新年あけましておめでとうございます。本年も元気ある企業を目指して学びを続けてまいりましょう。
ビジネス・パーソンに学びは不可欠ですが、今年はこれまで以上にクローズアップされると思われます。新年1月1日の日本経済新聞第1面は「つながる100億の脳」というタイトルで「知の探求」、「常識通じぬ未来へ」、「『人類』問い直す」などの言葉が踊っていました。Fuji Sankei BUSINESS-iは「アジアとつながり飛躍目指せ」でした。両者に共通するのは、これまでのパラダイムが通用しなくなるという危機感でしょう。新しいパラダイムに対応できるよう準備するかしないかで、飛躍できるか否かが決まってしまうのです。
「グローバル化」の新しい側面
日経新聞とBUSINESS – iの共通点の第一は「グローバル化」です。日経は世界、BUSINESS - iはアジアに焦点を当てていますが、注目すべきは対象の違いではなく「日本だけを考えていたのでは、もう生き残れない」との問題意識でしょう。「もう数十年前から『グローバル化』が叫ばれていた。変わり映えしないな。」そう捉えるのは少し危険だと思います。ここに来てグローバル化に新たな側面が加わったと思えるからです。
個人的な感触なのですが、これまでのグローバル化は「国境や地域の垣根が低くなり取り払われて、人やモノの交流が活発化してきた。チャンスだ」との意識だったような気がします。一方で最近のグローバル化は「積極的に海外人材や文化等を取り入れないと新しい世界で生きていけない」との意識が込められているのではないでしょうか。BUSINESS-iの「アジアとつながり飛躍目指せ」は、このストレートな表現でしょう。日経の「つながる100億の脳」も、「もし繋がらなかったらどうなるか?100億の脳を活用できないという意味だ」と訴えかけているようにも感じられます。
最近、東南アジアから技術者を積極的に受け入れる企業経営者と話するチャンスがありました。「東南アジア諸国の教育水準も向上して技術では遜色ない一方で、日本の若者にないハングリー精神がある。東南アジアと日本の若手が同じ職場で働くことが、掛け値なしに双方に良好な刺激となっている」と言っていました。これも、今流のグローバル化ではないかと思います。
「知」の新しい側面
もう一つ読み取れるのは「新しい知」だと思います。日経の「『人類』問い直す」は印象的でした。今までのパラダイムは「我思う、故に我あり」に象徴されます。「人間は何かしら考えるので存在意義がある、無機物や動物よりも価値がある」という考え方です。一方で新しいパラダイムで存在意義がある、価値のある知は必ずしも人間が作り出す訳ではありません。機械もしくはメカニズム(IT機器・AI)も生み出します。というか、それは今まで人間にとって「未開の地(知)」であるがゆえに価値があるとさえ言えそうです。
ひとことで「新しい知」と言いましたが、それには幾つかのあり方があります。専門用語もありますが、ここは直感的な表現を試みましょう。一つは「IT機器に考えさせること(代表例:AI)」、もう一つは「IT機器を使って知を得ること(代表例:IoT)」です。IT技術の専門雑誌のみならずマネジメント誌、いや新聞でさえ今や“AI”や“IoT”という語が登場しない日はありません。これはビジネスや「働く」という場面において「新しい知」のステータスが飛躍的に高まっていることを表しています。グローバル化と共にこちらでも、乗り遅れは致命的な影響を及ぼす可能性があります。
嵐はチャンスでもある
「グローバル化」と「新しい知」がビジネスや生活に嵐をもたらすのは確実です。その影響から誰も逃れることはできません。但し全ての人が同様にダメージを受けるかというと、そうではありません。頑丈な建物にいる人が被るダメージはそうでない人よりも少ないでしょうし、昔の紀伊国屋文左衛門のようにピンチをチャンスに変えることができる人もいます。
では「グローバル化」と「新しい知」という嵐の中でピンチをチャンスに変える役割を担う人は、誰でしょうか。筆頭は経営者ですが、マネジャーや担当者も貢献できます。その中で特に機会が多いのは人事、特に研修など人材開発を担当するマネジャー・担当者です。「人に備えをさせる」で、それを実現するのです。
このため当コラム「会社千夜一夜」では、嵐の中で飛躍できる企業を作るための人材開発に焦点を当てた記事をシリーズでお送りすることとしました。人材開発に係る手法等はもちろん「これから何に準備すべきか」にも触れていく予定です。どうぞお楽しみに!