中小企業の「シン人材確保戦略」を考える

第110回

いまこそAIを“社内文化”に──中小企業が未来を変える第一歩

一般社団法人パーソナル雇用普及協会  萩原 京二

 

はじめに:「AIなんて、うちには関係ない」と思っていませんか?


「AIなんて、大企業の話でしょ」「うちのような小さな会社には、まだ早い」「そもそも社員が使いこなせないだろう」──これは、私がこれまで何度も耳にしてきた言葉です。

ですが、いまこの瞬間、その「関係ない」という言葉が、会社の未来を大きく左右する分かれ道になりつつあります。

メディアでは連日のように、AIを活用して生産性を高めた企業の成功事例が報道されています。しかし、実際の現場ではどうでしょうか。総務省の調査では、日本企業で生成AIを導入しているのは全体のわずか9%。しかも従業員50人未満の企業に絞ると、その割合は6%程度にとどまります。つまり、まだ10社中9社はAIを使っていないのです。

これは、ある意味で「チャンス」です。ほとんどの会社がまだ動いていない今だからこそ、始めた企業は一気にリードできる。差は静かに、しかし確実に広がっていくのです。

多くの経営者が「興味はあるけど、何に使えばいいのかわからない」と口を揃えて言います。たしかにAIは「何でもできる」と言われる反面、「では、何をさせればいいのか」が見えにくい。だからこそ、“様子見”という言葉のもとに、行動が止まってしまっている。

しかし、本当に怖いのは「何もしない」ことです。

本コラムでは、「AI導入はうちにはまだ早い」と考えている中小企業の経営者に向けて、AIにまつわる誤解を整理し、「何から、どう始めればよいか」を実践的に解説します。特別な知識や投資がなくても、社員全員でAIを使いこなすことは可能です。そして、その第一歩が、会社の未来を大きく変える“分岐点”になるのです。



1.“様子見”のままでは、いつの間にか取り残される


「今すぐ困っているわけじゃないし」「うちの業界は変化も少ないから」──AI活用の話をすると、こうした反応をされる経営者の方が少なくありません。

たしかに、AIを使わなくても明日すぐに業務が止まるわけではありません。AIがなくても回る。だからこそ、多くの中小企業が“様子見”を選んでいます。しかし、この「様子を見る」という姿勢こそが、未来の競争力を失う最大のリスクなのです。


たとえば、同じ地域で似た規模・業種の2社があるとしましょう。A社はAIを活用し、B社は従来のやり方を貫いています。見積書や提案書の作成時間を比べてみると、A社はAIで下書きをつくるため1件30分。B社は手作業で3時間。最初は「少し早いな」程度の差にしか見えないかもしれません。

けれど、浮いた時間でA社はお客様を2件多く訪問でき、営業力を強化。3ヵ月、半年とたつうちに、提案件数・受注数・売上と、すべての指標で差がつき始めます。一方のB社は、目の前の業務に追われて、新しいチャレンジも顧客開拓も後回しに。気づけば「やっていることは同じなのに、なぜか成果が違う」という状況に陥ります。

これは決して仮説ではありません。私が支援している現場では、まさにこの「静かな分岐」が、あちこちで起こっています。


AIを導入した企業は、「時間を生み出す力」を手に入れます。議事録、報告書、提案書、求人原稿──AIが代行・補助できる業務は想像以上に多く、しかもその多くが「社員が時間を取られている非創造的な仕事」です。こうした作業が短縮されれば、社員は“考える・動く・創る”という、本来の価値ある時間に集中できます。


一方で、AIを使わない会社はどうなるか。

「忙しいから、新しいことに取り組めない」

「人が足りないから、新しい仕事は断るしかない」

──そうした“言い訳”が現実になり、気づけば変化の波に取り残されてしまうのです。

“様子見”は、安全策ではありません。何もしないという選択は、時代の流れに逆らいながら静かに後退する選択でもあります。

未来を変えるのに必要なのは、大きな投資でも、高度な専門知識でもありません。まずは、「動く」こと。そして、「早く動く」ことです。



2.AI導入を妨げる4つの誤解


「興味はあるけど、うちには無理だと思うんです」──AI導入をためらう経営者の多くが、同じような不安を口にします。実際、私が現場で聞いてきた“導入しない理由”のほとんどは、次の4つに集約されます。

