ここ数年、政府が力を入れているのが事業承継対策です。企業数がどんどんと減って、日本の国力や魅力を大きく損ないつつあります。なぜ事業承継が進まないのか?理由の一つに、中小企業の収益性の低さが挙げられます。二代目候補に「儲からない事業は、承継したくない」という気持ちが働いてしまうのです。先代と二代目で知恵を出し合って収益性を高めていければ、事業承継も進む可能性があります。昨年募集された「事業承継補助金」では業種・業態変更を伴う費用も補助されました。事業承継時の事業見直しは、今や常識かもしれません。
しかしここで、一つ落とし穴がありそうです。せっかく打ち出した高収益戦略が裏目に出てしまう可能性です。特に多店舗戦略は、大きなメリットが期待できますが、デメリットも少なくありません。リスクも潜んでいます。これらに注意深く対処して進めていかないと、せっかくの事業承継が台無しになるばかりか、企業を倒産させてしまうことにもなりかねません。
多店舗展開を前提にした事業承継
その洋食レストランは、地味ながらも地域では評判のお店で、長らくお客様から愛されていました。70歳を過ぎた先代は息子さんに承継してもらいたいと考えていましたが、息子さんは商社に勤める道を選びました。いよいよ廃業かという時に、先代と息子さんとの間に合意ができました。息子さんは調理場には立たず経営者として多店舗展開戦略のリーダーとなる。先代もそれに協力し、息子さんが社長になるまでに料理人を店長として育成し、サポートする料理人も訓練するという合意です。
大都市郊外で「美味しい洋食を大衆価格で食べられる店」はお客様の共感を呼び、3店舗目、4店舗目と店舗を増やす毎に売上も順調に拡大しました。店舗展開に必要な資金は借入でまかなったので「全力で走らなければ返済できなくなる」という自転車操業の状況とはいえ、「あともう少しの辛抱」と従業員も一体となって頑張っていたのです。
競合店の登場
多店舗展開の当初は春を謳歌した当社ですが、競合店との顧客獲得合戦が熾烈化するにつれ、状況が一変しました。
競合店が進出する毎に、そして他店舗がキャンペーンを打つ毎に、お客様が減ってキャッシュが回らなくなるのです。それに打ち勝つには当社もキャンペーンを打つしかありません。2割、3割の値引きがいつしか5割になり、恒常化してしまったのです。そうするともう、お客様は50%オフでしか来店してくれません。客足は一定レベルに維持できていましたが、利益率が急速に低下してキャッシュ不足に陥り、支払不能となったのです。結果的に、自己破産を余儀なくされました。
StrateCutionsが提案できるソリューション
どうしたら倒産が避けられたでしょうか?以下、多店舗展開開始時にご提案する対策を簡単にまとめてみます。
多店舗展開は、一見すると魅力的なビジネスモデルです。店舗を増やす毎に売上や利益も2倍、3倍と増えいくと予想できます。計画時に損益計算書だけでシミュレーションしたのではバラ色の将来しか見えませんが、「儲かっているのにキャッシュが足りないのはなぜだろう」と疑問に思うようになります。この理由は、貸借対照表やキャッシュ・フロー表まで作成すると分かります。StrateCutionsではもちろん、これら資料の作成をご支援し、資金調達などの準備を予め行なっていきます。
それに加えて経営戦略に特有の問題にも対処します。先代が長年営業した「本店」は固定客を確保していることでしょう。一方で2号店、3号店は顧客を獲得しなければなりません。上では「競合店が進出」と書きましたが、実は自身が「競合店」の立場で既存他店から顧客を奪わなければならないのです。StrateCutionsでは、自社の強みや進出する地域の競合先状況などを総合的に考慮に入れながら「自社の魅力」を戦略的に高めるご支援も行います。
<本コラムの印刷版を用意しています>
本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。また、コラム(本欄)ではコンパクトにまとめたStrateCutionsからのご提案についても、各項目をしっかりとご説明しています。印刷版を利用して、是非、繁盛企業になるための方法を倒産企業からしっかりと学んでみてください。