■一人の時間持ち自分を客観視
大学3年で日本代表に選出されて以来、日本を代表するラガーとしてラグビー界を牽引(けんいん)し、一昨年、惜しまれながら現役を退いた大畑大介さん。しかしその輝かしい経歴の裏には常に、挫折とケガとの戦いがあったという。成長痛により実力を出し切れなかった中学時代、結果を出してもなかなか認められなかった高校時代。立て続けに断裂した両足のアキレス腱(けん)や、相次ぐ肩や腰の骨折など。無数の逆境を厳しい自己管理で乗り越えてきた。
--自己管理とは
「『自分を客観視できる力』だと思います。今自分がどんな状況に置かれていて、何を感じていて、どうなりたいのか。自己管理のためにはまず、自分のことがしっかりと見えなければ、と思います」
--客観視のコツは
「一人の時間を持つこと。場所はどこでもいいし、かしこまってまとまった時間を取る必要もない。誰でも生活の中に見つけられる、ちょっとした時間で構いません。現役時代は練習後に車の中で一人の時間を持っていました。風呂の中も良い。子供を風呂に入れて寝かしつけた後、もう一度風呂に入ることもあります。そしてそこで、今日一日の行動や、自分が今どんなことを考えているかを見つめてみる。こうした時間にほっと安らいでリラックスすることも大切です。考え事をするときは、まとめられた文章や映像などではなく、自分の感覚やイメージを重要視しています」
--感覚やイメージとは?
「『自分の内側から出てくる情報』です。今日のダッシュのタイムが何秒かという数値より、地面から足に伝わってくる感覚や筋肉が収縮する反応の具合などを重視してきました。食事も同じです。カロリーや栄養バランスを計算するのではなく食べたいものを食べる。『好きなものだけ食べる』という意味ではありません。今自分の体が求めているものを感じ取って、それに従うんです。おなかが空いたときに、食べたい量だけ食べる。肉だけを食べることもあれば、野菜ばかりのこともある。体の声をちゃんと聞くことができれば、臨機応変に適切な食事ができます。この方法は、現役時代も引退してからも、ずっと変えていません」(次回につづく)
【プロフィル】大畑大介 おおはた・だいすけ 元ラグビー日本代表。追手門学院客員特別教授。京都産業大学、神戸製鋼、日本代表などで主将を務める。国際試合における通算トライ数の世界記録保持者。