第99回
不足から充足に転換する時代の革命
StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ 落藤伸夫

現在が大きな転換期であることは、異論がないと思います。特に生成AIの登場・普及は日常生活や働き方、果ては社会に急激な変化をもたらしており、それが革命と呼んでも良いレベルであるとさえ言えるでしょう。今回は、このことについて掘り下げて考えていきます。
モノ・カネそして知識まで溢れかえる時代
筆者は2010年前後から、「大きな変化」の兆候が社会の様々なところで目に付くようになったと考えています。
第1は「モノ溢れ」です。(以下の指摘では「配分」は考えていません。十分な収入等を得られないため「溢れるモノ・カネ・知識」を手にできず困っている人がいますが、それは踏まえていないという意味です。)
以前は需要を完全に満たせる能力を持つ生産主体は存在しないためモノは不足状態でしたが、今やモノ余り現象が目に付きます。広告や値付け等により察せられるのです。
それまでは商品の価値や効能、コストパフォーマンスを訴える広告が主でしたが、最近は感情に訴える広告が増えてきました。また、以前は材料や加工コスト等に見合った価格が付けられ、同種の商品には似た価格が付けられていましたが、最近では人気度によって「プレミアム価格」を付けるケースが増えています。その裏で一般商品の価格が下がり、一部には需要を見い出すことができず廃棄される商品が目立つようになってきました。
第2は「カネ溢れ」です。ITの進展やネットワークの普及、数学の活用等により金融システム高度化、金融商品が飛躍的に増えたので、人や企業が保有する「購買力を持つ資産」が増殖と言えるほど膨張しました。
モノ溢れの時代になぜ世界的にインフレが起きるのか?その裏にはカネ溢れがあり、こちらが凌駕しているからです。
第3は「知識溢れ」です。以前、知識は希少価値ある財産で、自然科学から応用科学、そして生産方法など付加価値を生む知識には大きな希少価値がありました。
しかし生成AIの台頭・普及で知識の不足は急速に解消されつつあると感じます。AIは事実に基づかない情報を与える(ハルシネーション)可能性があり鵜呑みにするのは危険ですが、今までとは比べ物にならない莫大な情報を与えてくれ、これを検証すると有用な知識が得られるでしょう。発展やイノベーションのために必要な知識が今までより格段に提供される世の中になりつつあります。
不足が充足に変わった時代に起きる「革命」
今まで不足していたものが充足されると何が起きるか?「革命」が起きることが知られています。
英語で革命とは「転回(Revolution)」で、今まで顧みられなかったものに価値があるとされ、求められるようになります。筆者は革命を、価値の中心が転回する現象と捉えています。では現在に進行している革命とは、何でしょうか?
第1は「実現」価値の高まりです。モノ・カネ・知識が溢れるようになった時代に不足するのは何か?一つは「知識でもって新しい、実体のあるモノや無形のサービスを実現する」ことです。
今までは知識が不足していたので「知識があったからこその成果だ」とされ、実現には重きが置かれなかったと感じられます。今後、知識はどんどん提供されるので、それを実現する能力の価値が高まっていくのです。
第2に価値が高まるのは「意味」です。モノ・カネ・知識が溢れる時代に不足するもう一つは「意味」なのです。(異論はあるかと思いますが)これからの世界と比較すると、今までは「意味を問う」必要性が少なかったと考えられます。
モノ・カネ・知識が不足していたので「それらの提供には意味がある」と自明のように考えることが可能でしたが、これらが溢れる時代には「どんな意味があるのか」の問いがシビアになるのです。
第3は「目的」に価値が高まると考えられます。意味は、実は単独では存在しえません。何か軸になるものがあって、それにかなって(適って・叶って・敵って)いるから意味があるとされるのです。
モノ・カネ・知識が溢れる時代には、それらの獲得以外の目的が必要になります。それは何か?「人々の幸福に決まっているではないか。」言葉にするのは簡単ですが、それを目的として追い求めると人々や国家あるいは会社などの間で対立が起きるのは目に見えています。共通に目指せる目的の発見が、より強く求められるようになるでしょう。
実現、意味、目的の共通点は「人間にしか決められない、人間にしか議論して反目しながらも合意点を見付けることができない」ことです。実は今、一部の人々はこの点に着目して検討を始め、既成事実化にまで進んでいると考えられます。
この検討を一部の人々に独占させず、より多くの人々が参加し、弁証法的結論(正・反→合)に至ることが求められていると感じます。
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【筆者へのご相談等はこちらから】
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なお、冒頭の写真は ChatGPT により作成したものです。
プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)
中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA
日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。
独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。
現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。
【落藤伸夫 著書】

『日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル』
さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。
Webサイト:StrateCutions
- 第99回 不足から充足に転換する時代の革命
- 第98回 中小企業5.0での「ノード」ポジション
- 第97回 中小企業に「巨大な未掴」が訪れる?
