企業と地方の「人がいない」を解決する~地方創生テレワーク&BPOという選択肢~
第59回
10万人の仕事創出は、10万通りの「ありがとう」を創ること
株式会社aubeBiz 酒井晶子
「10万人の雇用創出」
私たちaubeBizが掲げてきたこの言葉を初めて耳にした方は、壮大すぎると感じられるかもしれません。
でもこれは、私たちが事業活動を行う上での社会との約束です。
そして、このように明言する根拠が、10年以上の実践の中にあります。
フルタイムの正社員雇用だけを前提にすれば、10万人という数字は途方もなく遠いものに映ります。
しかし、隙間時間を活用する業務委託や副業・兼業人材、ワークシェアリングといった形を組み合わせていけば、これまで「働きたくても働けなかった人」が「力を発揮できる人」へと変わっていきます。
その一つひとつの積み重ねの先に、10万という数字が現実味を帯びてくると考えています。
そして私たちが何より大切にしているのは、ただ仕事の数を増やすことではありません。
働き手と企業の両方に「ありがとう」が生まれる仕事をつくることです。
子どもにおかえりと言えるお母さん、地域にいながらスキルを活かすプロフェッショナル、一度諦めた仕事に再び向き合えた人。
その一人ひとりの胸に残る小さな手応えが重なって初めて、この数字は意味を持つのだと感じています。
10万人を可能にする「働き方の設計」
経営者や人事の皆さまと対話する中で、いま最も強く実感するのが「採用と定着の限界」です。
フルタイムの正社員を一人採用し、育て、定着させるまでに払うコストと労力は増すばかりです。
募集にかかる費用、教育にかかる時間、そして離職した際のやり直し——この負担の重さを、経営者として実感してきた方は少なくないはずです。
一方で、視点を少し変えてみるとまったく違う景色が見えてきます。
たとえば「週40時間働く一人」を探すのではなく、「1日3時間の隙間時間を持つ優秀な三人」で業務を分け合うワークシェアリングの構造です。
さらに業務委託や副業・兼業人材を柔軟に組み込むことは、固定費だった人件費を適切な変動費へと変え、採用の母数を一気に広げる選択肢になります。
第48回でもお話しした「人がいない」のではなく「届く仕組みがなかっただけ」という視点は、ここにもつながっています。
社会に人がいないわけではありません。
仕事の切り出しと設計次第で、これまで働く選択肢を持てなかった人たちが、企業の確かな戦力へと変わっていきます。
10万人という数字の根拠は、まさにこの「設計」の中にあると実感しています。
働き手に届く「ありがとう」
仕組みが整い、仕事が一人の手に届いたとき、その人の人生にはどんな変化が起きるのでしょうか。
私たちが現場で出会ってきた、いくつかの物語があります。
障害や難病を抱えるお子さんのそばを離れられず、外に出て働くことを諦めていたお母さんがいました。
高い意欲とスキルを持ちながら「働けない」という枠に置かれていた彼女ですが、テレワークという選択肢と出会ったことで、子どもの傍らで再び社会とつながる道を開くことができました。
また、ワーキングホリデーでオーストラリアに滞在していたある女性は、現地でaubeBizの仕事と出会いました。
日本に帰国してもそのまま仕事を続けられると知ったとき、「日本に戻っても自分らしく働ける」という確信が芽生え、帰国への不安が消えていったと話してくれました。
さらに、豊かな暮らしを求めて地方へ移住し、いずれ訪れる親の介護や、年齢を重ねて車が運転できなくなったときの移動の壁を見据えながらテレワークを始めた方もいます。
「働き方はひとつじゃない。自分の人生の変化に合わせて選んでいい」——そんな手応えを得られたことが、日々の大きな安心感につながっているそうです。
