Catch the Future<未掴>!

第100回

おぼろげに見える未掴の姿

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤伸夫

 


革命によって何が起きるのかを、誰も正確に予想することはできません。小さなピースについて「それは何十年も前に“空想”として示されていたことだ」と言われることはありますが、どんな産業・社会となるか、どんな生活となるかについて、正確に予想することはできないのです。しかし意外と分かることもありそうです。今回は、何が予想できるかについて考えていきます。


大所的に見える「未掴」

今後に何が起きるか?ディテールについては分かりませんが、大所的には分かることがあると考えられます。

第1は、充足の時代が来ることです。特に工業製品の生産力が飛躍的に向上すると共に、「何でも買えるワイルドカード」であるお金(またはお金に代わる資産)が膨張しているからです。一部には売れ残り廃棄される「モノ余り現象」さえ生じています。またお金の膨張は、それによりサービス(無形の体験など)への購買力が高まることも意味しています。

以上から、モノやサービスの「価値」が問われる時代になっています。「不足を解消する」、「便利になる」だけでは価値を見出されなくなり、それ以上の「意味」が問われるようになるのです。一方で食品やエネルギーなどは有限なので、購買力の違いによる格差は広がっていくとも考えられます。


第2は、非人間脳力活用の時代となることです。企画など「考えること」や実験など「試行錯誤すること」に必要となる時間や労力について人間的制約が外れることで、成果が飛躍的に増大すると考えられます。19世紀の「非人間労力」活用が産業革命に至ったのと同様に、あるいはそれ以上に、私たちの社会・産業・生活が一変する可能性があります。


第3は、組織が変わることです。先日、生成AIにより「課」が変わっているとの報道を目にしました。ある役所では課長が不在がちなので自分の判断・仕事の成果、そして日常の行動までも生成AIに読み込ませ、部下がAIに相談すれば課長の考え方等に基づいて仕事を進められるようにしたとのこと。定型化した仕事をこなす「課長ばかりか課員もAI」という課もできつつあるそうです。

AIが「仕事」ではなく「役割」を担い「成果」まで出す時代になると、組織は大きく変わるでしょう。管理者も実務者も、人間の役割が大きく変わると考えられます。



仕事が減るのか?活躍の場が増えるのか?

この現象を見て「AIは人間の仕事を奪う」という考え方があります。ある大学が示した予測リストはホワイトカラーをはじめとした人々を震撼させました。一方で「AIは新たな仕事も生み出す」との指摘もあります。

19世紀の産業革命により人間の仕事は減ったのか?増えたのか?それまでは動力から作業までを人力に頼っていたが、まずは動力が、次に加工などの作業が「非人間労力」に置き換わりました。今まであった仕事がなくなったものもありますが「今までできなかった仕事ができる」、「今まで想像したこともない製品ができる」、「社会そのものも変えられるかもしれない」と考えることで、自動車の量産や巨大船の建造、ビル建築、橋梁や高速道路をはじめとしたインフラ整備が実現しました。

それは「新しく仕事ができた」という言葉では表しきれないほどの人間の活躍の場が生まれたことを意味しています。


「非人間脳力」の活用が進む今後の世の中も同様だと予想されます。どんな新しい製品やサービスができ、どんな生活が実現するのか、世の中の眺めが具体的にどのように変わっていくのか、その具体的な姿は、今は分かりません。

但し「知識を実現に繋げる」、「目的を明らかにし、意味付けする」ことの意味合いが相当高まると考えられます。この場面でAIを使えば段違いのスピードとスケールが実現することも、19世紀の例から分かります。

このことは「AIによって新しく仕事ができた」という言葉では表しきれないほど多彩な、そして大量の「人間が活躍できる場」が生まれてくることを示しています。今回の革命が「脳力」に関わるものであることから、19世紀に起きた「能力」革命よりもはるかに大規模でインパクトがある可能性が、考えられるのです。


では、この時にどうするか?先ほどの「実現→意味→目的」がポイントだと考えられます。今まで無理だと想像もしなかったこと、例えば「世界で飢えて死ぬ人がいなくなる」とか「全ての人に教育機会が開かれる」などのレベルの高い目的を掲げ、その実現に向けて人知・非人知を集結して構想・戦略を練ることで、多くの人が未掴を掴める社会になると考えられます。

未掴を掴むために必要なのは、将来を予測することよりも「今起きつつある現象に対して、人間が何を実現できるか」という対応可能性を広げることではないかと考えられます。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>

https://www.innovations-i.com/panf/id/?id=866



【筆者へのご相談等はこちらから】

https://stratecutions.jp/contacts/




なお、冒頭の写真は ChatGPT により作成したものです。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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