第58回
最近相次ぐ不正アクセスと情報漏洩
イノベーションズアイ編集局 経済ジャーナリストA
幸いにして、というか、今のところ大丈夫なのだが、そう思っているだけかも知れない。というのは、不正アクセスによる情報漏洩が相次いでいる、という件についてだ。
このところ、毎日のように不正アクセスに伴う企業や行政機関からの情報漏洩案件が報じられている。攻撃対象となった組織だけでなく、業務を委託した企業やそのサービスを利用する自治体、住民にまで被害が広がるケースが目立つ。
このほど明らかになったアルカディアへの不正アクセスでは、自治体の防災メールなどに登録された大量のメールアドレスが漏洩した可能性があり、静岡市でも不審メールが確認されているという。筆者も、この静岡市の防災メールに登録してあるので、メールアドレスは漏洩しているのだろう。
ただ、筆者の場合はそんなこともあろうと考え、こうした際の登録はフリーメールのアドレスしか使わない。あまたあるポイントカードなども同様だ。いまのところ、そうしたアドレスにはリアクションとみられる不審なメールは届いていないが…
一方で、携帯電話キャリアなどのメールアドレスには、日々多くの不審なメールが届く。その中には、口座や取引のない銀行やクレジットカード会社などから確認を求めるものも混じる。が、中には取引があり、ちょうど回答を待っていたところから届くこともある。偶然なのだが、こういうのが危ないのだろう。
筆者は毎日大量の不審なメールに接していることもあり、慣れてしまった。が、前述の回答を待っているようなパターンだと、反射的に不審メールを開いたり、反応したりしかねない。不正アクセスで漏洩した情報は、そうした際に用いられることが多いとみられる。一定の被害が出るのも、そのためだろう。
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こうした案件の場合は、まだ不審メールの受信者側が対策ができないこともない。一方で、運転免許証などの情報や画像が流出した場合は厄介だ。それらの情報をもとにして、誰かに借金や契約をされかねない。金融機関等に連絡しておくことはできるが、そもそも何に使われるかわからない。
近年はどこもかしこもデジタル化に熱心だ。紙にハンコを押すタイプのポイントカードはほぼ消滅し、スマホのアプリなどが一般的になった。それらはいずれも個人情報の登録が必要だ。これが流出する。
地方自治体などでも重点施策にDXが掲げられ、デジタル化による業務の効率化が進められている。こうした中で、アルカディアのような企業から情報漏洩すれば、被害は全国の自治体に及んでしまう。同社は自治体が市民向けに発信するメール配信サービスなどの運用を受託している。
アルカディアは、10月11日に不審な挙動を検知。侵入経路を遮断する措置を講じた後、13日に不正アクセスと情報漏洩の可能性を公表した。対象サービスの一部は緊急停止され、影響範囲の調査が続いている。漏洩の可能性がある情報は、メールアドレス約313万6000件、電話番号約10万5000件などで、配信履歴に保存されたメール本文なども対象となる可能性がある。ただし、これらは推定最大件数であり、実際に流出した件数はまだわからない。
これに伴い、県内だけでも静岡市や島田市、牧之原市、御前崎市、伊豆の国市、菊川市、吉田町の少なくとも7市町で影響が確認された。全国でも防災・防犯メールの停止や、登録者情報の漏洩の可能性を知らせる自治体が相次いでいるという。
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静岡市も10月13日、防災メールの登録者情報が漏洩したと発表。同日、関連する可能性のある不審メールが複数確認されたという。
不審なメールは、実在するクレジットカード会社を装い、「<重要>ご利用確認のお願い」としてカードの利用実績を確認させようとするもの。送信元は防災メールで使用されるドメインが悪用されていた。だとしたら、そのメールは不自然だ。クレジットカード会社が防災メールのドメインで利用の確認を求めるはずがない。とはいえ、漏洩した情報を活用することで、詐欺メールはますます巧妙化していく。
一方で、ネットワークから遮断でもしない限り、デジタルネットワーク社会で情報漏洩を完全に防ぐことはできないのかも知れない。静岡市も、今回の防災メールについてはアルカディアのクラウドサービスを利用していた。地方自治体が新たな情報系の電子サービスを始めるときは、クラウドサービスを利用することが大半だろう。これは企業も一緒だ。多くの企業が、クラウドサービスを使って新たなサービスを提供するとともに、社内の事務についても効率化を進めている。そして、サービス会社のセキュリティは、委託元ではどうにもできない。
かといって、委託元が自力でシステムを構築するのは得策ではない。現状は「しょうがない」ということにもなる。せめて、個人としては漏洩して困る情報は、なるべくどこかに預けないようにしたい。
今後の情報社会を生きる上では、AIなどITリテラシーの獲得が重要だ。情報はネット上からスムーズかつ大量に得たい。反面で、投資ではないが、ネット社会でも大きな利便を得ようとすることはハイリスクなのかも知れない。相次ぐ情報漏洩で、そんなことを感じた。
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