第49回
【PHILIPPINES】小売自由化法の改正
朝日税理士法人 執筆
各報道機関の発表によると、2021年12月10日付けでフィリピン小売自由化法の改正法にドゥテルテ大統領が署名し、共和国法(RA: Republic Act)No. 11595として成立しました。2000年に施行された小売自由化法は、20年を経てようやく改正されることになります。
従来の小売自由化法(RA No. 8762)は、様々な要件が非常に厳しいことから、フィリピンの小売市場への進出を検討する外資企業にとって高い参入障壁となっていました。しかしこの度の改正により、資本金や店舗あたり投資額を中心に要件が大幅に引き下げられます。
今後のフィリピン進出を検討する日系企業にとって影響の大きな改正であることから、本記事にて小売自由化法改正の概要をご紹介します。
なお、小売自由化法における「小売」とは、一般消費者向けに継続的に商品を販売する行為を指し、レストラン等での飲食の提供も小売に分類されます。
一方で、ホテルに併設され宿泊客を主な顧客とする飲食店・ギフトショップ、病院内に併設される薬局等は対象外です。また、業者向け販売、政府関係機関向け販売、製造業者がごく少量を一般消費者向けに販売した場合なども対象外となります。
1. 従来の小売自由化法
2000年に施行された小売自由化法は、それ以前に認められていなかった外資企業のフィリピン小売市場への参入を、条件付きで認めるものでした。しかしながら、課された条件が以下に代表される厳しいものであったことから、実際にフィリピン小売市場へ参入した外資企業は一部の大企業のみに留まったまま、現在に至ります。(以下は一般的な小売に関するもの。)
*最低払込資本金:US$2,500,000以上
*各店舗の最低投資額:US$830,000以上
*外国親会社の純資産:US$200,000,000以上 など
2. 小売自由化法の改正内容
RA No.11595により改正された内容は、主に以下のとおりです。
特に厳しい要件とされていた最低払込資本金はUS$2,500,000からPhP25,000,000(約US$500,000)に、各店舗の最低投資額はUS$830,000からPhP10,000,000(約US$200,000)に大幅に引き下げられました。また、外国親会社に求められる純資産・小売実績・年数の要件が削除されています。更には、外資企業の100%出資を阻む一因となっていた株式公開規定も削除されました。ほかにも一般品と高級品で異なるカテゴリー分けをされていたものが統一されシンプルな運用となり、特に高級品カテゴリーに分類されていたものについては、投資委員会(BOI)や国家経済開発庁(NEDA)の事前審査及び登録が不要となりました。
以上のことから、外資企業にとって参入障壁となっていた条件は相当程度緩和され、従来に比べ参入しやすくなると言えます。
なお、小売自由化法では実店舗を通じたビジネスが前提となっていること、取扱品目によっては関連省庁の事前許可・登録が別途必要であること、外資規制の無い業種の場合の払込資本金US$200,000と違いがあることなど、規制緩和が進んだとはいえ、 留意すべき点もあります。
3. 今後のスケジュール
今後新聞等を通じて公告が行われ、公告終了の15日後に改正小売自由化法が施行されることになります。また、改正小売自由化法の承認後90日以内に施行規則(IRR)が公表される予定であるため、近日中により詳細な実務ルールが判明すると予想されます。
4. 弊社サービスの紹介
規制の大幅な緩和により、将来性豊かなフィリピン小売市場への参入の門戸が広がりました。フィリピン政府としても外資企業の直接投資の増加を期待しており、参入を検討している日系企業にとっては大きなチャンスとなります。一方で、参入に際しては新しい小売自由化法を正しく理解し、かつその他の残存する外資規制も考慮しながら、適切なプロセスに基づいて会社設立を行うことが求められます。
朝日ネットワークスフィリピンでは、フィリピンにおける会社設立のサポートから、設立後の会計・税務申告のサポート、さらには関連するコンサルティング業務も提供しております。
小売自由化法の改正を機にフィリピン小売市場への参入を検討されている場合は、弊社までお気軽にお問い合わせください。
この記事の提供元:朝日税理士法人グループ
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