日本・ASEANだより

第32回

内部監査入門 ー コロナ時代への対応編 – 前編

朝日税理士法人 2020年12月18日
 

朝9時前。オフィスでは時計が静かに時を刻んでいる。Aは、時差通勤で少し早めに出社し、来期の計画について考えながら資料をめくっている。Aは製造販売業の企業に勤めており、内部監査部門に配属されて2年目。会社は成長過程にあり拠点も徐々に増えつつある。先輩のKがにこにこしながら、コーヒーを片手にやってくる。


K:「Aさん、おはようございます。朝早くから資料作りですか。」


A:「おはようございます。最近はリモートワークも広がって、オフィスでも静かに集中して作業に取り組むことができる時間帯が増えました。来期の計画について考えていたのですが、内部監査の取り扱う範囲って広いですね。」


K:「はい。内部監査の実務にはその対象として、経営監査、業務監査、会計監査、IT監査やその他の監査(コンプライアンス監査、倫理監査、環境監査、個人情報保護監査その他)がありますが、その一つ一つに広くて深い世界が広がっています。」


A:「本当に広いですね。通常監査の他にも、先日は特命監査を任じられました。」


K:「それはおつかれさまでした。外部監査は会計監査や内部統制監査を中心としています。それと比べると、内部監査は監査対象が広範なうえに、メソドロジーも発展過程にあります。改めて考えてみると、内部監査は外部監査よりも難しいという考え方もできますね。」


A:「先輩のような経験豊富な方でもそう思われるのですか!」


K:「そうですね。ただ大変な分、やりがいもあるかもしません。」  


A:「この1年コロナ感染の拡大が続きましたが、この先終息して、以前の状態に戻るのでしょうか。」


K:「どうでしょうね。とはいえコロナ後はこれまでとは違った仕事の仕方が必要になると思います。今回、業務部門を支援するために我々の業務においてもいろいろと工夫しましたね。危機が去ったあとに、以前の世界に逆戻りしては勿体ないです。」


A:「確かにそうです。コロナ後はどういったことに気を付ければよいですか。」


K:「リスクの所在が変化していますから、細かい変化に注意を払って、優先順位の高い事項に注力してゆく必要があります。これまでの経験では判断できない状況に対応してゆく必要もありますから、柔軟な対応が求められます。従前と比べて、不正リスクも高まっているでしょう。データ・プライバシーや知的財産の保護に関するリスクについてもこれまで以上にしっかりと対応する必要がありそうです。」


A:「チーム編成や、現地往査はどうしたらよいでしょうか。」


K:「コロナ禍で今年体験したから、わかると思いますが、状況の変化に対応しつつ与えられた業務を完了できるよう、適宜リモート監査を取り入れます。この方法には良いことがあります。まずチーム編成はバーチャルチームやリモートチームに移行できます。これからはチームメンバー全員が必ず一か所に集まって仕事しなくてはいけないということはありません。それよりも、業務内容に照らして最適なスキルを持ったメンバーを集めることが大切です。所在に囚われることなく、どんなスキルを持っているかという観点からチームメンバーを選べるようになり、一つ一つの業務に対して専門スキルの高いメンバーをアサインできるようになります。」


A:「私も専門スキルを持てるようにならないといけないですね。」


K:「はい。それは本当に良いことですし、Aさんの活躍の場を広げてくれますよ。」


A:「それは楽しみです。」


K:「その他、我々内部監査部門のメンバー全員にとって大切なことは、これまで以上に時間を投資して、会社の経営陣や業務部門とコミュニケーションし、良い関係を構築することです。」


A:「これまで準備が大変だなぁと思っていましたが、Kさんが定期的に開催されている経営陣向けのプレゼンテーションや、組織横断的に業務部門にご参加いただく年次大会等は、関係部門との情報共有のために有効な機会ですよね。」


K:「まったくその通りです。関係部門と視点を共有すること、内部監査部門の仕事や貢献を会社に理解してもらうことは大切です。いかに内部監査が会社の成功に貢献しているのか、を伝えることで、我々の経営への関与を高めることができるようになるのですよ。」



(注)この記事は公開日現在での情報に基づいて作成されています。また基礎的な内容を中心に扱っており、専門論点を網羅するものではありません。
(参照)Workiva-amplify (2020) The IIA: What’s on Your 2021 Risk Radar
(参照)Workiva (2020) SOX Compliance in a Post-COVID World


執筆

朝日税理士法人(東京)

 
 

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