筆者はInnovationS-iコラムとして「未掴!」を発行しています。政府は日本の将来像として“Society5.0”を提唱しています。“5.0”という表現は、社会の質的な変化を感覚的に表現するものとして採用されたもので、筆者としては、社会の進化を次元軸の追加として捉えています。太古から人類は時間軸・規模軸・分業軸と次元軸を加え、コンピューターが普及した社会では「情報軸」が、そして現在では「自働化」軸が追加されたというのが、筆者の仮説です。
このように説明すると「社会に次元軸が加わるとなると、そこで活躍する人々の姿も変わってくるのではないか?」という疑問を持つ読者もあるでしょう。その通りです。今回は、この点について考えてみます。
これまでに必要とされた人材
現在50才台の筆者が働いてきた約30年を振り返ると、3つの世代に分けられます。1960年代に生まれて20世紀後半までは”Society3.0”つまり「分業軸」の時代でした。1980年代にはホスト・コンピューターやオフィス・コンピューターが活躍、Windows95が発表されて恩恵が個人に及んだことで「情報軸」が加わり、 “Society4.0”に入ったと実感しました。OSやアプリケーション・ソフト提供者であるマイクロソフト(MS)の全盛時代から、2010年を過ぎてAppleやGoogle、Amazonなどが台頭すると、これらの行動原理がMSとは全く異なることに気付き、時代が“Society5.0”すなわち「自働化」軸に移行したと痛感した次第です。
このような経緯から、時代と共に、もしくは企業がどの軸をベースに業務を行なっているかにより必要とされる人材は異なってきます。筆者が就職した昭和最終期(”Society3.0”時代)は「分業体制の中でリーダーシップを発揮できる人材」が求められていました。社内で営業、製造、顧客サービス、経営企画、人事開発などの業務を分業して担うと共に、各部署の中でもグループや個人での分業が行われ、その仕事をきちんとこなすと共に、グループ内のモチベーションを維持・向上させられるような人材が歓迎されたのです。
その後、職場でも個人にPCが割り当てられ業務システム化が進んだ時期(”Society4.0”時代)には、プログラミングができる人材(SE)や、システム化に向けた業務の再設計ができる人材が脚光を浴びました。ITの活用によりビジネスそのものが変容し、今まで営業担当者が担い伝票を使って行っていた顧客との取引がEDI(電子商取引)に置き換わったのもこの時期です。「人が行う仕事を、PCを用いる仕事に変換して軌道に乗せる」ことができる人材が求められたのです。
”Society5.0”で求められる人材
では、今後はどのような人材が求められるのでしょうか?”Society5.0”は自働化、言葉を替えれば「願えば叶う」が実現する社会です。「そうは言うが、その社会でどんな人材が必要とされるか、分からないよ。」確かにそうですね、では、Society5.0でリーダー格とも言える企業、Apple社を想定して考えてみましょう。
Apple社はSociety5.0においてどんな企業なのか。詳しい説明はここでは省きますが、筆者は「自社の強みである新製品の企画・開発に集中する企業。製造は、それを得意とする企業に全面的に任せている」と表現できると考えています。この企業では、以下のような人材が活躍していると考えられます。
○ 自社で実現したい製品やサービスをゼロベースで(自社に属する人材・蓄積した能力等を制約条件としないで)革新的な企画・開発ができる人材
○ 革新的な製品やサービスの実現に向けて課題を見つけ、これまでなかったインフラや仕組み、手法等を編み出して解決する提案ができる人材
○ 開発中の製品やサービスを実現するために、他社に任せられるものは何かを考え、実際に任せながらも伴走して確実に実現させることができる人材
このような人材は、今の日本にはほとんど存在しません。今いる人材を、今知られている方法で育成することも、できないと考えられます。では、どうするか。今、例に挙げたAppleや、その他GAFA企業を参考にできるでしょう。しかし、肝心なところは「買ったり」「借りたり」することはできません。自分で開発する必要があります。「これからどんな人材を育成するのか」を深く考えることが、その第一歩となるでしょう。
StrateCutions HRDでは、イノベーションを生み出せる人材を育成すべく、それを生み出す25の手法を、ユーザー企業の実情に合わせて活用していくワークも織り込んだ研修を実施しています。新たに求められる人材像を、このような研修で垣間見るのもお勧めです。
<「会社を変える!イノベーションを量産できる次世代リーダー養成研修」>
<本コラムの印刷版を用意しています>
本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、コンサルタントの知恵を皆さんの会社でも活用してみてください。