Catch the Future<未掴>!

第103回

潜在的諦めを発見して問題創造する

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤伸夫

 



「非人間脳力活用」がとてつもないスピードで進展する時代、未掴を掴める人になるには問題解決の枠を外れて「問題創造」がカギとなると考えられます。その実践アプローチの一つとして「潜在的諦め」の発見が考えられ、今回はこのことについて考えます。



問題解決の活用

今まで創造の主な原動力は「問題解決」でした。理想像があり、それが実現できないことを「問題」と捉え、その「解決」を目指すのです。多くの場合、現状と連続的な理想(例:「橋脚間距離は100mが限度だが、120mの橋を架けたい」)や、他から学んだ理想(例:モータースポーツF1のピットクルーのような連携を、手術チームでも実現したい)を掲げ、実現を目指します。

「非人間脳力」も問題解決アプローチの活用で、大きな成果を得られます。「伝票処理を正確に高速に実現したい。それによりコストを削減したい」が挙げられます。処理方法を適切にインプットされた生成AIの利用により短時間で正確な処理が行われるだけでなく、人間だと不可避的に発生する「注意散漫による間違い」や「休憩や休息が必要という」などの不都合な現象を避けることができ、生産性を飛躍的に向上させることができます。



問題創造の実例

一方で、非人間脳力を問題創造アプローチで活用すると、問題解決アプローチでの利用に比べて段違いの、従来の常識を外れた成果を得られる可能性があります。このことは、過去の問題創造実践例を見ることで理解できるでしょう。エジソンによる電球が、その実例です。

実はエジソンは、電球の発明者ではありません。エジソンが電球を開発したのは1879年10月(連続発光時間28時間)とされていますが、電灯の一種といえるアーク灯は1802年に開発されており、1800年代前半から多くの発明家が電球を開発していました。


中でもジョセフ・スワンという物理学者が、紙を炭化させたフィラメントを真空に近い容器に封入する白熱電球を1860年に試作、1878年には約40時間の連続発光を実現させました。

当時はスワンとエジソンの開発競争は熾烈を極め、最終的には両者の名前を付した会社の設立で和睦しましたが今、人々の記憶に主に留まっているのはエジソンです。それはなぜか?エジソンによる問題創造が、結果的に人々の生活ひいては社会を変革したからです。


エジソンは電球を実用に耐えるものにするだけでは飽き足りませんでした。当時の連続発光時間40時間は、今考えると短すぎますが、当時に主流だったガス灯(街路灯なら、人が一つ一つ灯したり消したりしなければならなかった)と比較すれば十分競争力があったでしょう。

電流そのものを断続すれば個々に点火・消灯せずに済む集中管理が可能であることの競争力は計り知れません。しかしエジソンはそれに甘んじることなく1880年には連続発光時間を1200時間以上に伸ばしました。


加えてエジソンは送電システムの構築にも乗り出しています。1882年にはニューヨークに商用電力供給事業を開始しました。発電所を設けて配電網を敷設するだけでなく、課金するための電力量計、管理するための断続器(スイッチ)、必要な場所で電気を活用できるコンセントなども備えた総合的な電力システムです。

「新しい商品、今まで誰も見たことのない製品ができた。性能や耐久性も格段に高い。どうだ、すごいだろう」では留めず、個人の生活のみならず社会活動、産業活動の一翼を担い、中心インフラとなるための仕組みを構築したのです。



まだ見ぬ理想から潜在的諦めを引き出す

エジソンの例は、問題創造の価値を教えてくれます。当時、電球の開発は競争だったことでしょう。時代の先端を目指す、そして圧倒的な技術力とノウハウを持つエジソンは「私が手掛ければ、他人よりもっと良いものを生み出せる」と考えたに違いありません。しかしエジソンの偉大さは、そこには(そこだけには)ありませんでした。

彼の偉大さは「電球が人々の生活や産業に浸透して大変化をもたらすには、何が必要なのだろう。それを継続・拡大できるようにするためには、利用者側のみならず供給者側に何が必要なのだろう」と問いながら「問題」を次々に生み出せたことだと考えられます。


ではなぜエジソンは問題を量産できたのか?今ある装置・社会インフラ等により実現している現状について「充分だ。これ以上を望む必要はない」と考える潜在的諦めに打ち勝ち、「電灯がガス灯に代わると家庭が、工場が、商店が、街がどう変わるだろうか。それと比較すると今、どんな潜在的諦めに甘んじているのだろうか?」と問う発想ができたからでしょう。

今ある材料、あるいはこれから生み出し得るモノで私たちはどんな利便を得られるようになるかと理想を描き、それとの差を「潜在的諦め」として発見して「問題」を把握する眼力が、未掴を掴む原動力になると考えられます。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。

<印刷版のダウンロードはこちらから>

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なお、冒頭の写真は ChatGPT により作成したものです。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

『日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル』

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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