駒井研司が聞く プロの自己管理術

第3回

劇には不確定な要素を入れる 矢内文章さん(3)

駒井 研司 2013年10月14日
 

 2008年の団体設立以降、コンスタントに新作を生み出し、発表を続けてきた矢内文章さん。限界を超えるために一度演劇を離れ、2年間ほど大工仕事をする中で自分を変えることができ、再び演劇の世界に戻ることができました。

 --劇作家と演出家など、多彩な役割をこなすとき、どんなことに苦労を感じますか?

 「『創作』と『事務』の頭の切り替えですね。毎回、数カ月かけて新しい物語のテーマを決め、イメージをつくりあげた上で、1カ月ほど缶詰めになって台本を書いています。でもこの間も、いろいろな事務作業をする必要がある。書類をつくったり、表を書いたり、電話やメールをしたり-。創作に集中したいし、そもそも事務仕事はやりたくないなと思うこともありますが、そんなときは『淡々と、淡々と』と自分に言い聞かせた上で取り掛かります。あと、1日の後半に事務作業や用事があると創作に集中できないので、いつも先にやってしまうようにしています」

 --「淡々と」。とてもいいですね。僕も実践してみます。台本を書き終えた後は?

 「公演に向けて1カ月半ほどの稽古に入るんですが、台本を書き終えてから稽古を始めるまでに、1週間は空けるようにしています。その間は台本を読まない。目線を変える必要があるんです。自分が書いた作品を、できるだけ他の人が書いたものと思えるようにする。役者たちと一緒に作品に取り組みながら、物語の中に新しい発見をしていくことが大切で、それらによって芝居が立体的になっていくんです。逆に台本を書くときは、演出的な事情をどれだけ考えずに書けるかを意識する。またあえて、自分でも意味が分からないセリフや展開を描き込んでおくようにもしています」

 --公演が始まってからは?

 「“新鮮さ”を保つことを意識します。1日2回公演する日もあり、いつも10日間で15回くらい公演しています。回を重ねて、演じている側が慣れてくると新鮮さが失われてしまう。だから舞台に不確定な要素や“決めないもの”を盛り込んでおきます。例えば、劇中にたくさんのボールを転がす場面を用意しておき、これらがどこにどう転がっていくかは、毎回誰にも分からない、といった具合ですね」(つづく)


【プロフィル】矢内文章 やない・ぶんしょう 演劇団体アトリエ・センターフォワード主宰。演出家・劇作家・役者。42歳、東京都出身。9作目となる最新作は、東京で11月に上演される。

2013年10月14日「フジサンケイビジネスアイ」掲載
 
 

プロフィール

株式会社ネオレックス
CEO 駒井研司

こまい・けんじ 自己管理のためのiPhoneアプリ「MyStats」(マイスタッツ)発案者。

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