仕事が届くことで生まれるのは、単なる収入だけではありません。
「社会とつながっている」という手応え、「私にも役に立てる」という自信。
それらが人の生き方を少しずつ、温かく変えていきます。
企業側に届く「ありがとう」
そして、この「ありがとう」は働き手側だけに生まれるものではありません。
事業を支える企業側にも、まったく同じように届きます。
素晴らしい商品やサービス、コンテンツを持っているにもかかわらず、人が採れない、すぐに辞めてしまう、人手不足で事業を止めざるを得ない——。
そんな苦悩を抱える経営者の方が、アウトソーシング(BPO)という選択肢を得たとき、止まりかけていた事業が再び動き出します。
aubeBizのサービスを通じて、初めて外部に「任せる」ことを経験された経営者の方が、肩の力が抜けたように話してくださる場面を、私たちは何度も目にしてきました。
「本当に助かった」「自社だけではできなかったことが実現した」という声。
それこそが、企業側に生まれる「ありがとう」の姿です。
両側の「ありがとう」が出会う場所
働き手の「ありがとう」と、企業の「ありがとう」。
この二つが出会う接点こそが、私たちが取り組むBPOサービスであり、ONE withコミュニティであり、ローカル・テレワークの仕組みです。
aubeBizのミッションは「自分らしいビジネスと働き方を応援する」こと。
そしてビジョンは「誰もが自分らしく豊かになれる、子どもたちの笑顔あふれる社会の実現」です。
ここに掲げる「10万人の雇用創出」とは、単なる数値目標ではありません。
このミッションとビジョンを未来へつなぐために、私たちが果たすべき役割(パーパス)そのものなのだと感じています。
あなたの会社にある、未来への「余白」
「10万人の仕事創出」という言葉を、経営者や人事担当者である読者の方の文脈に、少しだけ引き寄せてみたいと思います。
あなたの会社が一人の人に仕事を届けることは、その人にとっての新しい「ありがとう」を生みます。
そして、すべてを自社で抱え込む代わりに信頼して外に任せる選択をするとき、あなた自身もまた「ありがとう」を受け取る側になれるのではないでしょうか。
この双方向の感謝の連鎖こそが、これからの経営と社会を変えていく土台になると信じています。
あなたの会社に今、誰かに手渡せる仕事や、チームの未来を広げる「余白」があるか、ぜひ一度見直してみてはいかがでしょうか。
次回は働くことを諦めなくていい社会──aubeBizが描き続ける100年後の景色
10万通りの「ありがとう」が積み重なる先に、どんな社会が待っているのか。aubeBizが創業以来描き続けてきたビジョンの原点と、これからの100年に向けた想いをお伝えします。
プロフィール

株式会社aubeBiz(オーブ・ビズ)
代表取締役 酒井晶子(さかい あきこ)
兵庫県出身。繊維メーカー、外資系企業、広告代理店勤務を経て、これまで3000名以上の研修企画、採用・人材育成に携わる。
2011年に全員がフルリモートで働く組織構築に携わり、様々な事情で外勤が難しい人が在宅で起業家をサポートする「在宅秘書サービス」を展開。
2022年 株式会社aubeBiz設立。サービス名称をMy Back Office®に改め、秘書業務に限らず、あらゆるバックオフィス業務や各種サポートをワンストップで提供。
著書に、電子書籍「女性を活かす組織作りの教科書」「リモートワークで人も組織も伸びる」「0から始める地方創生テレワーク」等。
【著書】
『地域循環が生まれ、関係人口が育まれる ローカル・テレワーク®︎』
「働きたいのに、働けない」という原体験から生まれた本書は、移住・観光に依存しない新しい地域との関わり方を提唱。テレワークを活用して人と仕事をつなぎ直す「ローカル・テレワーク」を、15年以上の実践と下関市でのモデル構築をもとに体系化。自治体・企業・地域リーダーに向けた、再現性ある地域づくりの実務書です。Amazonランキング10部門で1位を獲得。
