日本・ASEANだより

第40回

【インドネシア】【規則改定・続報】2021年度 景気刺激策の減免税制度の再延長措置

朝日税理士法人  執筆

 

コロナウィルスの景気刺激策の1つとして2021年6月度までの各種税金の減免税制度が既に財務大臣令(No.9/PMK03/2021”PMK-9”)として公布されています。

今般2021年7月1日付けで、財務大臣令(No.82/PMK03/2021”PMK-82”)が新たに公布されましたのでお知らせいたします。

PMK-82の主な内容は下記のとおりです。


減免税制度の内容の変更はありません

免除対象期間が2021年12月までに延長

減免税制度の一部について、適用会社の範囲が制限


以下ではPMK-82の規定内容(PMK-9を踏襲)と、その改正点を記載しています。

PPH21(従業員給与にかかる源泉徴収税)の免除

 特定の事業分野の会社に勤務する年間所得2億ルピア以下の従業員はPPH21が100%免除されます。

【適用可能企業】

適用企業はPMK-9より変更ありません

特定の事業分野1,189業種についてはPMK-82の付表Lampiran Aをご確認下さい。

なお以前まで適用可能企業に含まれていた“輸入便宜KITEを受けている会社”、“保税地区に所在する会社”についてはPMK-9にて除外されました。


【免除対象期間】

2021年12月まで延長となりました(PMK-9では2021年1月度~6月度迄)。

(弊社注記:免除されたPPH21は、その全額を従業員へ現金で支給することとされています。そのため、PPH21を会社負担(グロスアップ処理)している場合でも免除されたPPH21を従業員の給与に上乗せして支給することが必要となります)


【適用を受けるための手続】

・ PPH21の免除申請は原則租税総局www.pajak.go.idのオンラインから申請します。

・PMK-9による2021年6月度までのPPH21免税の恩典を受けている場合でも改めて2021年12月までの延長申請が必要となります。なお7月度から延長申請する場合、申請期限は2021年8月15日です。

・ PPH21の免除を受けた後にオンラインによる実施報告書提出が必要となります。実施報告書の報告期限は免除を実施した翌月20日となります。なお、2021年1月度~6月度の実施報告書の修正申請は2021年10月31日まで可能です。

PPH22(輸入等に関する前払法人税)の輸入時の不徴収

 特定の事業分野にあたる会社のPPH22について、輸入時に免除を受けることができます。

【適用可能企業】 

適用企業数は132業種に大幅に制限されました(PMK-9では730業種)。継続適用可能かご留意ください

特定の事業分野132業種についてはPMK-82の付表Lampiran Jをご確認下さい。

なお以前まで適用可能企業に含まれていた“輸入便宜KITEを受けている会社”、“保税地区に所在する会社”についてはPMK-9にて除外されました。


【免除対象期間】

2021年12月まで延長となりました(PMK-9では2021年1月度~6月度迄)。


【適用を受けるための手続】

・ PPH22の免除申請は原則租税総局www.pajak.go.idのオンラインから申請します。

・ PMK-9による2021年6月度までのPPH22の免除の恩典を受けている場合でも改めて2021年12月までの延長申請が必要となります。

・ PPH22の免除を受けた後にオンラインによる実施報告書提出が必要となります。

・ 実施報告書の報告期限は免除を実施した翌月20日となります。

PPH25(法人税予納)の納税額の軽減

 特定の事業分野にあたる会社に対してPPH25の要納税額の50%が軽減されます。

【適用可能企業】

適用企業数は216業種に大幅に制限されました(PMK-9では1,018業種)。継続適用可能かご留意ください

 特定の事業分野216業種についてはPMK-82の付表Lampiran Oをご確認下さい。

なお以前まで適用可能企業に含まれていた“輸入便宜KITEを受けている会社”、“保税地区に所在する会社”についてはPMK-9にて除外されました。


【軽減対象期間】

2021年12月まで延長となりました(PMK-9では2021年1月度~6月度迄)。


【適用を受けるための手続】

・ PPH25の軽減申請は原則租税総局www.pajak.go.idのオンラインから申請します。

・ PMK-9による2021年6月度までのPPH25軽減の恩典を受けている場合でも改めて2021年12月までの延長申請が必要となります。なお7月度から延長申請する場合、申請期限は8月15日です。

