会社千夜一夜

第14回

従業員を軽視した工場のケース

落藤 伸夫 2018年8月6日
 

 事業は「労働集約型」と「資本集約型」の2種類に分類されるという考え方があります。「労働集約型ビジネスの場合には従業員満足が大切だが、資本集約型の場合には最新の機械・設備の充実がポイントである」とのアドバイスを聞いたこともあります。それは決して間違いとは言いませんが、だからといって資本集約型ビジネスで従業員を軽視して良いとは限りません。逆に、従業員軽視が会社に致命的なダメージを与える場合もあります。ある製造業企業のケースをもとに考えてみましょう(以下は、プライバシー保護のために脚色してあります)。


 ある金属加工工場のケース

 ある地方の工業団地にある金属加工工場の診断・指導を依頼された時のことです。公的な枠組みでの依頼だったこともあり予め決算書をお預かりして分析をしてから、社長とお会いすることとなりました。決算書を拝見すると、売上に比して利益率がとても高く、「筋肉質(リーン)」な経営をしていることが手に取るように理解することができました。では、どこにその秘密があるのか?決算書を仔細に分析すると、他と比べて人件費が非常に低いことが分かりました。一方で資産として、莫大な金額の機械・設備が計上されています。「高度な機械化がこの会社の強みなのだろうな」と推察されました。


 実際に社長にお会いして「御社の強みは最新鋭の機械設備を導入していることのようですね」というと、「そうか、そこまではリサーチしたのだな」というような表情でした。筆者は決算書から推察しましたが、たぶん、最新鋭の機械設備を導入していることは地元でも有名だったのでしょう。実際に工場を見学させてもらうと、中小企業では1台導入するだけでも会社案内に誇らしく掲げられるような最新鋭機が、作業場に何台も置かれていました。


 何台も並ぶ最新鋭機材への驚きが落ち着いてよく見ると、実際に稼働しているのは数台に過ぎないことに気がつきました。大半の機械が止まっているのです。最新鋭機を使わなければならない仕事が不足しているのかと質問してみると、そうではないとのこと。注文はあるのです。ただ、そのような高度な加工が必要な受注は十分な納期を織り込んであることが普通なので、稼働率が低くても納期遅れになることはないのだと説明してくれました。「いずれにせよ発注元は、高付加価値の注文は我が社に持って来ざるを得ないのです」と誇らしげに語る社長の表情が印象的でした。



オペレーションする従業員の不足

 一方で、注文も十分にあるのなら、なぜ機械の稼働率を向上させないのかが疑問でした。「技術者が定着しないのですよ」が答えでした。その理由について社長は「段取りで重い材料を運搬等することを若者が嫌うからだ」と言っていましたが、現場での観察を元に憶測を加えると、段取りや実際の加工で思ったような成果が出なかった場合の社長からの叱咤が厳しかったことや、最新鋭機を扱えるようになれば他の給料の高い工場に転職することが可能だったことも理由ではないかと考えられました。それほど、従業員数に比べて人件費が少なかったのです。従業員としては、頑張って仕事をしてもこの会社では評価されないと感じてしまったのかもしれません。


 この企業は、結局、事業売却を余儀なくされました。リーマンショックで、最新鋭機材導入のための借入金返済がままならなくなったからです。筋肉質経営(高利益率)は、一定の受注を確保する時には大きな利益を出せますが、一転、売上が減少すると利益は敏感に反応し、思った以上に早く損益分岐点を下回ってしまいます。社長としては、人件費という固定費を削減して高い利益率を確保してきたつもりだったのでしょうけれど、それでは強靭な事業を築き上げることはできなかったのです。



StrateCutionsが提案できるソリューション 

 ここでは、当社が分不相応と言わざるを得ない投資を検討していた時点でStrateCutionsにご相談があった場合のご支援について考えて見ます。StrateCutionsでは設備投資を検討する場合には中長期の収支計画・財務計画を策定します。ここでポイントとなるのが、予想される売上を導入機材の能力からだけでなく、オペレーター人材についてもしっかりと検討した上で算出することです。機材に作業内容を指示する“NC”操作はもちろん、空き時間に段取りを終えるために必要な人員も踏まえて売上を計算することで、高額な借入により導入した機材が遊んでしまうことがないように配慮するのです。


 「そんなことをしたら資金が足りなくなってしまう。」確かにそうかもしれません。ならば、機材の導入台数を減らすしかないでしょう。オペレーターの人数と機材の台数をバランスさせるのです。「それではチャンスを捉えられないのではないか?」残念ながら、オペレーター不在の機材を増やしても、チャンスを捉えることはできません。逆に借入金を増やし、毎月に会社から逃げていってしまうキャッシュフローを増やすだけです。StrateCutionsは、入念な計画を立てることにより、皆さんの会社がしっかりと利益体質になれるようご支援します。 





<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。また、コラム(本欄)ではコンパクトにまとめたStrateCutionsからのご提案についても、各項目をしっかりとご説明しています。印刷版を利用して、是非、繁盛企業になるための方法を倒産企業からしっかりと学んでみてください。


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プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

1985年中小企業信用保険公庫(日本政策金融公庫)入庫
約30年間の在職中、中小企業信用保険審査部門(倒産審査マン)、保険業務部門(信用保証・信用保険制度における事業再生支援スキーム策定、事業再生案件審査)、総合研究所(企業研究・経済調査)、システム部門(ホストコンピューター運用・活用企画)、事業企画部門(組織改革)等を歴任。その間、2つの信用保証協会に出向し、保証審査業務にも従事(保証審査マン)。

1999年 中小企業診断士登録。企業経営者としっかりと向き合うと共に、現場に入り込んで強みや弱みを見つける眼を養う。 2008年 Bond-BBT MBA-BBT MBA課程修了。企業経営者の経営方針や企業の事業状況について同業他社や事業環境・トレンドなどと対比して適切に評価すると共に、企業にマッチし力強く成果をあげていく経営戦略やマネジメント策を考案・実施するノウハウを会得する。 2014年 約30年勤めた日本政策金融公庫を退職、中小企業診断士として独立する。在職期間中に18,000を超える倒産案件を審査してきた経験から「もう倒産企業はいらない」という強い想いを持ち、 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を中心した企業顧問などの支援を行う。

2016年 資金調達支援事業を開始。当初は「安易な借入は企業倒産の近道」と考えて資金調達支援は敬遠していたが、資金調達する瞬間こそ事業改善へのエネルギーが最大になっていることに気付き、前向きに努力する中小企業の資金調達支援を開始する。日本政策金融公庫で政策研究・制度設計(信用保証・信用保険制度における事業再生支援スキーム策定)にも携わった経験から、政策をうまく活用した事業改善支援を得意とする。既に「事業性評価融資」を金融機関に提案する資金調達支援にも成功している。

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