Webサイト:株式会社aubeBiz
企業と地方の「人がいない」を解決する~地方創生テレワーク&BPOという選択肢~
- 第59回 10万人の仕事創出は、10万通りの「ありがとう」を創ること
- 第58回 ローカル・ハブの最前線──「ローカル・テレワーク」が生み出す、地域の結節点
- 第57回 地方発・世界へ──デジタルを使えば、マーケットに「境界線」はない
- 第56回 シニアの知恵をテレワークで活用する ──プロ人材の活用と生涯現役を支えるインフラ
- 第55回 ワーケーションを福利厚生で終わらせない──合宿型ワークが生むイノベーション
- 第54回 観光以上、移住未満の「関係人口」が運ぶ、経営のヒント
- 第53回 「複業」が地域企業を強くする──外部人材をチームに招き入れる極意
- 第52回 孤独を防ぐデジタル・オアシス──リモート環境での「帰属意識」の作り方
- 第51回 「更年期・介護・病気」を隠さなくていい組織──ライフイベントを味方につける
- 第50回 AI活用とリスキリングでシニア人材が活躍できる組織へ──働き続けられる環境をつくる
- 第49回 ウェルビーイングを数字にする──「かも」が生産性を高めるエビデンス
- 第48回 人的資本経営の第一歩は「働く場所の解放」から始まる ──テレワークを福利厚生で終わらせない
- 第47回 経営者の右腕としてのAIとリモートチーム──「任せられる体制」は設計から始まる
- 第46回 AIに代替されない「安心提供力」の磨き方──オンライン時代の人間力
- 第45回 思考の余白をどう使うか ── AIによって生まれた時間を「関係性」に投資する
- 第44回 AI時代のマネジメント ──「管理」を捨て、「信頼」を設計する
- 第43回 マニュアル化はAI活用の鍵──仕組み化がAI活用の最短ルートである理由
- 第42回 「AI×テレワーク」で変わる、これからのBPO──スピードと「想い」の両立
- 第41回 生成AIは「作業」を奪い、「創造」を解き放つ──AI時代の共創パートナーシップ
- 第40回 未来を変える働き方──テレワークが導く「次の社会像」 ~自分らしく豊かに生きるための、新しい「組織」と「個人」のあり方~
- 第39回 持続可能な地域経済圏──テレワークでつくる共創エコシステム ~「外注」から「共創」へ。地域を動かす新しい経済の循環~
- 第38回 企業×地域×学校──共創型キャリア教育モデル ~地元の若者たちに「世界と繋がる選択肢」を届ける~
- 第37回 二拠点生活(デュアルライフ)とテレワーク──移住・関係人口の新しい形
- 第36回 BCPとBPO──災害に強い企業の新常識
- 第35回 働き方とウェルビーイング──幸せが生産性を高める理由
- 第34回 人材流動化の時代に「選ばれている会社」は何をしているのか? 〜給与でも制度でもない、“最後に見られているもの”〜
- 第33回 地域リーダーが拓く未来──ローカル・テレワーク・パートナーの力 〜企業と地域をつなぐ「新しいハブ人材」という選択肢〜
- 第32回 生成AIとBPOの未来──AI時代の“人と組織”の役割とは? 〜AIが当たり前になる時代に、企業やビジネスパーソンは何を強みにするのか〜
- 第31回 “全国採用”の時代──人材不足を突破する採用戦略 〜「求職者が来ない」から「選ばれる会社」へ、発想を切り替える〜
- 第30回 中小企業のDXとテレワーク──小さな一歩からの業務改革 〜属人化をほどき、手の届く範囲から未来志向の仕組みづくりへ〜
- 第29回 観光とワーケーション──“訪れる人”を“関わり続ける人”へ 〜テレワークだからできる、新しい関係人口づくり〜