しかし、これらは“事実”ではなく、ほとんどが“誤解”なのです。


<誤解① セキュリティが心配>

「情報が漏れるのではないか」「顧客データが外部に流出したら…」という懸念はもっともです。ですが、現在の法人向けAIサービスは、銀行並みの暗号化通信、企業ごとに完全分離された運用環境、利用ログの可視化など、セキュリティ対策が徹底されています。

実際に、三菱UFJ銀行やトヨタ、野村證券といった超一流企業も、業務の一部でAIをすでに活用しています。彼らが使っている時点で、一定以上の安全性が担保されていることは明らかでしょう。

「紙と人力のほうが安全」というのは、もはや過去の常識かもしれません。


<誤解② 費用が高い>

「どうせ導入に何十万もかかるんでしょう?」「月額費用も高そう」と思っている方も多いですが、実際にはChatGPTの有料版で月3,000円前後。法人向けのプランでも、全社員で使って月額3〜5万円程度のものがほとんどです。

例えば、1人の社員がAIを使って見積書や提案書作成を月10時間短縮できれば、それだけで2万〜3万円相当の人件費削減効果に。つまり、たった1人でも元が取れるのです。複数人が使えば、費用対効果は一気に跳ね上がります。


<誤解③ 社員が使いこなせない>

「パソコンに弱い社員が多いから無理」「ITが苦手な人には難しいのでは?」──そう思われがちですが、実はChatGPTは“操作”よりも“会話”が基本。

たとえば、「新規のお客様へのお礼メールをつくってください」と入力するだけで、AIが文章を提案してくれます。スマホでメールが打てる社員なら、その日から使える。マニュアルも専門知識も不要です。実際に、60代の経理担当者が「最初は不安だったけど、話しかけるだけでできるから意外と簡単だった」と今では毎日使っているケースもあります。


<誤解④ 社員が使わないのでは?>

「せっかく導入しても誰も使わなかったら…」という心配もわかります。でも、AIが“仕事をラクにしてくれる”とわかれば、社員は自然に使い始めます。

特に効果的なのが「全員同時スタート」です。

ある製造業の社長は、朝礼で「今日から全員でAIを使い始めます」と宣言。その1週間後、社長よりも使いこなしている社員が続出しました。“自分だけ使っていない”という心理が働くと、自然と活用が進むのです。



3.AIは「人を減らす技術」ではなく「人を活かす仕組み」


「AIって、人の仕事を奪うんじゃないの?」──そんな声も、現場ではよく聞かれます。たしかに、ニュースでは“AIが○万人の雇用を代替”といった見出しが並び、不安をあおるような報道も少なくありません。

ですが、実際にAIを導入している中小企業の多くは、真逆の体験をしています。

AIは、「人を減らす」ためではなく、「人の力を最大限に引き出す」ための仕組みなのです。


<AIが担うのは「人間がやらなくてもいい仕事」>

あなたの会社の中で、「誰かがやらなければいけないけど、誰がやってもいい仕事」はありませんか?

たとえば──

・お客様への報告書作成

・議事録や会議要約

・提案書のひな型づくり

・求人広告や挨拶メールの文面作成

こうした業務に共通しているのは、「創造性よりも手間がかかる」こと。そして、それらに社員の時間が奪われてしまっているのが現実です。

でも、これらの作業の多くは、AIが得意とする分野です。AIは、“人が時間を使うべきではない仕事”を代わってくれるパートナー。言い換えれば、社員の“時間と意志”を解放する存在なのです。


<解放された時間で、社員は「本来やるべきこと」に集中できる>

ある製造業の会社では、AI導入によって事務スタッフの残業がゼロになりました。営業担当者は、AIに提案書の素案を作ってもらい、浮いた時間で訪問件数を月20件から35件に増やすことに成功。結果、売上は15%増加し、人を増やさずに利益を拡大できました。

