第77回
【税務調査事例】「国外払い」の給与・賞与に係る日本支店の源泉徴収義務
朝日税理士法人 執筆
今回は、税務調査で指摘されやすい、非居住者に対する国外払い報酬の源泉徴収漏れについて、実際の事例を紹介します。
1.税務調査で指摘されたケース
米国本社から日本支店に3年間赴任していたA氏が、出向期間を終えて帰国しました。帰国後、米国本社から、日本での出向期間を満了したことに対する「Completion Bonus」を受け取ったケースです。
「もう日本にはいないし、米国で受け取った給与だから、日本の税金は関係ないだろう」そのように誤認されることがありますが、以前、ご縁があり税務調査の途中で関与させていただいた、とある米国法人の日本支店のケースでは、この事例で「源泉徴収の漏れ」を指摘されました。近年の税務調査では、国際税務専門官が、グローバルな報酬の支払いフローを綿密に調べており、彼らは帰国後のボーナス支払いの可能性を十分に認識しています。
2.なぜ指摘されるのか?
この事例には、国際税務の複雑な4つのポイントがあります。
国外払いでも源泉徴収義務が発生する:
日本の所得税法は、非居住者に対して国内源泉所得を支払う場合、その支払いが国外で行われた場合でも、日本にある恒久的施設(日本支店)に源泉徴収義務を課します。このケースでは、ボーナスは米国で支払われましたが、その所得の源泉地は日本支店での勤務であるため、日本の課税権が及びます。
日本支店がコストを負担していなくても課税権は及ぶ:
ボーナスが米国本社から支払われ、日本支店の会計で費用計上されていなくても影響しません。国際税務の観点では、所得の源泉地(所得が生じた場所)が重要です。
滞在期間に係るボーナスは「国内源泉所得」に該当する:
コンプリーションボーナスなどは、その名称にかかわらず、「国内において行う勤務」に対する対価として支払われるものです。このため、日本の所得税法上の国内源泉所得に該当します。
居住者として日本勤務した者には「短期滞在者免税」は適用されない:
Aさんのように3年間日本に赴任していた場合、その赴任期間中は日本の「居住者」として扱われます。日米租税条約上の短期滞在者免税の規定は、そのような者に対して、帰国後支払われる給与・賞与については適用されません。
3.納付期限にも注意
通常、源泉徴収税額は、対価の支払い日の属する月の翌月10日までに納付しますが、今回の事例のように、非居住者に対する国内源泉所得の支払いを国外で行った場合は、支払日の属する月の翌月末日までに納付する特例が適用されます。この点も、通常の給与・賞与の支払いの場合とは異なるため、特に注意が必要です。
4.留意事項
このような国際税務の落とし穴を避けるために、以下の点に留意してください。
支払いの目的を正確に把握する:
帰国する従業員への給与・賞与が、日本での勤務に対するものであるかを確認する必要があります。
本支店の人事・経理部門との連携:
国外で支払われる給与・賞与であっても、国内源泉所得に該当する可能性があれば、本支店の人事・経理部門と連携して源泉徴収の要否を検討する必要があります。
専門家への相談:
国際税務は特殊で複雑な分野です。不明な点やリスクのあるケースについては、国際税務に精通した専門家に相談し、予期せぬ追徴課税を回避する必要があります。
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