中小企業の「シン人材確保戦略」を考える

第8回

中小企業のための「集めない採用」~ まだ穴のあいたバケツに水を入れ続けますか?

一般社団法人パーソナル雇用普及協会  萩原 京二

 

中小企業にとって、採用は大きな課題の一つです。リソースが限られている中で、優秀な人材を獲得するための手段は常に模索されています。一方で、これまでと同じやり方を続けているだけで本当に「求める人材」を確保することができるのか、その疑問や葛藤は常に頭の中にあるでしょう。


伝統的な採用手法の落とし穴

ほとんどの企業では「母集団を形成する」、つまり応募者をたくさん集めることに焦点を当てています。しかし、多額の広告費や時間を使って応募者を集めたとしても、労働環境が整備されていなかったり、従業員にとって魅力的な労働条件を提供できなければ、早期退職が発生してしまいます。採用してもすぐに退職をしてしまうので、また新規の募集をする。この悪循環を繰り返している中小企業が非常に多いようです。これは例えるのなら、「穴のあいたバケツ」に水を入れ続けるようなものです。


まずは「バケツの穴」をふさぐことから

このような状況に陥ってしまっている中小企業は、応募者を集める前にまず「バケツの穴」をふさぐことから始めるべきでしょう。すなわち、従業員にとって「働きやすく、働きがいのある職場環境」を整備するということ。また、キャリアアップのチャンス、福利厚生の充実など、従業員が企業に長く働き続けるための施策を導入することも不可欠です。


中小企業のための「集めない採用」とは?

このような考え方に立てば、中小企業にとって必要なのは「集めない採用」です。つまり、必要以上に多くの応募者を集めるのではなく、企業の文化や価値観に共感する人材に限定するアプローチです。企業の特色や独自性を強調し、共感する人材を対象とします。この方法で採用することで、ミスマッチのリスクを減少させ、中長期的なコミットメントを期待できる人材を得られます。


「集めない採用」を導入するメリット

この採用方法の最大のメリットは、限られたリソースを効果的に活用できることです。実は、採用活動には応募者への対応など「見えないコスト」が発生しています。いたずらに母集団を増やすことは、採用コストの増加に直結します。しかし、本当に必要な人材だけに限定して募集をすることで、採用コストを最適化することが可能になります。理論的には、1名の募集に対して、たった1名だけの応募があり、それが求める人材にぴったり合った人であるのが理想的です。あなたの会社でも「集めない採用」を実践してみませんか?


 

プロフィール

一般社団法人パーソナル雇用普及協会
代表理事 萩原 京二

1963年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒。株式会社東芝(1986年4月~1995年9月)、ソニー生命保険株式会社(1995年10月~1999年5月)への勤務を経て、1998年社労士として開業。顧問先を1件も持たず、職員を雇わずに、たった1人で年商1億円を稼ぐカリスマ社労士になる。そのノウハウを体系化して「社労士事務所の経営コンサルタント」へと転身。現在では、200事務所を擁する会員制度(コミュニティー)を運営し、会員事務所を介して約4000社の中小企業の経営支援を行っている。2023年7月、一般社団法人パーソナル雇用普及協会を設立し、代表理事に就任。「ニッポンの働き方を変える」を合言葉に、個人のライフスタイルに合わせて自由な働き方ができる「パーソナル雇用制度」の普及活動に取り組んでいる。


Webサイト:一般社団法人パーソナル雇用普及協会

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