- 第96回 非人間脳力活用時代の構想力
- 第95回 未掴は「構想して掴む」時代になる
- 第94回 生成AIを活用して学問を進化させる
- 第93回 生成AIで学びを発展させる
- 第92回 生成AI得意分野でも人間力を発揮する
- 第91回 常識はあるが良識はないAIを使いこなす
- 第90回 知識増殖者・意味創造者が果たす役割
- 第89回 新産業革命期に生まれる「意味創造者」
- 第88回 新たな産業革命期を乗り越えるには
- 第87回 「新たな産業革命期」を迎える
- 第86回 自ら前提を変えて道を切り拓く
- 第85回 前提が転覆する可能性に備える
- 第84回 前提が覆る時代に生き残る方法
- 第83回 成長エンジンに乗る3要素を固める
- 第82回 成長エンジンに乗る決意を固める
- 第81回 価格理論破壊時代に油断する危険
- 第80回 通用しなくなりつつある経済原則:価格
- 第79回 未掴入口の捉え方
- 第78回 壁とするか、未掴への入り口とするか
- 第77回 生成AIを活用しながら人間力を発揮する
- 第76回 生成AIがもたらす革命的変化に対応する
- 第75回 100億宣言を実のあるものにする
- 第74回 100億宣言企業が募集されています
- 第73回 あいまいさを創造性に繋げる方法
- 第72回 あいまいさに耐えられない危険性
- 第71回 イノベーションの量産でジレンマ回避
- 第70回 イノベーションのジレンマは不可避か
- 第69回 激動の時代に「どのように」始めるか
- 第68回 激動時代に起業家の発想を取り入れる
- 第67回 トランプ関税を乗り越える産業・政策
- 第66回 トランプ関税を考えて今後を見通す
- 第65回 企業が描きたい大戦略
- 第64回 大戦略を描いていくことの大切さ
- 第63回 技術か経営かではなく、技術も経営も
- 第62回 ニッサン・ホンダの破談をどう捉えるか
- 第61回 社会システム変化の軸となる主体性
- 第60回 社会システム視座の必要性
- 第59回 再構築が望まれるエコシステムの姿
- 第58回 突きつけられる課題と、その対応方法
- 第57回 「好ましいインフレ」を目指す取組
- 第56回 「好ましいインフレ」を目指す
- 第55回 地域の未掴をエコシステムとして描く
- 第54回 地域の未掴はどのようにして探すのか
- 第53回 日本の未来を拓く構想と新しい機関
- 第52回 新政権に期待すること
- 第51回 日本ならではの外貨獲得力案
- 第50回 未掴を掴む原動力を歴史的に探る
- 第49回 明治時代の未掴、今の未掴
- 第48回 オリンピック会場から想起した日本の出発点
- 第47回 都知事選ポスターから考える日本の方向性
- 第46回 都知事選ポスター問題で見えたこと
- 第45回 閉塞感を打ち破る原動力となる「気概」
- 第44回 競争力低下を憂いて発展戦略を探る
- 第43回 中小企業の生産性を向上させる方法
- 第42回 中小企業の生産性問題を考える
- 第41回 資本主義が新しくなるのか別の主義が出現するのか
- 第40回 「新しい資本主義」をどのように捉えるか
- 第39回 日本GDPを改善する2つのアプローチ
- 第38回 イノベーションで何を目指すのか?
- 第37回 日本で「失われた〇年」が続く理由
- 第36回 イノベーションは思考法で実現する?!
- 第35回 高付加価値化へのイノベーション
- 第34回 2024年スタートに高付加価値化を誓う
- 第33回 生成AIで新価値を創造できる人になる
- 第32回 生成AIで価値を付け加える
- 第31回 価値を付け足していく方法
- 第30回 新しい資本主義の付加価値付けとは?
- 第29回 新しい資本主義でのマーケティング
- 第28回 新しい資本主義での付加価値生産
- 第27回 新しい資本主義で目指すべき方向性
- 第26回 新しい資本主義に乗じ、対処する
- 第25回 「新しい資本主義」を考える
- 第24回 ChatGPTから5.0社会の「肝」を探る
- 第23回 ChatGPTから垣間見る5.0社会
- 第22回 中小企業がイノベーションのタネを生める「時」
- 第21回 中小企業がイノベーションのタネを生む
- 第20回 イノベーションにおける中小企業の新たな役割
- 第19回 中小企業もイノベーションの主体になれる
- 第18回 横階層がイノベーションを実現する訳
- 第17回 イノベーションが実現する産業構造
- 第16回 ビジネスモデルを戦略的に発展させる
- 第15回 熟したイノベーションを高度利用する
- 第14回 イノベーションを総合力で実現する
- 第13回 日本のイノベーションが低調な一因
- 第12回 ミスコンから学んだ将来の掴み方(2)
- 第11回 ミスコンから学んだ将来の掴み方(1)
- 第10回 Futureを掴む人になる!
- 第9回 新しい世界を掴む年にしましょう
- 第8回 Society5.0・中小企業5.0実践企業
- 第7回 なぜ、中小企業も5.0なのか?
- 第6回 中小企業5.0
- 第5回 第5世代を担う「ティール組織」
- 第4回 「望めば叶う」の破壊力
- 第3回 5次元社会が未掴であること
- 第2回 目の前にある5次元社会
- 第1回 Future は来るものではない、掴むものだ。取り逃がすな!