このように、AIの導入は単なる“業務効率化”ではありません。“人が本来やるべき仕事”──たとえば考える・提案する・関係を築くといった創造性と人間性が求められる領域に集中できるようになるのです。


<「AIが仕事を奪う」のではない。「仕事の質が変わる」だけ>

確かに、AIによって“なくなる仕事”もあるでしょう。でも、それは「価値を生み出さない仕事」が姿を変えるだけのこと。郵便がメールに変わったように、カメラがフィルムからスマホに変わったように、働き方の形が進化しているだけなのです。

そして、中小企業こそこの変化をチャンスにできます。なぜなら、少人数だからこそ、社員一人ひとりの“仕事の質”が会社全体の成果に直結するからです。


<AIは“人を減らすツール”ではなく、“人を生かす土台”になる>

AIを導入しても、「人」は必要です。でも、その人が“より価値の高い時間”を過ごせるようにするのがAIの役割。

それはまるで、鍬を手に入れた農民が、収穫量を何倍にも増やしたような変化です。AIという道具が、社員の可能性を最大限に引き出す。これこそが、AI活用の本質です。



4.AIがもたらす経営の好循環


AI導入の目的は、単に「業務を早く終わらせること」ではありません。むしろ本質は、“生まれた余力をどう活かすか”にあります。

中小企業がAIをうまく活用できれば、**「時間」→「利益」→「人」→「モチベーション」→「成長」**という、驚くほど健全な好循環が回り始めます。


<時間を生むことで、利益が生まれる>

たとえば、提案書作成にこれまで1件あたり8時間かかっていた会社が、AI導入後には2時間に短縮できたとします。月に20件の提案書がある場合、1ヵ月で120時間の削減です。

この120時間を、時給2,500円の業務時間として換算すれば、月30万円分の価値を創出していることになります。

浮いたリソースは、新たな案件獲得の営業活動や、品質向上、内部整備などに再投資可能。これが、売上やサービスレベルの向上に繋がります。


<利益を「社員」に還元すれば、さらに好循環が回り出す>

生まれた利益を社員の待遇改善に充てることで、社内にはポジティブな変化が広がります。

たとえば──

・ベースアップで生活の安心が生まれる

・賞与アップで貢献意欲が高まる

・勤務時間の短縮でワークライフバランスが改善される

実際にある中小企業では、AI導入で浮いたコストの一部をボーナスに上乗せしたところ、「来期も頑張りたい」という声が社員から自然と上がるようになったといいます。

これは単なる“効率化の成果”ではありません。社員が報われる会社になることこそ、AI導入の本当の価値なのです。


<モチベーションが上がれば、さらなる生産性が生まれる>

人は、認められたときにこそ本気になります。AIによって生まれた余力が、社員のモチベーションにつながり、そのやる気がさらに生産性を押し上げる──これが、AIがもたらす「正のスパイラル」です。

逆に、「時間が生まれたから仕事を詰め込もう」「削減分は人件費を抑えよう」といった短期目線の使い方をしてしまうと、社員の不満が募り、離職率が上がるなど、逆効果になることも。“AIが時間を生んだ分、社員にゆとりと可能性を返す”という発想が、健全な成長につながるのです。


<経営は「仕組み」で回る時代へ>

従来の中小企業経営では、「気合い」と「根性」で乗り切る局面も多かったかもしれません。しかし、今は違います。どれだけ“仕組み”で成果を出せるかが問われる時代です。

その仕組みの核となるのが、AIです。

人間の力だけで業績を上げようとすれば限界がありますが、AIを組み込んだ“経営の装置”を整えることで、会社は無理なく強くなる。中小企業がこの“装置化”を実現できれば、もはや規模の大小は関係ありません。



