Catch the Future<未掴>!

第102回

問題創造が第3のカギとなる?

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤伸夫

 



未掴を掴める人はどんな人か?今は「非人間脳力活用」に向けて新しい産業革命が進展しているので、生成AIやIT全般の利用に長けていることが条件になりそうですが、それだけでは難しいと考えられる状況を前回に検討し、「オリジナリティがある」という条件を加えました。今回はさらに、新たな要素を考えていきます。



以前の産業革命で実現した「非連続的発展」

前回、AI・ITの活用に加えてオリジナリティの必要性をしてきました。最近では時折「頑張って、経験して、差別化するのは古臭い。生成AIに命令すればたちどころに答えが出る」というメッセージを目にすることがあります。

確かに現在の仕事を改良するという観点では、それが一番のソリューションなのかもしれません。昨日まで一日(8時間)かけていた仕事が今日は4時間、いや2時間で終わるなら、働く人にとっても雇用者にとっても生産性が飛躍的に向上したことになります。


では、このような姿勢で「新しく訪れる時代(未掴)」を掴むことができるのか?19世紀末以降の産業革命期が参考になると考えられます。当時に「新たな蒸気機関や鉄鋼を使った大規模・精密な機械を利用して、これまでの仕事を改良しよう」と考えた人たちがどうなったか。

産業革命の前は「工場制手工業」の時代、熟練作業者の手作業を簡単な木製の機械を使って効率化した時代です。その木製機械を鋼鉄製に置き換え、動力として人力や水車などから強力な蒸気機関に置き換える改良を行ったのです。生産性を飛躍的に高めることができ、当事者としても社会全体としても、相当に富を増やせたでしょう。

そのような人々は当時、多数いたと思われますが、今はほとんど残っていません。今、残っているのは蒸気機関や機械・設備を手にして「今までできなかった仕事ができるではないか。今まで考えられなかった事業ができるではないか」と考えて、それを実現した人々です。


実際、蒸気機関や鋼鉄製の機械・設備を手にした人々が実現した新たな仕事・ビジネスは目を見張るものでした。

街に電灯が灯って明るくなり、建物は飛躍的に高層化、大規模な橋梁が都市を繋ぐようになりました。街に自動車が溢れただけでなく、大陸を横断する鉄道網が敷かれ、大陸を結びつける大型船舶、あるいは飛行機も就航する「非連続的発展」が実現しました。



生成AI・ITの高度活用に繋がる「問題創造」

前回の産業革命で、蒸気機関や鉄鋼製の機械等を活用しながら、ビジネスが結局は消滅してしまったケースと消滅しなかった、逆にどんどんと発展していったケースの違いは何か?

前者は新しい創造物を「問題解決」に活用したが、後者は「問題創造」に活用したと、言えるのではないかと考えられます。

問題創造とはその名の通り、今までなかった「問題」を思いつき、その答えを模索して実現していくことです。問題解決と対比すると、こちらは「私は理想像を知っている。今、それが実現できていないので、このことを問題と認識して対処する」という姿勢です。


一方で問題創造は「現状で私は問題を感じないが、出現した新しい創造物を高度利用したら、今まで想像できなかった素晴らしい理想が描けるに違いない。それは何だろう?その『新しい理想』が描けていないことが今の問題だ。どうやって解決すれば良いのだろう?」と考える姿勢です。

言葉を換えると「可能性創造」あるいは「理想創造」といえるでしょう。

こうして問題創造した人々がいたので電灯や高層ビル、大橋梁、自動車、鉄道網、大型船舶あるいは飛行機などが生まれたと考えられます。


同様の効果は生成AIにより、あるいはAIがITや機械あるいは人間とも組み合わされることにより「どんな理想が実現可能になるのか?」を問うことで、生まれると考えられます。

それはどんな姿か?今は暗中模索の状況です。生成AIの高度利用として、例えば創薬における実験企画や実施にAIを活用することで、人間の能力に頼っていた時代には想像もできなかった組合せを発想、それを驚異的なスピードで実施できるようになっています。今までの「問題解決」から一歩踏み出した状況と言えるでしょう。

これを進めて「問題創造」の域に達することができたら、前の産業革命期における「ロウソク・ガス灯から電灯への変化」などと比肩できるイノベーションを生むことができると考えられます。


前回の結語にも申したように、この発想を生めるチャンスは事実上、誰にも開かれています。でもチャンスを掴むのは、一握りの人たちだけでしょう。

普段は「問題解決」のため生成AIを活用する中でも「今までとは全く違う理想が実現できるかも」と問題創造する時間を確保する人は限られると考えられるからです。

敢えて問題創造の時間を創造する人が、未掴を掴むと考えられます。




本コラムの印刷版を用意しています


本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>

https://www.innovations-i.com/panf/id/?id=870



【筆者へのご相談等はこちらから】

https://stratecutions.jp/contacts/




なお、冒頭の写真は ChatGPT により作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

『日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル』

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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