会社千夜一夜

第44回

理解力を高める唯一の方法

落藤 伸夫 2019年10月28日
 



子どもにとっても大人にとっても啓発的な本、「Ai vs.教科書を読めないこどもたち(新井紀子)」をもとに、職場で起きている理解力のなさについて考えてきました。今日は、ではどうやって理解力を高めるかについて考えてみたいと思います。 



理解力を高めるプロセス:フィードバック

おかげさまで理解力を考えるこのコラムについていろいろな方とお話をすることができました。「我が社ではこんなことが起きているのだけれど」と(あまり好ましいテーマではないのですが)盛り上がることもありました。その中で、(冒頭に挙げた図書の著者である新井さんではありませんが)Aiの専門家ともお話しするチャンスがありました。「Aiの理解力を向上させるために、何ができるか?」という話題です。


最近では携帯電話にもAiが内蔵されているので、まずは携帯で試してみました。「明日の予定はどうなっている?」と質問すると、Aiは「明日の予定は4軒あります」と返答しました。しかし、こちらがAiに予定を聞く理由は、明日に逃してはならないスケジュールが入っているかどうかを確認したいからです。とすると、「明日の予定は4軒」は聞きたい情報ではありません。例えば「明日11:00から銀座でA氏と打合せです」という情報が欲しいのです。そんなスケジュールがないなら「明日は特に予定はありません。但しA社訪問の準備のため2時間確保されています。時間内に作業を終えられるよう、今のうちからイメージを膨らませておくと良いでしょう」などと伝えてもらえると、嬉しく思います。そこまで気が利かないなら、「明日の予定は4軒あります」でも許せます。


Aiに「明日の予定は4軒あります」ではなく「明日11:00から銀座でA氏と打合せがあります」と答えてもらうためには、どうすれば良いのか? 「フィードバックしかないだろう」というのがAi専門家の意見でした。例えば「明日の予定はどうなっている?」と聞いた時には、「私のカレンダーの全体像を伝えて欲しい」と解釈するのではなく、「『関係者』の欄や『会合場所』の欄に記入があるスケジュールを優先して伝えて欲しい。そういうスケジュールがなければ、全体像で良い」と指示をし直すのです。Aiがこの通り対応すれば「明日の予定はどうなっている?」という質問に、私のカレンダーから関係者の欄と会合場所の欄に記入があるスケジュールをピックアップして「明日11:00から銀座でA氏と打合せです」と答えるでしょう。こういう置き換えができることが、この場合の理解力だと解釈できます。「フィードバック以外にAiの理解力を向上させる方法はないか」についても議論しましたが、「ないだろうね」が答えでした。



フィードバックの多様性こそが人間の強み

こう考えると、1つの恐怖感と、1つの希望が湧いてきました。恐怖感とは、「フィードバックでAiも理解力が身に付くなら、『理解力』が人間の強みとは言えなくなるのではないか」ということです。新井紀子さんの「Ai vs.教科書を読めないこどもたち」では「Aiには理解力がないから、簡単には人間を凌駕できない。にもかかわらず今、人間の理解力が低下してきて危機的状況だ」と書かれていました。この状況下、フィードバックでAiが理解力を向上したら、歩みは遅くとも人間に近付く可能性があります。Aiに奪われる仕事が増えてしまうかもしれません。


一方で希望というのは、「人間はフィードバックについて、磨けば磨くほど高めていくことができる。ロジカルな対応以上に『芸術的』と言われるレベルまで高められる。この理解力はAiには永久に無理だろう」ということです。例えばAiは、自分が文章(文字・音声)で発した対応について、同じく意味のある文章(文字・音声)で応えてもらわなければフィードバックと受け取らないでしょう。一方で人間同士なら、例えば上司が発した質問に答えた時、相手が沈黙したのを察した部下は、ある時は「拒絶」、ある時は「容認」、ある時は「様子見」だと判断できる場合があります。また人間なら、即時ではなく時間が少し経過してからの上司の言動で「あっ、以前の私の答えに不満なので、こんな対応なのだな」と分かるかもしれません。このようなフィードバックはAiには今後も無理でしょう。


日常のコミュニケーションで生かす

芸術レベルの理解力は、どのように身に付くのでしょうか?答えは「日常のコミュニケーション」です。フィードバックの質を向上させる日頃の応答がポイントなのです。筆者は前職で社長秘書として高く評価された人が上司だったことがあります。この課長は日常フィードバックの達人でした。例えば、ある指示を出して筆者が「分かりました」と答えると、「落藤君、君は僕の指示を理解して、これから何をするつもりなのかね?」と質問しました。それに答えると「半分当たって、半分当たってないね。僕が君に本当にしてもらいたいのは実はね、・・・なんだよ」と教えてくれました。このような会話を嫌味なくしてくれたことで、筆者の理解力は飛躍的に向上したと感じています。


「なるほど、日頃のフィードバックが部下の理解力を向上させる原動力になることは、分かった。しかし、実践は難しいだろう。何か良い方法はないだろうか?」もしそうお感じなら、StrateCutions HRDが行う「AIに負けない社員を作る!理解力を高めるマネジャー養成研修」をご検討頂くのは如何でしょうか。

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なお、冒頭の写真は写真ACからbBearさんご提供によるものです。

bBearさん、どうもありがとうございました。


 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

1985年中小企業信用保険公庫(日本政策金融公庫)入庫
約30年間の在職中、中小企業信用保険審査部門(倒産審査マン)、保険業務部門(信用保証・信用保険制度における事業再生支援スキーム策定、事業再生案件審査)、総合研究所(企業研究・経済調査)、システム部門(ホストコンピューター運用・活用企画)、事業企画部門(組織改革)等を歴任。その間、2つの信用保証協会に出向し、保証審査業務にも従事(保証審査マン)。

1999年 中小企業診断士登録。企業経営者としっかりと向き合うと共に、現場に入り込んで強みや弱みを見つける眼を養う。 2008年 Bond-BBT MBA-BBT MBA課程修了。企業経営者の経営方針や企業の事業状況について同業他社や事業環境・トレンドなどと対比して適切に評価すると共に、企業にマッチし力強く成果をあげていく経営戦略やマネジメント策を考案・実施するノウハウを会得する。 2014年 約30年勤めた日本政策金融公庫を退職、中小企業診断士として独立する。在職期間中に18,000を超える倒産案件を審査してきた経験から「もう倒産企業はいらない」という強い想いを持ち、 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を中心した企業顧問などの支援を行う。

2016年 資金調達支援事業を開始。当初は「安易な借入は企業倒産の近道」と考えて資金調達支援は敬遠していたが、資金調達する瞬間こそ事業改善へのエネルギーが最大になっていることに気付き、前向きに努力する中小企業の資金調達支援を開始する。日本政策金融公庫で政策研究・制度設計(信用保証・信用保険制度における事業再生支援スキーム策定)にも携わった経験から、政策をうまく活用した事業改善支援を得意とする。既に「事業性評価融資」を金融機関に提案する資金調達支援にも成功している。


HP:StrateCutions

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