プロフェッショナル の自己管理術

第32回

『最適』を追求するスポーツ科学の研究者 森丘保典さん(下)

駒井 研司 2013年4月1日
 

■行き詰まったら切り替えを

 長年にわたってレース分析のデータを提供してきた為末大さんから「タイム職人」と名付けられたという森丘保典さん。前回は自己管理とは常に最適を求めることという考え方や、通説やデータだけにとらわれず、状況に応じて柔軟に最適を求めるべきだという話を聞いた。

--仕事での取り組みは

 「どんどん頭を切り替えるようにしています。仕事は読むことと書くことが中心。原稿執筆の仕事を常に3つ、4つ抱えています。順調なときはどんどん進みますが、時に全く進まなくなる。そんなときは必要以上にねばらず、さっと別の原稿や仕事に切り替えます。進まないことに時間をかけるのは『最適』ではないからです」

--「最適」を考えたのは 

 「日本体育協会の創立者であり、柔道の生みの親としても知られる嘉納治五郎先生の『精力最善活用(精力善用)』という言葉との出会いです。何をするにも、目的にかなうように精神と身体を最も巧みに動かすべしという意味の言葉です。この思想に触れ、自分の力を常に最大限発揮させるために、状況に応じた『最適』を選択することを意識するようになりました。ねばり強く取り組むことも大切ですが、行き詰まって止まっているなら切り替えるべきだ、というわけです」

--研究上の取り組みは 

 「『トレーニングの量と質の最適化』という問題意識をもっています。レースで『一番速かった選手』は『最後まで最も楽に走った選手』ともいえます。日本のスポーツ界には『やればやっただけ良い』という考え方が根強く、量を追い求める傾向があります。『10本のダッシュをする』と決めたら、何がなんでも10本走ろうとする。でも本来は、調子に合わせてスピードや本数を効果的に組み合わせることで、楽に速く走るためのトレーニングの質が保たれるよう最適化されるべきです。では最適はどう選択したら良いか。その方向性が、これまでの研究によっておぼろげながらみえてきています。今後この仮説を理論化し、選手へのアドバイスに生かしたい。そして個人的には、仕事や体調管理、子育てなどにも、意識した実践を積み重ねながら、理論の精度を上げていきたいです」

【プロフィル】森丘保典 もりおか・やすのり 日本体育協会スポーツ科学研究室 室長代理。日本陸上競技連盟強化委員会および科学委員会スタッフ。これまで為末大さんをはじめ、多くの陸上選手を支援している。ブログ「ひとり学際日記。」

2013年4月1日「フジサンケイビジネスアイ」掲載
 
 

プロフィール

株式会社ネオレックス
CEO 駒井研司

こまい・けんじ PwCコンサルティング(現IBM)を経てネオレックス副社長。世界79カ国で利用されている自己管理のための無料iPhoneアプリ「MyStats」を発案。

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