5.AIが変える「会社の顔」──採用・評価・ブランド


AIを導入することは、単なる業務改善ではありません。それは、会社の「見られ方」──すなわちブランドや信頼、採用力にまで影響を与える、大きな経営判断でもあります。

つまり、AIは“会社の中”だけでなく、“会社の外の評価”も変えるのです。


<求職者が見ているのは「将来性」>

いまの若い世代──とくに20〜30代の求職者は、給与や休日だけでなく、「その会社が進化しているか」をしっかり見ています。

求人票に「AI活用で効率化」と一言添えただけで、応募が3倍になった事例もあります。

ある印刷会社では、「AIで業務の無駄をなくし、残業ゼロを目指しています」と明記したところ、応募者の多くが「時代に合った会社だと感じた」「長く働けそうだと思った」と面接で話したそうです。つまり、AI導入の有無が“企業の将来性”の判断材料になっているのです。


<「スピード」は、いまや“信用”の証>

AIを活用している会社は、見積書や提案書、連絡メールなどの対応が早く、「仕事が速くて正確」という評価を得やすくなります。

その結果──

・「対応が速いから安心できる」

・「相談に対する反応が的確」

・「スピード感がある=信頼できる会社」

という印象が定着し、価格よりも“信頼”で選ばれるようになります。

これは重要な変化です。従来、価格競争に悩んでいた中小企業が、スピードと的確さという「無形の価値」で選ばれる時代になったということなのです。


<「うちは昔ながらのやり方でいい」は、もはやリスク>

変化に対応できない会社には、次のようなイメージがつきまとうようになっています。

・「新しいことに取り組まない=停滞している」

・「ITに疎い=非効率で人も疲弊していそう」

・「時代についていけない=将来が不安」

これらの印象は、採用にも営業にも悪影響を与えます。

逆に、「AIを活用している会社」は──

・業務効率が良く、残業も少ない

・社員の働き方にも配慮している

・新しいことに挑戦できる風土がある

──といった“前向きな会社”という評価を得やすくなります。


<ブランドを再定義する、という経営判断>

中小企業にとって「ブランド」とは、大きな広告費を投じて作るものではありません。日々の積み重ねと、社内外への「姿勢」でつくられていくものです。

そして今、AI活用はその“姿勢”を示す最もわかりやすい手段の一つとなっています。

AIを取り入れることで、社内の風土が変わり、社員がイキイキと働き、顧客との信頼関係が深まり、求職者からも選ばれる会社になる。これは、単なるテクノロジーの導入ではありません。会社の未来像を、行動で示すブランディング施策でもあるのです。



6.ChatGPTは“部下を育てるように使う”


ChatGPTを「検索エンジンの進化版」だと思っている人も少なくありません。しかし実際には、それ以上のポテンシャルがあります。なぜならChatGPTは、“あなたの部下として動いてくれる存在”だからです。

ただし、その部下は“指示待ち”です。何をしてほしいかを、きちんと伝えなければ動きません。そして、いい指示を出せば、いい成果を返してくれるのです。


<指示 → 結果 → フィードバック =マネジメントの基本>

ChatGPTを使いこなすには、「部下を育てるような使い方」が有効です。

たとえば──

1. まず「何をしてほしいか」を具体的に伝える

2. 出てきた成果物を確認し、「ここをこう直して」と改善点を伝える

3. 再提出された成果を見て、さらにフィードバックを与える

この繰り返しで、どんどん精度が高まっていきます。

このプロセス、まさに部下を育てるときと同じですよね?

そして不思議なことに、このAIとの“育成サイクル”を続けるうちに、経営者自身の「指示力・言語化力・思考の整理力」も自然と鍛えられていくのです。


<AIとの対話が、自分自身の思考を整えてくれる>

ある運送会社の社長は、こんなことを話してくれました。

「ChatGPTに『もっと具体的に』『この表現を柔らかく』などと指示を出しているうちに、自分の中で“何を求めているのか”がハッキリしてきたんです。すると、部下への指示も格段に明確になり、現場が動きやすくなった。AIが、私のマネジメントを育ててくれたようなものです。」

これは決して特別なケースではありません。ChatGPTとの対話は、自分の考えを“言葉”にする訓練になります。経営者や管理職に必要な「伝える力」「思考の整理力」を、自然と身につけさせてくれるのです。


