知恵の経営

第44回

小よく大を制する

アタックスグループ 2015年11月11日
 

 独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となって高収益を獲得・維持している中小企業を紹介している。連載14回目は、次々と新製品を開発する建築用電設資材メーカー、未来工業(岐阜県輪之内町)の池クジラぶりを見ていきたい。

 1965年に創業し、日立製作所、パナソニックなど大手が支配していた電設資材市場に挑み、見事に独自の「池」を築き上げた。建設現場で働く職人のもとに足を運びニーズを集め、仕事ぶりに着眼した結果、商品が生まれた。内装工事の前後に仕事をする電気工事職人は、スイッチなどの裏側に埋め込むスイッチボックスの位置で悩む。壁紙に隠れてしまうからだ。

 同社の薄い金属を張ったスイッチボックスは、磁石で探せばすぐ場所が分かる。このため国内シェアは約7割に達し「家の壁の裏側に設置する電設資材」という小さな“池”で、圧倒的な“クジラ”になった。

 ご多分に漏れず電設資材市場でも、大手は効率性から大量の製品を1次問屋に販売し、2次問屋から職人にわたるまでの間は既存の流通に委ねている。

 ところが後発の未来工業は、1次問屋とはあえて付き合わず、2次・3次問屋に直接アプローチしようと地方に営業所を展開し、職人の不満を集めて、それを解消する新商品を次々と開発した。こうして職人を未来工業のファンにさせ、1次問屋が同社の製品を値引き要求できないまま買わざるを得ない状況に持ち込んだ。

 特許権、実用新案権、意匠権は3500件を超える。給排水設備やガス管を収納・保護するカバーなど水道やガスの資材にも事業を展開、製品点数は約2万点に及んでいる。

 これらは「よそと同じモノはつくらない」「全商品を差別化する」というポリシーから生まれているが、全て「職人の声」がきっかけだった。その意味で同社の「池」は職人の声を集約する仕組みが出来上がった結果、つくられたといえる。

 とすれば新商品開発で、池のクジラになる一番の近道は、伝統的な流通を無視してエンドユーザーの声を集約する仕組みを創り、そこから商品を開発して、2次・3次問屋から1次問屋に遡(さかのぼ)ることではないか。非常識に見えるが、いつの時代にも通用する「小よく大を制する」着眼点かもしれない。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明
2015年11月11日「フジサンケイビジネスアイ」掲載


 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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