日本・ASEANだより

第22回

海外送金と源泉徴収

朝日税理士法人  執筆

 

源泉所得税の税務調査では、日本企業が行う非居住者又は外国法人(以下「非居住者等」という。)に対する国外送金について適切に源泉徴収が行われているかチェックされます。

日本の所得税法上、非居住者等に対して国内源泉所得に該当する対価の支払いをした場合、原則として、その対価の支払者は源泉徴収義務を負うことになります。日本企業が非居住者等との間で行う海外取引が複雑化・多様化する中、税法条文の解釈上、その対価の支払いが源泉徴収の対象となるか否か判断が非常に難しく、実際の税務調査においても、日本企業と税務調査官との間で見解の相違が生じ、源泉徴収もれを指摘されるケースが多く見受けられます


さらに、対価の支払いを受ける非居住者等の居住地国と日本との間に租税条約が締結されている場合には、その非居住者等が、対価の支払者を通じて「租税条約に関する届出書」その他必要書類を、その対価の支払者の所轄税務署長に対して、その支払日の前日までに 提出することにより、国内法で定められている源泉徴収税率が租税条約に定められている税率まで軽減又は免除されたりすることになりますが、税務調査において、この租税条約の規定の適用誤りによる源泉徴収もれも指摘されることもあります。 


ひとたび国外送金につき源泉徴収もれが生じた場合、多額の源泉徴収税額、不納付加算税及び延滞税が課されるだけでなく、非居住者等へ対価の支払が完了してしまっている場合などは、税務調査の結果、日本企業が立替払いした源泉徴収税額相当額について非居住者等から回収するのが困難な状況に陥り、日本企業が最終的に源泉徴収税額を負担せざるを得ない場合もあるので注意が必要です。


なお、日本企業が行う国外送金については、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」に基づき、日本企業が金融機関の営業所等を通じて100万円を超える国外送金を行った場合、その金融機関は、その国外送金ごとに「国外送金等調書」を、その国外送金を行った日の属する月の翌月末日までに、その営業所等の所轄税務署に提出することになっています。


また、マイナンバー制度が始まり、日本企業が国外送金をする場合などは、金融機関に対して法人番号の届出が必要なため、100万円以下の国外送金も税務当局に把握される可能性もあります。したがって、国外送金をする際は、事前に源泉徴収義務の有無について確認し、税務当局から源泉徴収もれを指摘されないような対策をすることが大切です


以 上


この記事の提供元:朝日税理士法人グループ

執筆

朝日税理士法人(東京)

 

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