中小企業の「シン人材確保戦略」を考える

第36回

昭和世代のオジサンとZ世代の若者

一般社団法人パーソナル雇用普及協会  萩原 京二

 

現代の職場には、昭和世代と令和世代が共存しています。昭和世代の「オジサン」たちは、仕事第一の価値観を持ち、仕事に対する熱意や責任感を強く感じる傾向があります。一方で、令和世代の「若者(いわゆるZ世代)」は、仕事とプライベートの調和を重視し、効率的な働き方を求めることが多いです。これらの価値観の違いは、経済的、政治的、社会的な背景によって形成されてきました。


<昭和世代の価値観と働き方>

昭和世代は、戦後の高度経済成長期を背景に育ち、会社への忠誠心や終身雇用が一般的でした。経済の安定とともに、仕事が人生の中心であり、長時間労働や残業は当たり前とされていました。仕事に対する責任感が強く、会社のために自分を犠牲にすることも辞さない姿勢が見られます。

事例1:残業への姿勢

例えば、昭和世代の田中さん(仮名)は、毎日終業後に自分のデスクで一杯のお茶を飲み、仕事が終わるまで帰宅しないのが当たり前でした。残業は「仕事への熱意」や「責任感」の表れとされ、遅くまで働くことが評価されました。このような姿勢は、家族や個人の時間を犠牲にしてでも仕事を優先することが良しとされていた時代の影響です。

事例2:休日の過ごし方

昭和世代は、休日に仕事関連のイベントや付き合いを優先することが多くありました。例えば、会社の同僚とゴルフに行くことが一般的で、ビジネス関係を深めるために重要視されていました。昭和世代の山田さん(仮名)は、毎週末に会社の同僚とゴルフに行くことを欠かしませんでした。これもまた、仕事の延長線上での人間関係の構築が重要視されていた時代背景が影響しています。


<令和世代の価値観と働き方>

一方、令和世代は、デジタルネイティブとして育ち、効率的な働き方とワークライフバランスを重視します。経済の変動や技術の進化を経験し、柔軟な働き方や多様なキャリアパスを求める傾向があります。会社への忠誠心よりも、自分自身のキャリアパスや自己実現を重視します。

事例1:定時退社とプライベートの充実

例えば、令和世代の佐藤さん(仮名)は、定時に帰宅し、夜はジムに行くことでストレスを発散させ、翌日の仕事のパフォーマンスを高めるようにしています。効率よく仕事を終わらせることを重視し、仕事が終わらなければ次の日に持ち越すか、早朝に対応するなど、柔軟な時間管理を行います。これは、プライベートの時間を大切にし、リフレッシュすることが仕事の効率向上に繋がると考えるためです。

事例2:休日の過ごし方

令和世代の木村さん(仮名)は、休日に趣味のカフェ巡りを楽しんだり、家族と過ごす時間を優先しています。仕事のメールには極力返信せず、プライベートを充実させることを重視しています。仕事とプライベートの線引きをはっきりさせ、オンとオフを明確に区別することが、心身の健康に寄与すると考えています。


<技術への適応とコミュニケーションスタイル>

昭和世代は紙の資料や電話でのコミュニケーションに慣れ親しんでいますが、令和世代はデジタルツールやオンラインプラットフォームを使いこなします。例えば、昭和世代の高橋さん(仮名)は、新しいデジタルツールの導入に抵抗感を感じることが少なくありません。これには、紙資料の方が確実で安心感があるという心理が影響しています。

一方、令和世代の中村さん(仮名)は、会議の議事録をリアルタイムでオンラインドキュメントにまとめ、参加者全員がすぐにアクセスできるようにしています。デジタルツールの活用により、時間や場所に制約されず、効率的にコミュニケーションを取ることが可能です。


<ハラスメントに対する意識の違い>

昭和世代は、職場での上下関係が強く、指示や叱責が当たり前とされていました。例えば、昭和世代の渡辺さん(仮名)は、部下に対して厳しく指導し、結果を出すためのプレッシャーをかけることが常態化していました。これもまた、成果を上げるための厳しさが必要とされた時代の風潮が影響しています。

令和世代は、ハラスメントに対して非常に敏感で、職場でのパワハラやセクハラを許さないという姿勢が強いです。例えば、令和世代の吉田さん(仮名)は、部下のフィードバックを重視し、肯定的な言葉で励まし、建設的なアドバイスを心掛けています。厳しい言葉や態度は、モチベーションを下げる原因と考え、相手を尊重するコミュニケーションを心がけます。


<ダイバーシティに関する意識の違い>

昭和世代は、職場での多様性に対する意識が低く、同質性を重視してきました。例えば、昭和世代の佐藤さん(仮名)は、「同じ考えを持つ人たちと働く方が効率的」と感じていました。これには、同じ価値観やバックグラウンドを持つ人たちと働くことで、コミュニケーションの摩擦を減らすことができるという考えがあります。

令和世代は、多様性を積極的に受け入れ、尊重する姿勢が強いです。例えば、令和世代の山田さん(仮名)は、職場での多様性を尊重し、異なる意見やアイデアを積極的に取り入れることで、チームのパフォーマンスを向上させています。異なるバックグラウンドを持つ人々との協力は、新しい発想やイノベーションの源泉と考えています。


<価値観の違いから来るギャップを埋めるために>

これらの価値観の違いから生じる働き方や仕事の進め方のギャップを埋めるためには、双方が相手の立場や価値観を理解し、柔軟に対応することが重要です。昭和世代は、効率的な働き方やワークライフバランスの重要性を認識し、デジタルツールの活用に積極的になることが求められます。一方で、令和世代は、昭和世代の経験や知識を尊重し、対面でのコミュニケーションや仕事への熱意を理解する姿勢を持つことが大切です。


<結論>

世代間の価値観や働き方の違いは、経済的、政治的、社会的な背景によって形成されてきましたが、働くことの本質は変わりません。重要なのは、世代間のステレオタイプにとらわれず、一人ひとりの相手を見て、多様な価値観を受け入れることです。お互いの価値観や働き方を理解し、尊重することで、より良い職場環境を築き、効果的に協力し合うことができるでしょう。世代間のギャップを埋めるためには、コミュニケーションを大切にし、お互いの強みを生かすことが鍵となります。昭和世代の経験と令和世代の新しい発想を組み合わせることで、組織はより強固で創造的なものになるでしょう。昭和世代の「オジサン」たちが令和世代の「若者」の価値観や考え方を理解することはもちろん大事ですが、今の「若者」にも「オジサン」たちが育った経済・社会環境などの背景を理解してもらいたいものですね。


 

プロフィール

一般社団法人パーソナル雇用普及協会
代表理事 萩原 京二

1963年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒。株式会社東芝(1986年4月~1995年9月)、ソニー生命保険株式会社(1995年10月~1999年5月)への勤務を経て、1998年社労士として開業。顧問先を1件も持たず、職員を雇わずに、たった1人で年商1億円を稼ぐカリスマ社労士になる。そのノウハウを体系化して「社労士事務所の経営コンサルタント」へと転身。現在では、200事務所を擁する会員制度(コミュニティー)を運営し、会員事務所を介して約4000社の中小企業の経営支援を行っている。2023年7月、一般社団法人パーソナル雇用普及協会を設立し、代表理事に就任。「ニッポンの働き方を変える」を合言葉に、個人のライフスタイルに合わせて自由な働き方ができる「パーソナル雇用制度」の普及活動に取り組んでいる。


Webサイト:一般社団法人パーソナル雇用普及協会

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