- 第28回 BPOアワードから見えた未来──“外注”ではなく“共創”が、人材不足を超えていく~受賞社の取り組みが示す、これからのBPO活用の正解~
- 第27回 ダイバーシティとテレワーク──多様性が生むイノベーション 〜“働きづらさ”を“戦力化”へ変える、新時代の仕事づくり〜
- 第26回 自治体の挑戦──テレワーク推進政策の最前線 〜「施策」を現場で回す“仕組み”の作り方〜
- 第25回 教育とテレワーク──地域で育てる次世代キャリア 〜「地元で働きたい」を仕組みにする、教育×テレワーク〜
- 第24回 農業×テレワーク──デジタルで広がる“第六次産業化”の可能性 〜“つくる”と“伝える”をつなぐ、新しい地域のかたち〜
- 第23回 地方と企業をつなぐ“BPOモデル”の進化 ──自走型チームが地域経済を動かす 〜“任せる”から“共に創る”へ。地域BPOが生み出す新しい共創のかたち〜
- 第22回 「地方創生テレワーク」の進化形──自治体×企業×住民で生み出す『ローカル・テレワーク』 〜地域の人・企業・文化が輝く、循環型の“しごと生成エコシステム”〜
- 第21回 自治体・企業・住民でつくる 地方創生テレワーク推進モデル 〜“点”で終わらせない、持続可能な三者連携とは?〜
- 第20回 「“よくわからない”を乗り越える──テレワーク導入Q&A」 〜不安を解消し、最初の一歩を踏み出すために〜
- 第19回 「“社会貢献企業”としてのテレワーク導入」 〜採用力とブランド力を高める組織戦略〜
- 第18回 「“自走できる人材”を育てるマインドと環境づくり」 〜指示待ち型から“目的を理解し、動ける人材”へ〜
- 第17回 「“信頼される会社”の条件──テレワーク時代の組織文化とリーダーシップ」 〜制度や仕組みを超えて“信頼”を築く組織の土台とは〜
- 第16回 生成AIとテレワーク ──中小企業が直面する“AI格差”を乗り越えるには?
- 第15回 「地域×テレワーク」──地方創生ローカル・テレワーク 〜地域企業と地域人材のハブとなる地域リーダーの創出〜
- 第14回 「“個の力”を最大化するチームづくり──テレワークでも成長・定着する組織のつくり方」 〜孤独・疎外感を防ぐコミュニティ型組織づくりの工夫〜
- 第13回 「“副業・複業人材”を活かす!兼業社会における新しい雇用戦略」 ── 多様なキャリアが交わる“パラレルワーカー”活用の可能性
- 第12回 「“スキマ時間”を活かす働き方──ワークシェアリングという選択肢」
- 第11回 「成功するテレワーク採用」 〜離れていても成果を出す組織づくりのヒント〜
- 第10回 「“全国から採用する時代”へ!採用戦略の発想を切り替えるヒント」 〜テレワークが生み出す“新しい雇用のかたち”〜
- 第9回 「BPOとBCP」―― 有事の際の事業継続に備える新常識
- 第8回 ーDX化の第一歩となる業務改革ー「属人化を防ぐ仕事の仕組み化」
- 第7回 完全テレワークでも離職率5%未満を実現するチームづくりの秘訣 〜組織の土台を支える“仕組み”と“信頼文化”のつくり方〜
- 第6回 成長戦略としてのBPO活用法 〜“外注”にとどまらない、企業の柔軟性と競争力を高める選択肢〜
- 第5回 「テレワークは難しい?」──よくある誤解と“うまくいかない理由”を解きほぐす
- 第4回 地域で働く、地域を支える──「ローカル・テレワーク」という新しい仕組み
- 第3回 地方に眠るチカラを活かす!「地方創生テレワーク」の可能性
- 第2回 眠れる働くチカラ 「働きたいけれど働けない」潜在労働力を社会へ
- 第1回 これからの時代に選ばれる働き方とは? ― 少子高齢化・人材不足を乗り越える組織づくりのヒント

