日本・ASEANだより

第23回

海外駐在員が日本にある不動産の譲渡を行った場合の課税関係

朝日税理士法人  執筆

 

継続して1年以上の予定で海外において勤務をしている者は、一般的に、所得税法上の非居住者に該当します。

非居住者については国内源泉所得が課税されるため、海外勤務期間中に、日本国内に所有する不動産を売却した場合には、その譲渡益は、国内源泉所得として課税の対象になり確定申告が必要です。

また、非居住者の不動産の売却については、非居住者の無申告による課税もれを防ぐ意味から、その不動産の購入者は、売買代金の支払いの際、その支払金額の10.21%相当額を源泉徴収することになっており、その後、不動産を売却した非居住者は、確定申告をすることによりその源泉徴収された金額を精算することになります。

ただし、個人が自己又はその親族の居住の用に供するために不動産を購入した場合であって、その不動産の売買代金が1億円以下である場合には、その購入者である個人は源泉徴収義務を負いません。


非居住者の不動産の譲渡所得の計算は、居住者と同様、不動産の保有期間の長期・短期の区分により税率が異なるほか、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例の適用もあります。

なお、3,000万円の特別控除を適用するためには、居住の用に供しなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要がありますが、居住の用に供しなくなった後、売却までの用途については、たとえ空家にしていても、また、 賃貸の用に供していても差し支えないと解されます。


ここにおいて、不動産の購入者が源泉徴収義務の履行をしなかった場合は注意が必要です。

源泉徴収義務者は、税務調査等により多額の追徴税額とともに不納付加算税が課されることになります。

一方、非居住者は、すでに譲渡所得につき確定申告したとしても、不動産の購入者から追加納付分の源泉徴収税額相当額の返還を求められる可能性があります。

その結果、日本や外国においてすでに完了した課税関係に影響することも懸念されることから、そのようなトラブルを未然に防ぐうえで、不動産の売買契約締結の際、購入者の源泉徴収義務の有無についてもあらかじめ確認することが大切です。


なお、非居住者が国内にある不動産を譲渡した場合には、租税条約があったとしても、その譲渡所得につき、日本で課税されるとともに居住地国である外国でも課税され二重課税が生ずる可能性があります。外国における二重課税の排除の方法についても、事前に確認する必要があります。



以 上


この記事の提供元:朝日税理士法人グループ

執筆

朝日税理士法人(東京)

 

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