知恵の経営

第78回

「地産地消の味」で希少価値

アタックスグループ 2016年7月27日
 
 独自の「池(市場)」を見つけ出して、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となり高収益を獲得・維持している企業を紹介している。今回は静岡市を中心に14店の和食レストランを展開する、なすび(静岡市清水区)の池クジラぶりを見ていきたい。

 同社は1975年8月、藤田圭亮社長の父親が清水市(現・清水区)で17坪(約56平方メートル)、25席の小さな飲食店を開店したのが始まり。外食産業の厳しさをよく知る先代は、一代限りで終えるつもりでいたが、息子の圭亮氏が大手企業を3年で辞め、98年に父の反対を押し切って入社した。

 圭亮氏が戻ったのは、父の健康に対する心配もあったが「父を支えてきてくれた社員たちを路頭に迷わせていいのか」という思い、さらに大きな組織の中にいるより父の基盤を生かしてチャレンジしたいという気持ちが強かったからだ。そして、苦労を覚悟の上で入社した。

 圭亮氏の強力な営業力で、売上高は3億5000万円から、5年後には10億円にまで拡大した。しかし、売り上げと同額の借金が積み上がり、5年間の成果はないに等しいような厳しい現実に直面した。

 営業力だけでは経営できないことを嫌というほど知り、必死に「経営実学」を学んだ。

 「静岡の食文化の創造と発信」を通して「お客さまに喜んでいただくこと」を使命とし「この街に必要とされ続け、この街になくてはならない資産となる」ことを目指した。
 その上で画一的なチェーン展開でなく、一店一店コンセプトの違うさまざまな形態の店舗を作り上げた。それほど広くない静岡市内に軸足を置いて、事業を広げていくには、同じような店は要らない。訪れる人のシチュエーションやその日の気分に合わせて使い分けできる、それぞれが全く違うスタイルやセンスをもつ店が求められているということに気づいた。

 価格面でも大手居酒屋チェーンなどよりは高く、本格的な料亭よりも安い、競合がいない市場(池)を狙った。これにより「安いチェーンは嫌だが、高級店は敷居が高い」と感じる層の需要を開拓し、どの店も順調に売り上げを伸ばしていった。

 さらにそれぞれの店舗では、地元の食材や特産品を積極的に取り入れ、ここでしか味わえない地産地消の味を提供することで「地域を発信」し、顧客への希少価値を生んでいる。店舗で使う食器類なども、静岡の伝統工芸品を使い、地元に密着した事業を展開している。

 同社は、大都市に展開する一般のレストラン経営の非常識に挑戦し、地方都市静岡ならではの和食レストラン・チェーンという池を創りあげ、その池クジラとなっている。
<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明
2016年7月27日フジサンケイビジネスアイ掲載


 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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