から受け入れられるものなのか?
・新製品を、実現することはできるのか?
・新製品を、効果的に販売することはできるのか?
・新製品の量産・販売までの効果的な体制が築けるのか?
・リスクを見極め、対応しているか?
・以上をトータルでみた時、十分な収益があがるのか?
・借入金を返済できるのか?

これらに応えるため、事業計画書は以下の構成としました。

第1章 経営理念・経営戦略
第2章 企業・事業概要
    代表者略歴等
第3章 前期までの取り組み
    財務的総括
    旧製品の特徴と販売の概要
第4章 当社分析
    SWOT分析
第5章 今期の重点取り組み
    戦略の方向性(新製品開発・投入)
    新製品開発戦略(ポジショニング等)
    新製品販売戦略(販路開拓等)
    売上計画
    投資計画・資金調達計画
    収益計画
第6章 期待する成果と今後のビジョン


商品性について

新製品は100人いれば30人前後の人々が毎日使っているという、普及した消費財です。但し、金融機関の職員には、当該製品を使っている人はあまりいないと推察されました。一方で、大規模から中小零細企業に至る無数の企業が、さまざな競合品を市場に投入しています。
このような状況下、当該製品市場の規模や成長性をビジュアルに示すとともに、製品がもつユニークな魅力をポジショニングなどの手法を用いてアピールしました。


実現性について

魅力的な製品を開発し、量産し続けられることを金融機関に納得してもらわなければなりません。しかし、零細企業は単独ではその能力を身に付けることはできません。信頼できるパートナーが必要です。すでに信頼できるパートナーを見つけ、良好な関係を築き、そのパートナーシップのもとで開発・量産が進められることを説明しました。


販売戦略について

大規模な市場に無名の新人が新製品を投入するとは、一方では無限の将来性をつかむ可能性があるということですが、他方では砂浜に砂を投げるような事態に陥る可能性があるということです。後者にならない仕掛けを考え、それを販売戦略として打ち出さなければなりません。販路拡大については、もっとも重点を置いて説明しました。

この部分は、金融機関に対する説明という側面に加え、企業が実践するという側面も重視し、丹念にアクション・プランを作成しました。資金調達できたら、いや資金調達できる前から、明日から実行できる事項を盛り込み、行動内容を明記したのです。「融資が目的ではない。事業を成功させ、利益の出せる企業への変化を遂げることを目的としている」事業計画書とするよう工夫しました。一方で、それがまた、金融機関の信頼を勝ち得ることにつながるのです。


数値分析

以前にもご説明しましたが、金融機関の公用語は「財務数値」です。金融庁は「債務者格付け」を廃止する姿勢を打ち出していますが、金融機関としては、すぐにそれに変わる融資判断基準を開発して実践できるわけではありません。また、財務数値が企業の現在を客観的に示すツールであることは間違いありませんから、財務数値を基にした説明を欠かすわけにはいきませんし、手を抜くわけにはいきません。

事業計画書では、現在の財務数値に加えて、将来に向かっての見込みに数値を提示することになります。見込みに無理がないことを金融機関に納得してもらうこと、すなわち自分自身にとっても実現性が高く、実現に向かって努力する価値があると納得できることが、ポイントです。現状の取組みで予想される数字が芳しくなければ、数字を水増しするのではなく、新たな効果を生む方策を考えてアクションプランに加えた上で盛り込みます。そうやって、実効性と納得性の高い事業計画にすることができます。



「金融機関に事業性評価融資を依頼する事業計画書」に、正解はありません。以上にご説明したように、その通り実行すれば成果があがる計画書を作ること、すなわち企業自身にとって最も価値のある計画書を作ることが、金融機関の納得を引き出すのです。是非、トライしてみてください。

コラム「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。

企業・団体概要

名称 StrateCutions (ストラテキューションズ)
住所 〒160-0023
東京都 新宿区西新宿7-4-7 イマス浜田ビル 5階
設立 2015年10月1日
URL

http://stratecutions.jp/

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