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知恵の経営

第279回

全員参加でコロナ乗り切る、トヨタ自動車の現場力の強さ

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
コロナ禍で売り上げが溶けるように減少し、資金繰り対策に頭を悩ませている経営者は多い。こんな状況下で上場会社の3月期決算予測が発表され始めている。多くの会社が減収収益となっているが筆者がさすがだなと思うのはトヨタ自動車である。

昨年3月、新型コロナウイルスの第1波が到来し、経営活動が大幅に落ち込んだとき、ほとんどの企業は収束が見えないということで決算予測(売り上げと利益)を控えた。しかしこんな状況下にあってもトヨタの豊田章男社長は2021年3月期のグループ連結決算予想利益5000億円という数字を発表した。4月から始まる新年度は新型コロナで売り上げが大幅減少するという予測の中であえて5000億円という利益計画を発表したのは勇気のある決断である。

ところでトヨタは今年2月時点で今期の利益予想を当初の5000億円をはるかに上回る1兆9000億円と発表している。上半期は売り上げ・利益とともに苦戦していたが、下半期は中国市場が好調というのが理由だ。

トヨタの現場力の強さは「良い車を安く作る」物づくりの伝統にあると思う。コロナ禍にあってグループ各社は緊急収益改善計画を作り計画を愚直に実践し、損益分岐点を切り下げトヨタの連結営業利益の最大化に貢献している。

損益分岐点の切り下げは経営環境が激変する時代を乗り切る原理原則の手法である。まずは損益分岐点を切り下げ出血を止めなければならない。

損益分岐点を切り下げる方法は(1)固定費の削減(2)変動比率の削減(3)売り上げの拡大-である。コロナ禍では売り上げ拡大は望めないので(1)(2)が重要な施策となる。固定費と変動費の削減は着眼大局に立った「無くす・減らす・代える」が基本である。以前トヨタの設計部門の技術者から「トヨタ流原価改善は絶えず源流にさかのぼることである。生産技術・製造面での原価改善活動も重要だが設計段階での原価改善の効果はさらに大きい」と聞いたことが印象に残っている。

コスト削減は現場レベルの削減策から、経営トップレベルの削減策まで存在する。またすぐに実行できる削減策から1年かかる削減策も存在する。重要なことは経営トップ自らがコスト削減・損益分岐点を下げる経営をしないと生き残れないという危機感と、危機を乗り越えた後のビジョンを示すことである。

いずれ新型コロナは収束し、ニューノーマル(新常態)という新しい時代がやってくる。経営者が先頭に立ち、経営の再点検を行い、損益分岐点を切り下げ、強い組織を作り上げ、経営を新たな軌道に乗せることを期待したい。


アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭
2021年3月31日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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