・ PPH25の軽減を受けた後にオンラインによる実施報告書提出が必要となります。

・ 実施報告書の報告期限は軽減を実施した翌月20日となります。

特定中小企業の売上にかかるファイナルタックスの免除

 前年度の売上高が48億ルピアを超えない企業等は、原則売上高に対して0.5%の法人税がファイナルタックス(PPH4-2)として課されていますが、特定の要件のもとで当該課税の免除を受けることができます。


【適用可能企業】

適用企業はPMK-9より変更ありません。対象企業は以下の通りです。

・ 従来から存続している会社で前年度の売上高が48億ルピアを超えない会社

(弊社注記:2018年度から2020年度までの3年間、特定中小企業として取り扱われた企業は2021年度より特定中小企業の売上にかかるファイナルタックスの対象外 (政令No23/2018、財務大臣規則No99/PMK03/2018)となりますので本規定の適用がないことにご留意ください)

・ 2021年度に新規設立した会社(弊社注記:上記のうち事前にノーマルタックスの選択申請を行っていない会社に限られる。)


【免除対象期間】

2021年12月まで延長となりました(PMK-9では2021年1月度~6月度迄)。


【適用を受けるための手続】

・ 免除を受けるためには事前にSK(免税証明)を入手する必要があります。

・ ファイナルタックスの免除申請は原則租税総局www.pajak.go.idのオンラインから申請します。

・ PMK-9による2021年6月度までの免除恩典を受けている場合の延長申請の要否については明示されておらず現時点では不明です。

・ ファイナルタックスの免除を受けた後にオンラインによる実施報告書提出が必要となります。

・ 実施報告書の報告期限は免除を実施した翌月20日となります。なお、2021年1月度~6月度の実施報告書の修正申請は2021年10月31日まで可能です。

特定の建設サービス売上にかかるファイナルタックスの免除 

 建設業では、その事業規模やサービスの形態に応じて売上に対して2%~6%の法人税がファイナルタックス(PPH4-2)として課されています。今回の規定では、このうち農業用水などの灌漑関連施設建設など極めて限られた建設サービスについてファイナルタックスの免除を受けることができます。

【適用可能企業】

適用企業はPMK-9より変更ありません。対象企業は以下の通りです。

・ 建設業者のうち、農業用水(灌漑)設備の修繕、改良等に関する建設サービス売上についてはファイナルタックスが免除されます。

(弊社注記: 免除対象となるサービスが極めて限定的であることから、この税務恩典を受ける企業は少数に留まるものと思われます)

【免税対象期間】

2021年12月まで延長となりました(PMK-9では2021年1月度~6月度迄)。


【適用を受けるための手続】

・ 免除申請は原則租税総局www.pajak.go.idのオンラインから申請します。

・ PMK-9による2021年6月度までの免除恩典を受けている場合の延長申請の要否については明示されておらず現時点では不明です。

・ 免除を受けた後にオンラインによる実施報告書提出が必要となります。

・ 実施報告書の報告期限は軽減を実施した翌月20日となります。なお、2021年1月度~6月度の実施報告書の修正申請は2021年10月31日まで可能です。

VAT暫定還付手続きの迅速化

 現行制度上VATの還付は、10億ルピアを上限として暫定還付申請が認められています。暫定還付を申請した場合、原則的には税務調査を経ず簡易的なチェックのみで暫定的に還付を受けることが可能ですが、本規定の適用を受けた企業はVATの暫定還付を50億ルピアを上限として受けることが可能です。

【適用可能企業】

適用企業数は132業種に大幅に制限されました(PMK-9では725業種)。継続適用可能かご留意ください

特定の事業分野132業種についてはPMK-82の付表Lampiran Rをご確認下さい。

なお以前まで適用可能企業に含まれていた“輸入便宜KITEを受けている会社”、“保税地区に所在する会社”についてはPMK-9にて除外されました。


【対象期間】

2021年12月のVAT還付申請までに延長となりました(PMK-9では2021年1月度~6月度迄)。


以上の情報は執筆時点(2021年7月16日時点)の最新の情報に基づいて作成していますが、随時変更される可能性がありますので、実際の税務対応については個別にご相談ください。


この記事の提供元:朝日税理士法人グループ

執筆

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