■良さそうと思ったこと、何でも挑戦
人工知能の研究で博士号を取得し、その後、遺伝子解析に取り組むようになった城戸隆さん。NTT情報通信研究所や遺伝子解析のベンチャー企業、スタンフォード大学などで研究を続けてきた。著作「ゲノムが解き明かす自分さがし-ぼくはどんなふうに生きるのだろうか」でも知られる。
--自己管理とは
「あまり好きではないですね。“管理”という言葉のせいか、自分に何か問題があって、それを修正しているようなイメージがあります。ただ、人生をより良くするための取り組みととらえれば『自分のことを知ること』が自己管理だと思います。無意識には何があるのか。内側から自然と出てくるものは何か。それらを知った上で、自分が本当に望んでいる人生を生きたい。『自分の心にウソをついて成功を収めるより、正直に生きて失敗した方がよい』。中学生のときに書いた作文のことを最近ふと思いだしました。ずっと変わらない思いです」
--例えばどんな取り組みを
「いろいろです。良さそうと思ったことは何でもやってみる。ここ数カ月は『モーニングノート』を試しています。枕元にノートを置き、目が覚めたら寝起きのもうろうとした状態で、見ていた夢やそのとき感じることを書き出す。ぱっと浮かんだ言葉をそのままメモしていく感じです。そこには、普段とは全く違う思考がある。そこから、今自分は無意識に何を考え、どこに進もうとしているのかが見えてくるのではと思っています。また、この取り組みから毎朝一つ、自分に対する質問をつくり、翌日までに答えを考えることにしています」
--朝を大切にしている
「座禅を組んで瞑想(めいそう)したり、日記を書いたり。親しい人に感謝の手紙を書くことも習慣にしています。多くは朝行うので、起床は4時半。実はとても効率重視の性格で、省力化や時間短縮、優先順位付けなどをいつも強く意識してしまいます。だから朝はその裏返しのように、じっくりと内なるものの探求に取り組んでいます。振り返ってみれば、人工知能の研究も遺伝子も、自分のことをもっと知りたいという思いから自然にたどり着いていました」(次回につづく)
【プロフィル】城戸隆 きど・たかし 工学博士。人工知能を用いた遺伝子研究が専門。慶応大学、NTT、米スタンフォード大学などを経て、現在、理研ジェネシスで研究を続けている。