Catch the Future<未掴>!

第101回

誰が未掴を掴めるのか?

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤伸夫

 



今、世の中が急速に変化していると感じられる中、その恩恵はまだら模様と感じられます。掴める人は恩恵を受けられ、そうでない人は恩恵を受けられない可能性があるのです。今回はその差はどこにあるのか、どうすれば未掴を見付けられるかについて考えていきます。



「頑張って、経験して、差別化する」が通用しない?

今、多くの人が「頑張って、経験して、差別化する」が通用しなくなったと感じていると思います。今まである仕事を頑張って打ち込んだ(Aさん)が、今までの経験を活かして仕事をすると(例:企画書作成)、「さすがAさんだ、他人には出せない説得力がある資料ができた」と言われたのに、今や当該業務の経験が随分と少ない者(Yさん)が生成AIを使って作成した企画に見劣りしてしまうという現象が紹介されています。

それもデザインなど単に見栄えだけではありません。必要十分な記載内容が理路整然と(理論的な因果関係を踏まえて、十分な説明等を伴って、説得力のある順番で)記載されており、実際に「業務には通じていない者が作った企画の方が、説得力があるように見える、この資料のもと、会社の力を合わせられる」と感じられる現象が生じています。


なぜ、このような現象が生じるのか?生成AI(のうち大規模言語モデル)は、生成AIは、膨大な学習を通じて獲得した言語・知識・概念のパターンを組み合わせ、人間だと膨大な時間がかかる文章や企画を、短時間で構成しています。そのプロセスで「世界中の知恵を込める」と「(元情報はトータルで考えると、説得性を高めるために理路整然になるよう工夫されているはずという前提のもとで)内容の十分さや納得しやすい配列でもって整理されている」という成果を出しているのです。

Aさんがどんなに頑張って経験を積んできたとしても、それが差別化要因になったのは「その会社」という狭い世界の中でのことでしょう。範囲を世界にまで広げると、差別化要因にはならない可能性があります。

加えてインターネットの世界では、他社のBさん、もっと他の会社のCさん、と無数の人たちの知恵が蓄積されています。生成AIはそれら膨大な知恵を集結すること、更には他分野の知恵を応用することも得意です。こうして生成AIにより「頑張って、経験して、差別化する」が通用しなくなってきたと感じられるようになったのです。



AIを高度活用できれば未掴が掴めるのか?

このように言うと、未掴を掴めるのはYさんなのか?ものごとはそう簡単ではないと考えられます。

「説得力がある、素晴らしい」と評価される企画をAIに作成させるため、Yさんはノウハウを蓄積したでしょう。適切な依頼文(プロンプト)を作成できなければ、そのような資料は作成できません。このため的確なプロンプトを作成できる人とできない人とで、生成AIからの回答は異なると考えられます。この現象は、今後に生成AIがどんどん進化したとしても継続するでしょう。

では、その資料を世の中に出した時、差別化できているか?他社にYさんと同様のプロンプトを作れる人(Zさん)がいれば、ならない可能性があります。YさんもZさんも問うているのは同じインターネット世界、つまり情報源に(生成AIにより多少の違いはあるにせよ)あまり違いはなく、似通った企画になると考えられます。



数パーセントのオリジナリティを込められるかがカギ

そのような状況で「差別化」はどのように生まれるのか?内容に「オリジナリティ」を込められるかがカギとなります。企画書(資料)の中で、その「オリジナリティ」は語句にすると一部、数パーセントに過ぎないかもしれません。しかしその存在があるかないかで、企画の価値は天と地ほど異なる可能性があります。

もしオリジナリティを込めることができれば、生成AIは比類のないメリットを与えてくれます。理論的な因果関係を踏まえて、十分な説明等を伴って、説得力のある順番で記載した企画を作ってくれる可能性があるのです(最初は作ってくれなかったとしても、何度も依頼することでブラッシュアップできるでしょう)。それは今までは簡単に実現できなかった境地、すなわち未掴です。


では、この未掴は誰が掴めるか? Yさんには掴めないでしょう。Aさんだと思われます。Aさんは「AIに与えるオリジナルな素材」と持っているからです。Aさんが生成AIを使いこなすことで、未掴を掴めそうです。

ちなみにこの結論、Yさんは未掴が掴めないと断定している訳ではありません。Yさんも「頑張って、経験し、差別化する」の積み重ねで可能になります。結局はAさんにもYさんにも同じ可能性が拓けており、未掴を掴めるか否の違いは、未掴の存在に気付き、自分の経験や知識を結び付けられるか否かにかかっています。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>

https://www.innovations-i.com/panf/id/?id=869



【筆者へのご相談等はこちらから】

https://stratecutions.jp/contacts/




なお、冒頭の写真は ChatGPT により作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

『日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル』

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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