プロフェッショナル の自己管理術

第31回

『最適』を追求するスポーツ科学の研究者 森丘保典さん(上)

駒井 研司 2013年3月25日
 

■データは必ず正しいわけではない

 トレーニング科学の専門家として研究を続けてきた森丘保典さん。日本陸上競技連盟の科学スタッフとして400メートルハードルを担当し、データ分析に基づく助言を通して多くの選手をサポートしてきた。東京・渋谷の日本体育協会で話を聞いた。

--自己管理とは

 「かしこまった取り組みは特にしていません。ただとにかく、目の前のことをひたすら最適化するようには心がけています。研究では選手たちのレースを分析し、ハードル間のタイムや歩数などをデータ化します。そして本人の過去のデータや世界トップ選手のデータなどと比較し、レースの改善や目標達成に向けた助言を行ったりしています。でも自分に関しては、体調や仕事の進捗(しんちょく)などを意識はしてはいますが、データ化による管理は特にしていません」

--具体的な取り組みは

 「例えば、昼ご飯を食べない。7年ほど前から始めていますが、医学系の学会で精進料理の話を聞いたときに『これはいける』と確信しました。修行中の僧侶たちは、栄養学的にはあり得ないような最小限の食事で過ごしていると。考えてみれば基本的にデスクワークの私に、昼にそれほどの栄養補給が必要とは思えませんし、昼食後の仕事の能率が上がらないという問題意識もありました。そこで、昼ご飯をやめてみると、あっという間に5キログラムくらいやせて少し気になっていたウエスト回りも締まりました。毎晩お酒を飲みますし夕食もしっかり食べますが、以来体形は維持されたままで体調もとても良いです」

--3食採るべきと聞くが

 「確かに、成長期の子供や活動量の多い人にとっては必要なことだと思います。でも今の自分にとっては、1日2食が最適のようです。科学とは正解ではなく最適解を追求する営みですから、これまでいわれてきたことが全て正しいとうのみにするわけにはいきません。摂取カロリーも口に入れた量から計算されますが、実際には、そのうちどれだけ体に吸収されたかが問題であり、そこには個人差もあるはずです。通説やデータは参考にはなりますが、必ず正しいわけではありません。体調管理に関して言えば、自分の体の声に耳を傾けながら、状況に応じて柔軟に最適を求めることが大切だと考えています」(次回につづく)

【プロフィル】森丘保典 もりおか・やすのり 日本体育協会スポーツ科学研究室 室長代理。日本陸上競技連盟強化委員会および科学委員会スタッフ。これまで為末大さんをはじめ、多くの陸上選手を支援している。

2013年3月25日「フジサンケイビジネスアイ」掲載
 
 

プロフィール

株式会社ネオレックス
CEO 駒井研司

こまい・けんじ PwCコンサルティング(現IBM)を経てネオレックス副社長。世界79カ国で利用されている自己管理のための無料iPhoneアプリ「MyStats」を発案。

このコラムをもっと読む プロフェッショナル の自己管理術

同じカテゴリのコラム

キーワードからコラムを検索する