第14回
「社員」の概念再考 - 人材シェアの新時代
一般社団法人パーソナル雇用普及協会 萩原 京二
変わる企業と社員の関係
現代の労働市場は、根本から変貌を遂げています。かつての労働モデルは、会社と従業員が一対一の雇用関係にある「正社員」中心のものでした。しかし、最近の動向を見ると、このモデルが大きく変化し、新たな「人材シェア」の潮流が生まれています。日経新聞の最近の報道によると、会社は退職者、フリーランス、副業を行う従業員など、多様な労働者と複線的につながることが増えています。
自立する働き手の台頭
新世代の労働者は「就社」という概念にはあまり重きを置いていません。彼らは自分自身のキャリアと個人的な成長に価値を見出しており、企業はこの変化を受け入れ、退職後も含めた長期的な関係構築を目指しています。これは、自社の人材を独占的に「囲い込む」従来のやり方から、他社との人材シェアへとシフトしていることを意味しています。
フリーランスの台頭
ランサーズの調査によると、副業や自営業を含むフリーランスの数は、2021年には1577万人にも上り、労働力人口の約20%を占めるに至っています。これは、2015年と比較して70%の増加です。このような増加は、労働者が自身のスキルと時間をより自由に管理し、多様な働き方を選択する傾向を示しています。
転職市場の変化
リクルートの調査によれば、転職経験がない労働者はわずか20%です。これは、労働者が一つの企業に長く留まるという従来の概念から離れ、より多様なキャリアパスを求めていることを示しています。産業構造の変化とデジタル化の進展は、企業に求められる知識や技能を日々変化させています。企業は内部だけではなく、外部の人材と協力し、常に新たなスキルやアイデアを取り入れる必要があります。
少子高齢化と人手不足
日本は少子高齢化に伴い、深刻な人手不足の時代に突入しています。この状況は、企業が新しい人材戦略を模索する大きな要因となっています。企業と社員の伝統的な力関係も変化し、企業は従業員を束縛するのではなく、彼らの多様なキャリアと生活スタイルをサポートする方向へとシフトしています。
多様な人材の活用
現代の企業は、多様な人材に活躍の場を提供することによってのみ、競争に勝ち残ることができます。従来の枠組みに捉われず、柔軟な人材戦略を採用することが重要です。社外の人材との連携を強化し、従業員の自立と成長を促進することが、企業の持続可能な発展に不可欠です。
新時代の労働市場の展望
今後、企業は従業員の多様な働き方とキャリアパスをサポートするため、新しい労務管理と雇用戦略を開発する必要があります。長期的な視点で優秀な人材を確保し、彼らの能力や成果を評価し、処遇や人材配置に反映させることが不可欠です。また、個々の労働者との強固なコミュニケーションを通じて、彼らの個々のニーズに対応することが求められます。
この変化の中心には、企業が人材をどのように扱い、成長させ、協力するかという点があります。新しい時代の労働市場に適応するためには、企業は従来の考え方を柔軟に変え、より革新的で、多様な人材戦略を採用する必要があります。これからの企業にとって、多様な人材との連携は、単なる選択肢ではなく、生き残りをかけた必要不可欠な戦略となっています。
プロフィール
一般社団法人パーソナル雇用普及協会
代表理事 萩原 京二
1963年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒。株式会社東芝(1986年4月~1995年9月)、ソニー生命保険株式会社(1995年10月~1999年5月)への勤務を経て、1998年社労士として開業。顧問先を1件も持たず、職員を雇わずに、たった1人で年商1億円を稼ぐカリスマ社労士になる。そのノウハウを体系化して「社労士事務所の経営コンサルタント」へと転身。現在では、200事務所を擁する会員制度(コミュニティー)を運営し、会員事務所を介して約4000社の中小企業の経営支援を行っている。2023年7月、一般社団法人パーソナル雇用普及協会を設立し、代表理事に就任。「ニッポンの働き方を変える」を合言葉に、個人のライフスタイルに合わせて自由な働き方ができる「パーソナル雇用制度」の普及活動に取り組んでいる。
Webサイト:一般社団法人パーソナル雇用普及協会
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