ララ・コンシェルジュ~女性起業家STORY~

第85回

「老人ホームを探すこと」が仕事ではない、家族が自分らしい人生を選ぶための伴走者

サポートプラス社会保険労務士事務所  長橋知世

 

このコラムは、どん底を経験した女性がなぜ起業に至ったか、そして今何のために、どんな思いで働いているのかを、サポートプラス社会保険労務士事務所の代表を務める長橋知世がインタビューしていきます。


今回のゲストは、株式会社リトリートメント 代表取締役 セカンドライフプロデューサーの小山 千夏(こやまちなつ)さんです。

株式会社リトリートメント 代表取締役 セカンドライフプロデューサーの小山 千夏さん

お仕事について教えてください

私の仕事は「老人ホームを探すこと」ではありません。

それはあくまで結果であって、本当に向き合っているのは、ご家族一人ひとりの想いと、これからの人生そのものです。


株式会社リトリートメントの代表として、老人ホーム探しに悩むご家族に対し、カウンセリングから施設選定、見学同行、契約、入居までを一貫してサポートしています。これまでに約3,000世帯のご相談に携わってきました。

介護という、誰にでも突然訪れる可能性のある人生の局面に、第三者として寄り添い続けてきました。


この仕事を始められたきっかけは?

理由は、とても個人的な体験にあります。

独身時代、私は父方の祖母を在宅で介護していました。中心となって支えていたのは母で、家事や父の仕事を手伝いながら、祖母の介護を一手に引き受けていました。

当時は介護保険制度が整う前の時代です。「嫁が介護をするのが当たり前」という空気が家庭にも社会にも流れていました。

私は働きながらもポケットベルを持たされ、外出先でも公衆電話を探しては家に電話をしていました。

家の中はいつもピリピリしていて、見えない鎖で縛られているような感覚がありました。

9年間続いた在宅介護。ある日、友人宅に泊まっていた私は呼び出しに気づかず、その間に祖母は亡くなりました。家族で介護をやり遂げたという満足感よりも、「とても大変な時間だった」という正直な気持ちが強く残りました。

その経験から私は、「親孝行とは、ずっと一緒にいることではない。与えられた命を、自分の人生として輝かせて生きること」だと強く思うようになりました。

誰かの犠牲の上に成り立つ介護ではなく、家族が自分の人生を生きられるように。その力になりたいと、この道を選びました。


起業までの道のりについて教えてください

実は2000年にも起業を経験しています。しかし当時はロールモデルもなく、子育てに必要なお金や時間の確保が難しく、事業を手放す決断をしました。

その後2018年に老人ホーム紹介の仕事に出会い、会社に所属して働き始めました。

現場で経験を積むほどに、「この仕事の本質をもっと大切にした形で実践したい」という思いが強くなり、独立を決意しました。


振り返ると、こうした選択の根底には、子どもの頃から培われた価値観があります。

正義感が強く、弱いものを放っておけなかったり、近所の子どもたちとピンク・レディーの真似をして周りを楽しませたり、漫画を描いて友だちの親に売っていたことも。「自分でお金を生み出す」感覚を遊びの延長で身につけていたのかもしれません。

一方で、近所のお年寄りと過ごす時間が多く、老いや死を身近に感じて育ちました。

幼い頃から「死」や「心と身体の関係」について考え、夢や不思議な体験を通して、「目に見えない世界」に自然と意識が向いていったのです。

この感覚は、今の仕事に深く息づいています。


家族の想いに寄り添う際、大切にしていることは?

老人ホームを選ぶ場面では、家族間で意見が割れることが少なくありません。表面的には施設の条件の話をしていても、その奥には親への想い、後悔、恐れ、罪悪感などが入り混じっています。

私はその「言葉にならない部分」を感じ取り、問いかけを重ねていきます。ある瞬間、表情がふっと緩み、心が軽くなることがあります。私はそれを「波動が軽くなる」と表現しています。すると、ご家族それぞれが親に抱く本当の想いが、自然と見えてくるのです。

これはコーチングやカウンセリングを越えた、私独自の向き合い方です。スタッフにも研修で伝えていますが、すべてを言語化できるものではありません。

私ならではの感覚だと思っています。


これからのビジョンを教えてください

施設を決めることが目的ではありません。

同じ施設に入るとしても、家族全員が納得しているかどうかで、その後の人生はまったく違います。

誰も悪者をつくらず、罪悪感を残さない選択を一緒に探すこと。それが私の役割です。


私のミッションは「愛そのものであり続けること」。

目の前のご本人、ご家族の選択が、不安や恐れではなく、愛から生まれるものであるように寄り添い続けたい。

選択が愛から生まれたものなのか、不安や恐れから生まれたものなのかを、自分に問い続けています。

本来の自分とつながって生きることが、結果として誰かの人生に光を灯すと信じています。

介護という出来事を通して家族が縛られるのではなく、それぞれが自分の人生を生きられるように。

そのための伴走者であり続けることが、私の仕事であり、私の生き方です。

小山千夏さんの著書『楽する介護 ~あなたはあなたの人生を生きてもいい~』


【セカンドライフプロデューサー 小山千夏さん】
株式会社リトリートメント 代表取締役
一般社団法人リプランニング協会 代表理事
『人生をどう終えるか』――それは、本人にとっても家族にとっても、生まれたとき以上に大切なこと。
それなのに、日本では「人生の終わり方」を語ることがどこかタブー視されています。そんな空気を、笑顔で変えていく存在になりたい。
『がんばらない介護』と、『誰かのため』だけの人生を手放し、自分自身の人生を生きること。それが人生100年時代に必要だと感じています。

書籍についてはこちらから

 

プロフィール

【インタビュアー】
サポートプラス社会保険労務士事務所
セカンドキャリアの女性コミュニティ「ララ・コンシェルジュ」
アラフィフ女性に特化した人材紹介「ララ・ワーク」
代表 長橋 知世

静岡県立沼津東高校卒
立教大学社会学部観光学科卒

一般企業、商業高校の教員として勤務したのち、出産を機に退職し家庭に入る。

2児の子育てが終わってから、社会保険労務士資格を取得。

2018年に横浜で社労士事務所の開業に至る。

40代50代女性がもっと社会で活躍すべきと、セカンドキャリアの女性コミュニティを立ち上げ、一年でメンバー100名とする。

主婦はキャリアだと認められる社会を目指し、アラフィフ女性に特化した人材紹介業を立ち上げ、企業とのマッチングを進めている。

Webサイト:サポートプラス社会保険労務士事務所
      セカンドキャリアの女性コミュニティ「ララ・コンシェルジュ」
      主婦の就職支援「ララワーク

セカンドキャリアの女性コミュニティ「ララ・コンシェルジュ」とは、人生経験を積み、さまざまなキャリアを経験した女性の第二の人生を応援していくコミュニティです。

ビジネスセミナーや食事会、交流会など、プライベートを楽しみながらビジネスをひろげていくための機会を提供しています。

自己成長できる場、仲間づくり、協業できる環境であり、女性の新しい生き方を承認し、これから社会に踏み出す女性にエールを送りたいと思っています。

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