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日本・ASEANだより

第3回

【インドネシア】サービスの輸出にかかるVAT0(ゼロ)%の範囲拡大について

朝日税理士法人  執筆

 

2019年3月29日に「サービスの輸出にかかるVATに関する財務大臣規則:No.32/PMK.010/2019」(以下、“PMK-32”)が公布され、同日付で発効しました。今回はこの新規則による実務上の変更点などについてお伝えします。

VAT(Value Added Tax:インドネシア語ではPPN)は日本の消費税に相当し、インドネシア課税区域内での物品の引渡しや課税サービスの提供があった時など、対象となる課税取引については法律上規定されています(付加価値税法4条)。そのうちいわゆるサービスの輸出(インドネシアの事業会社が国外事業会社にサービス提供をする場合を想定)については「VATの税率はゼロ%」と規定されていますが、2010年の財務大臣規則第70号などにより実務的にはゼロ%の適用取引は「委託製造サービス」を「国外使用物品のメンテナンスサービス」および「建設サービス」の3つに限定されていました。

PMK-32では「サービスの輸出とは、インドネシアの課税区域内で提供するサービスを課税区域外の事業者により利用されるもの」と規定しています(PMK-32第2条4)。

本規則により、サービスの輸出にはゼロ%のVATが課される(VAT負担が生じない)ことになり国内サービス業の価格競争力が向上することになります。つまり、これまでインドネシアからサービスを購入する際に日本にある会社がVAT10%をインドネシア事業者から徴収され、これはコストとして負担せざるを得なかった(日本で相殺はできない)のが、VATが徴収されなくなることで税金負担が軽減されることになり、インドネシアで国外企業にサービス提供をしている事業者にとっては朗報と言えるでしょう。例えば今後、コンサルティングサービスを提供する事業者が地域統括拠点としてインドネシアに投資をすることは、コスト競争力の点で有益なこととみなされるかもしれません。


PMK-32に、新たにVATゼロ%と明記されたサービスは以下の通りです。

A) インドネシア課税区域外で利用される動産に関連するサービスで、輸出用物品に関する貨物輸送サービス

B) 海外のサービス利用者からの要請に基づき提供され、そのサービスがインドネシア課税区域外で利用されるもののうち以下のサービス

・情報技術サービス(コンピュータシステム分析、コンピュータシステム設計、ウェブサイト作成、ITセキュリティ、コンタクトセンター、テクニカルサポート、クラウドコンピューティング、ウェブホスティング、コンテンツ作成サービスなど)

・相互接続、衛星、及び/またはデータ接続サービス

・研究開発サービス

・国際輸送を対象とした航空機及び/または船舶のレンタルサービス

・輸出目的で課税区域内の物品調達業者をあっせんする貿易サービス

・コンサルテーションサービス(ビジネス・マネジメント分野、マーケティング分野、人事分野、法務・税務・会計・財務監査関連、インテリア・建築分野、エンジニアリング分野)


VATゼロ%の適用を受けるためには以下の要件が全て満たされている必要があります。

不備がある場合、サービスはインドネシア関税地域内で提供されたとみなされて、通常のVAT10%が課税されます。

・書面による契約書があること。契約書には、合意されたサービスの種類とその詳細、および価格が明記されていること

・海外相手方からの支払いを証明する根拠資料があること(取扱い金融機関の確証など)


税務上の留意点は、以下の通りです。


・売上invoiceとともに、サービス輸出申告書(PEJKP/Pemberitahuan Ekspor Jasa Kena Pajak)の発行が義務付けられています。

・VAT月次申告書(SPT Masa)において課税サービス輸出としての申告が必要です。(VAT非課税の取扱いとは異なります)委託製造サービスから生じた課税物品についても、既存の税関規則に基づき物品輸出申告書を作成しなければなりません。

・サービスの輸出のための仕入れにかかる仮払いVATは、相殺対象となります。


本稿の内容は2019年8月31日時点で公表されている情報に基づいています。ご不明な点やご質問等がございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。

以 上


この記事の提供元:朝日税理士法人グループ

執筆

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