<「AIにどう話しかけるか」は、「部下にどう伝えるか」と同じ>

たとえば──

×「提案書つくって」

→ 何の?誰向け?どんな内容で?とAIは混乱します。

◯「製造業のお客様向けに、当社の自動化設備を紹介する提案書をつくって。ポイントは『安全性』『導入コスト』『納期の早さ』で、先方はコストに敏感なので、費用対効果も強調して」

→ ここまで伝えれば、AIは的確に応えてくれます。

つまり、“相手(AI)に伝わる言葉”を意識することが、結果的に“人に伝わる力”にもつながるのです。


<AIを「育てる」ことで、自分も「育つ」>

ChatGPTは「1回使って終わり」の道具ではありません。使えば使うほど、自分に合った成果物を出してくれる“専属スタッフ”に成長していきます。

そして、それを育てる過程で、経営者やリーダー自身が「言葉にする力」「指示する力」「整える力」を身につける──これが、AI活用の最大の副産物かもしれません。



7.AI導入を成功させる5つのステップ

ここまでお読みいただき、きっと「AIを使ってみよう」と思われた方も多いのではないでしょうか。しかし、いざ始めようとすると、

「まず何から始めればいい?」

「社員にどう使わせればいい?」

「うまく定着するにはどうしたら?」

──そうした疑問が浮かぶはずです。

ここでは、中小企業がAI活用を“社内文化”として根づかせるための5つのステップをご紹介します。


<ステップ①:全員が使える環境を整える>

AI導入でいちばん大切なのは「誰かひとり」ではなく「全員が同じスタートラインに立つこと」です。

ありがちな失敗は、経営者や一部の社員だけが先に使い始め、他のメンバーが“置いてけぼり”になるケース。そうなると、「自分だけ使い方がわからない」と感じた社員が、萎縮して離脱してしまいます。

逆に、「今日から全員で使い始める」と宣言するだけで、社内に“やってみよう”の空気が一気に広がります。

まずは法人向けAI環境を整え、社員全員にアカウントを配布しましょう。最初から「みんなで使う」が成功の鍵です。


<ステップ②:「文章をつくる仕事」から始める>

AI導入の初期におすすめなのが、「社内で頻繁に使う文章の作成業務」。

・お客様への挨拶メール

・社内お知らせ文

・求人原稿

・議事録の要約

・営業提案書の下書き

──こうした業務は、AIによる成果が目に見えてわかりやすく、効果を実感しやすい分野です。

まずはこの“わかりやすい成功体験”を社員に与えることで、抵抗感が薄れ、「AIって便利だな」という気持ちが自然に芽生えます。


<ステップ③:効果を数値化する>

導入の効果を実感し、社内の理解を深めるためには、“なんとなく便利”ではなく“数値で見える”ことが重要です。

たとえば──

・導入前:提案書作成に月80時間

・導入後:月20時間に短縮(60時間削減)

→ 時給2,000円換算で月12万円の余力創出

このように、「時間」「品質」「反応(お客様の声)」などを記録し、定期的にビフォー・アフターを見える化することで、「AIは費用以上の価値がある」と全員が納得できるようになります。


<ステップ④:成功事例を社内で共有する>

1人でも「うまくいった」人が出たら、それを社内で発表してもらいましょう。

・「この業務に使ったら2時間→20分になった」

・「お客様から“丁寧な文章ですね”と褒められた」

・「求人広告の応募数が増えた」

こうした声を定期的にシェアすることで、「自分も試してみようかな」と思う人が次々と現れます。AIは“道具”ではありますが、定着させるには“ストーリー”が必要なのです。


<ステップ⑤:カスタムGPTで“質問の壁”をなくす>

多くの社員がつまずくポイントが、「AIに何をどう聞けばいいかわからない」という“質問力の壁”です。

この壁を越えるのが、「カスタムGPT」の導入です。これは、業務ごとにAIが社員に質問をしてくれる仕組み。

たとえば──

AI:「この提案書は、どの業種のお客様向けですか?」

社員:「製造業です」

AI:「今回の提案のポイントは何ですか?」

社員:「安全性とコスト削減です」

──このように、AIの問いに答えていくだけで成果物が完成するため、質問に悩むことなく、誰でも同じ品質の成果を出せるようになります。



おわりに:“AIを使う会社”から“AIと共に進化する会社”へ


AIは、もはや一部の先進企業や専門家だけのものではありません。スマートフォンが誰でも使えるようになったように、AIもまた、“誰でも使える、当たり前の道具”になりつつあります。

