企業と地方の「人がいない」を解決する~地方創生テレワーク&BPOという選択肢~

第60回

働くことを諦めなくていい社会──aubeBizが描きたい100年後の景色

株式会社aubeBiz  酒井晶子

 

連載第60回という節目に、これまでの歩みを少し振り返ってみたいと思います。

私がaubeBizを始めたとき、最初に描いていたのは壮大なビジョンではありませんでした。
「働きたいのに、働けない」という現実を、少しでも変えられたら──それだけだったように思います。

娘の持病で保育園からの呼び出しが続いた日々、会社に頭を下げながら「このままでは続けられない」と感じたこと。
その経験が出発点でした。
あれから10年以上が経ち、この連載も通算60回目の節目を迎えました。
第45回からの「人の働き方と共創」を巡る章も、今回がひとつの締めくくりとなります。

AIやテレワーク、人的資本、ウェルビーイング、地域との共創──一見バラバラなテーマを描き続けてきましたが、すべては一つの問いに向かっていました。
「誰もが、自分らしく、働き続けられる社会はつくれるか」という問いです。

「諦めなくていい」という言葉に込めた意味

「働きたいけれど、今は難しい」
そうやって働くことを諦めた人の存在は、社会の統計データにはなかなか表れてきません。
育児や介護、ご自身の病気、あるいは地方に住んでいるという理由などでキャリアの選択肢を狭めざるを得ない方々は多数存在します。
けれど、「働けるなら働きたかった」「働く意思はある」でも「諦めた」という事実は、声をあげなければ表面化しないのです。
たんに働く意思のない「非労働力人口」として、静かに社会の数字の中に消えていきます。

様々な事情や環境において、一人ひとりにかけがえのない人生の物語があるはずです。
もし諦めなくていい選択肢があったなら、途切れることなく続いていた物語もあったかもしれません。
私たちが存在する理由は、事業を通じてその「続く可能性」を設計することにあるのだと思っています。

第51回で「更年期・介護・病気を隠さなくていい組織」を取り上げ、「辞めなくていい」「戻ってきていい」という選択肢についてお話ししました。
制度というハードを整えるだけでなく、その背景にある一人ひとりの葛藤を受け止める土台をつくる。
根っこにある想いはすべてつながっていると信じています。

連載を振り返って──一つの問いに向かっていた15のテーマ

第45回からの各テーマの中では、常に現場の実践について触れてきました。
テクノロジーが拓く可能性から始まり(45〜47回)、人が安心して力を発揮できる場の空気や関係性をどう育むかを問い、シニア活用やヘルスケアといったテーマにも触れてきました(48〜52回)。
さらに後半では、地域という枠組みや越境学習を通して新しいキャリアの形を描いてきました(53〜59回)。
扱ってきたテーマは多岐にわたりますが、根っこにあったのは常に一つです。
経営の仕組みやテクノロジーの力を使って、「働くことを通じて、人が自分らしくいられるか」ということです。

子どもたちの笑顔が、ビジョンの核にある理由

aubeBizには「誰もが自分らしく豊かになれる、子どもたちの笑顔あふれる社会の実現」というビジョンがあります。
経営者の方から「育児や教育事業ではないのに、なぜ、企業の事業で子どもたちの笑顔なのですか」と聞かれることがあります。
答えはとてもシンプルです。
親が不安や孤独を抱え込まず、自分らしく働けている背中は、そのまま家庭の安心感につながるからです。
「おかえり」と穏やかな笑顔で子どもを迎えられる大人が増えること。
それこそが、子どもたちの安心と笑顔の原点だと感じています。
前回(第59回)描いた「ありがとう」という感謝の循環も、働く大人の背中を通じて次の世代へと受け継がれていくものだと確信しています。

これからの「手段」とは

「働く人と働く場所の話」の章を終え、次回から企業の経営そのものが抱える実務的な課題に触れていきたいと思います。
AIの活用、業務プロセスの改善、外部人材や地方人材の活かし方──。
これらはすべて、目的そのものではありません。
誰もが働くことを諦めなくていい社会をつくるための、大切な経営の「手段」だと考えています。

「ここで働き続けたい」と誰もが思える組織を、どうやって形にしていくのか。
自分自身がそう思える環境を、どうつくっていくのか。
次回からは、その具体的な実践についてお伝えしていきたいと思っています。


次回はAIを「使える人がいる会社」と「組織で活かせている会社」──その差はどこで生まれるのか
次章【AI活用・業務改善・BPO編】の始まりとして、「AI活用が個人の技術から組織の力へ変わるとき、一体何が起きているのか」というテーマでお届けします。


 

プロフィール

株式会社aubeBiz(オーブ・ビズ)
代表取締役 酒井晶子(さかい あきこ)

兵庫県出身。繊維メーカー、外資系企業、広告代理店勤務を経て、これまで3000名以上の研修企画、採用・人材育成に携わる。

2011年に全員がフルリモートで働く組織構築に携わり、様々な事情で外勤が難しい人が在宅で起業家をサポートする「在宅秘書サービス」を展開。

2022年 株式会社aubeBiz設立。サービス名称をMy Back Office®に改め、秘書業務に限らず、あらゆるバックオフィス業務や各種サポートをワンストップで提供。

著書に、電子書籍「女性を活かす組織作りの教科書」「リモートワークで人も組織も伸びる」「0から始める地方創生テレワーク」等。

【著書】

地域循環が生まれ、関係人口が育まれる ローカル・テレワーク®︎

「働きたいのに、働けない」という原体験から生まれた本書は、移住・観光に依存しない新しい地域との関わり方を提唱。テレワークを活用して人と仕事をつなぎ直す「ローカル・テレワーク」を、15年以上の実践と下関市でのモデル構築をもとに体系化。自治体・企業・地域リーダーに向けた、再現性ある地域づくりの実務書です。Amazonランキング10部門で1位を獲得。


Webサイト:株式会社aubeBiz

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