鳥の目、虫の目、魚の目

第53回

過剰情報に振り回されるな 思考力・想像力高め、ぶれない軸つくる

イノベーションズアイ編集局  経済ジャーナリストM

 

いまどきの現役世代と話していると、最新のニュースやトレンドを良く知っているなと感心しつつも、どうも薄っぺらで、情報を整理していないと感じることが少なくない。過剰に入ってくる情報をうのみにするだけで咀嚼していないのだろう。

これでは知識として身につくはずがないし、考え方・思考にぶれが生じてしまう。自信をもって、迷いなく行動するには情報を取り入れすぎないことも肝要だ。情報を精査・整理したうえで自ら考え、決め、行動する「人間力(器)」を養うことに尽きる。リーダーとしての素養も高まる。

情報過多な環境下で育つ

インターネットの普及で、誰もがSNSや動画サイト、メールなど多彩な情報収集チャネルを通じていつでもどこでも、しかもジャンルを問わず情報を手に入れられるようになった。迅速かつ網羅的に入手できるのはネット時代のメリットといえる。

電車に乗るとスマートフォンを絶えずいじり、降りるまでずっと画面を見入っている人をよく目にする。車内は静かでいいが、傍若無人でドア付近に陣取り、乗降客に全く気づかない。仕事や勉強のために必要な情報を探しているならまだしも、動画視聴やゲームに現を抜かす輩が多いのではと勘繰ってしまう。

デジタルネイティブとして情報過多な環境下で育つ若者(Z世代)はコスパに加えタイパを大切にするといわれる。動画の倍速視聴やネタバレ消費のように、あふれるコンテンツの中から効率的に情報を入手することに励む。「時間を無駄にしたくない、損をしたくない」からだ。

それだけだろうか。むしろ友人関係を保つためといえるのではないか。SNSなどで瞬時に拡散される話題についていけないと「恥ずかしい、仲間外れにされる」という取り残される恐怖だ。

知らないことへの不安からスマホを使った情報収集が常態化してしまう。情報を追い続けることになり、しかも洪水のごとく流れてくる情報をうのみにすれば思考も想像もやめてしまい適切な判断はできなくなる。情報の過剰摂取は消化不良を起こすだけで、過食、拒食になりかねない。自分の好みに偏った情報ばかり吸収するとやがて偏食に陥ってしまう。

過ぎたるは猶(なお)及ばざるが如し

入ってくる情報が多すぎるのも考えものだ。脳の処理能力を超えて情報が流入すると、脳が対応できずにオーバーヒートを起こしてしまう。こうなるとストレスがたまり、慢性的な脳疲労につながりかねない。過剰な情報に脳が振り回されるだけで、整理できなくなり、集中力や判断力は低下し、生産性や作業効率も落ちる。自分を見失うので心身への影響も懸念される。

ノーベル経済学賞を受賞したハーバート・サイモンは「情報の豊かさが注意力の貧困を生む」という名言を残した。情報量が増えれば増えるほど、それを処理する人間の注意力は散漫になり、重要な情報に集中できなくなるという指摘だ。思考も浅くなり、深い理解は得られそうもない。にもかかわらず分かった気になり、知ったかぶりになる。当然ながら決断の質も低下してしまう。

情報過多が問題なのだから、情報源を制限したり優先順位付けをしたりすればいい。スマホなどを意識的に使用しないデジタルデトックスも手だ。要は情報を遮断する工夫が必要なのだ。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」というではないか。

というのも、情報が多すぎるとどうしても選択肢が広がる。比較する対象が増えると、賢明な判断なのかという不安が強くなり、決断をできるだけ先送りするようになる。結論を出したとしても自信が持てなくなり、「失敗したらどうしよう。ダメな自分」と自己嫌悪に陥ってしまう。すると自分の頭で考えようとしなくなる。こんなリーダーの下に部下が集まるわけがなく、組織は成り立たない。

そもそも自分自身に判断の軸がないことが問題なのであり、「情報を選ぶ、手放す」基準を持つことだ。そのために必要なのは情報収集力ではなく、情報整理力と意思決定力だ。これらが足りないと、どうしても軸がぶれてしまう。

確固たる意志と明確な価値観

スポーツ選手は体の軸がぶれないように体幹を鍛える。パフォーマンスを上げるためだ。我々は心の軸、つまり心幹を強くすればいい。困難に遭遇したり迷いが生じたりしたとき、自分の判断基準や価値観こそが心の支えになる。

ぶれない自分を築き上げるには、情報を取り入れすぎることなく精査し、主体的に判断できる確固たる意志と明確な価値観を養うことに尽きる。ぶれない発言と姿勢、一貫した行動は信頼感を醸成しリーダーシップを高める。主体性、共感性、引きつける力というリーダーの3条件に適う。

 

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