それでも、いまだに多くの中小企業が「うちには関係ない」「もう少し様子を見よう」と立ち止まっています。ですが、その“様子見”が、未来を大きく分けるポイントになっているのです。


<AIを始めた企業は、確実に「先を行く存在」に変わっている>

私が支援してきた多くの企業のなかでも、いち早くAI導入に踏み切った会社は、たった半年〜1年で明らかな変化を見せています。

・残業ゼロ、売上15%アップ、採用応募3倍

・提案書作成が月80時間→20時間に削減

・「あの会社は、いつも対応が速くて的確」と顧客から高評価

こうした変化は、“AIを道具として使う”ことにとどまりません。AIの活用によって、「変化に強く、挑戦し続ける文化」が社内に根づいていくのです。


<経営者ひとりではなく、全員で一歩を踏み出す>

本コラムでお伝えしてきた通り、AI活用で最も大切なのは「全員で始める」こと。

経営者ひとりが使いこなしても、それだけでは会社は変わりません。むしろ、社員と一緒に学び、一緒に試し、一緒に成長していくことが、真の変革につながります。

「AIに詳しくない社員が多いからこそ、全員一緒に始める」

「みんなが初心者だからこそ、恥ずかしがらずに聞き合える」

──それが、中小企業にとっての理想的なスタートラインなのです。


<未来は、完璧な準備ではなく「最初の一歩」から始まる>

AI活用に、完璧な準備や膨大な投資は必要ありません。必要なのは、「まずやってみる」という決断だけです。

たとえば──

「明日の会議案内をAIでつくってみる」

「求人広告をAIに頼んでみる」

「見積書の下書きをAIに作成させてみる」

──こうした小さな実践が、やがて大きな変化を生み出します。

そして3ヵ月後、あなたの会社ではこう語られているかもしれません。

「最初は半信半疑だったけれど、AIがここまで使えるとは思わなかった」

「仕事がラクになっただけでなく、自分の考え方や伝え方も磨かれた」

「なにより、社員の表情が変わった」


<AIは「人を減らす技術」ではない。「人を活かす土台」だ>

繰り返しますが、AIは人の仕事を奪うためのものではありません。

むしろ、“人間だからこそできる仕事”に集中できるように、社員を「作業」から解放するための土台なのです。

社員一人ひとりがAIを使いこなし、少人数でも大きな成果を上げられる会社になれば、中

小企業は大企業にも十分対抗できます。いや、変化に強い中小企業だからこそ、AI時代における真の主役になれるのです。


さあ、未来はあなたの“決断の先”にあります。

どうか恐れず、小さくてもいいので一歩を踏み出してください。

その一歩が、

・社員を育て

・会社を成長させ

・お客様の信頼を呼び込み

・あなた自身の経営者としての未来を切り拓いていきます。

AIと共に進化する会社へ。

その道のはじまりは、今、あなたの目の前にあります。


 

プロフィール

一般社団法人パーソナル雇用普及協会
代表理事 萩原 京二

1963年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒。株式会社東芝(1986年4月~1995年9月)、ソニー生命保険株式会社(1995年10月~1999年5月)への勤務を経て、1998年社労士として開業。顧問先を1件も持たず、職員を雇わずに、たった1人で年商1億円を稼ぐカリスマ社労士になる。そのノウハウを体系化して「社労士事務所の経営コンサルタント」へと転身。現在では、200事務所を擁する会員制度(コミュニティー)を運営し、会員事務所を介して約4000社の中小企業の経営支援を行っている。2023年7月、一般社団法人パーソナル雇用普及協会を設立し、代表理事に就任。「ニッポンの働き方を変える」を合言葉に、個人のライフスタイルに合わせて自由な働き方ができる「パーソナル雇用制度」の普及活動に取り組んでいる。


Webサイト:一般社団法人パーソナル雇用普及協会

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